( 香水工場の )
香る生活
神代植物公園#7
説明を聞いて香りを確かめる日本人、説明を聞かないフランス人
「暑さとバラの香りでむせ返るバラ園・・・神代植物公園」の7回目。長く引っ張ってしまいました。ご安心下さい。今日が最終回。
最終回は、日本人とフランス人の香り文化の違いの一例を取り上げます。来日中のパフューマーさんが感じた日本人の香水に接する際の特徴です。
ニオイがするモノや香り物は、まずはニオイを嗅いでみる。すると、頭脳に保管されている香りデータベースを検索し、成分名や同じ種類の香りや製品や情景や過去の実体験など、様々な情報が上がってきます。
パフューマーにように千種類近い香料名を記憶しているトレーニングされた人には成分名もかなり高い確率で当たります。しかも何種類でも言い当てます。
私たちのような一般人には成分名はわかりませんが、体験のあるさまざまな事物のニオイとの類似性を無意識にチェックし「○○に似たニオイ」といった計算をします。
場合によっては昔そのニオイを体験していた頃の情景や感情まで持ってくることがあります。パッと情景が浮かぶような瞬間ってありますよね。
ニオイは多くの情報を含んでおり、多くの感情を伴う要因です。感情のスイッチを押す力があります。それゆえニオイとは立派な情報源です。
香水の場合、極論すればニオイが全てです。周辺は削ぎ落としてもいいのです。
つまり、香りの本質的な楽しみは、香りそのものであり、そこにはブランド名も背後のストーリーも歴史もパッケージの見た目の美しさも、芸能人の誰々さんが使っているウンヌンも不要。
香り以外すべて取り去って、それで素敵な香りかどうかがポイントですし、すべてです。
しかし、人は、まずは外見で入るのが本能。それはやむを得ませんが、理想を言えば、香水は最初に香りで判断されるべきものだと思います。
フランス人は、香水の品定めをする際、あまり説明をきかずに香りを確かめる人が多い。
香りに興味がわくと成分や開発者や背景やブランドのことを質問してきます。一方、日本人は香りを確かめる前に、あれこれ説明を聞いてからという人が多い、とは彼の体験談です。
私は、香水文化の先輩としてのフランスには学ぶべきことが多いことも実感しています。
もともと人間の汚物で街中が充満していたパリ。汚泥の中から這い上がるスイレンの花ように美しい香水文化の華を咲かせた歴史があります。昔から比較的清潔だったった日本人の感覚からは汚物まみれのパリなどリアルすぎます。
ニオイに対するそういう壮絶な現実と伝統が今日のフランスの香水文化を基盤であることを考えると、やはりフランスの香水文化は一歩先輩です。
クリエイターの層の厚さだけでなく、消費者の目の肥え具合もフランスの香水文化の大きな力になっている・・・などなどいろいろ考えさせるイベントとなりました。
このイベントを企画した会社は、フォルテ。東京吉祥寺にある化粧品&香水商社さんです。
終わり
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(2009-05-22)
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