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( 香水工場の )

香る生活


天然100%の香水? 古くて新しい香水トレンド
天然100%の香水(香水はファッション、アロマテラピーは医療。アロマテラピーに寄り添い始めた香水)

・香水はファッション、食べ物ではない


現代人には当たり前のことですが、香水は食品ではありません。しかし、大昔は香水は食品の一部でした。香水の歴史はそのまま香料の歴史です。香料とは香辛料だったり、植物のオイルだったりするのですが、「香料」という言葉がまだなかったころは、香料はたんに食べ物の一部でした。
大昔は医薬品という考え方もなく、薬効がある食品が次第に医薬品へと分化し進化していきました。香料も同じで食品の中で、香りがよい香辛料やオイルが香料として分化して香料という分野ができあがりました。

・史上初の香水「ハンガリーウォーター」は香水でなかった


香水の起源は、14世紀の「ハンガリーウォーター」とされることがあります。しかし、ハンガリーウォーターは香水ではありませんでした。「飲まれていた」とか「肌に付けていた」と言われるように薬的な使われ方をされていました。目的も美容と健康だったと思われます。
ハンガリーの女王様がハンガリーウォーターで若返ったことから「若返りの水」と言われたという有名な伝説がありますが、今風に言えばアンチエイジング。当時としては最先端の不老不死アンチエイジング・メディスン。どう見てもハンガリーウォーターは香水ではありません。

・ファンションへと変貌していった香水


しかし、このハンガリーウォーターが、フランスに渡る頃から、次第にお薬としての効果効能より、自分を魅力的に見せるためのもの、おしゃれのための小道具としてファッション性を帯びるようになります。
香水は「体臭を隠すために発展した」という人がいますが、ウソではないにしても、そがすべてとは言いがたいでしょう。たんに体臭をマスキングしたいだけなら消臭剤や芳香剤として成長するはずですし、そもそもよい香りをつけたところで悪臭は消えません。悪臭の緩和もされません。たんにニオイが増えるだけですからね。
香水は「お薬」から「ファッション」へと変貌する過程で、香りはより華やかに、より持続性が強く、より新規な香りへと、人々の要求はエスカレートしていきました。ナチュラルな天然香料だけだった香水原料は、その進化の課程で次第に様々な成分が採用されるようになります。
そして「医香同源」や「薬香同源」というコンセプトから、香水は少し離れた存在へと変貌します。

・自然を越えたシャネルNo.5


決定打は1921年、パリで放たれました。「シャネルNo.5」の発売です。
化学的に合成されたアルデヒドを大胆に使用した「シャネルNo.5」は香水界に衝撃を与えた名香です。
シャネルNo.5は、合成香料のパワーを世界に知らしめた金字塔的存在となりました。以降、香水の原料はケミカルな香料が主流になりました。それから延々約100年、今でもこの流れは基本的に同じです。

・自然に回帰する香水


シャネルNo.5は、今までに知らなかった香りが、誰も体験したことがない豪華さで香りました。それは、誰の鼻にもはっきりわかる香り立ちで、わかりやすかったのです。衝撃でしたし、ニュースでした。
しかし、香水の作り手(香水メーカーや香水ブランド)の中には、意識を変化させるところが多く出現しています。そして、香水のトレンドもこの数年で大きな変化が見受けられます。
「天然香料100%の香水」や「天然香料主体の香水」の出現。つまり、香水の天然回帰現象です。
香水の歴史としては、現在は大きな転換期です。しかし、微妙な転換です。原料だけからすると昔に戻る訳ですから、新しくはありません。

・天然100%の香水は、古くて新しい香水


天然香料主体の香水は、パワフルな現代香水が数世紀前の香水に戻ること。すると、むしろ、パンチがない、はっきりしない、そして持続力がない香りです。

どうですか、こんな香水? むしろ退化したとさえ思われがちです。衝撃はなくニュースにもなりにくい。これが香水の進歩や進化といえるかどうか、微妙です。
しかし、香水のトレンドとして、こういう香水が世界的に求められている背景には、そういうパンチがないものでも、本物であること、本物であることの価値を評価できる人々の増加です。
ある意味、香水文化の成熟であり、消費者の鑑識眼レベルが上がったことが大きな要因となっています。
ファッションであるはずの香水が、いつのまにかアロマテラピーに回帰し、寄り添いはじめた時代なんですね。香水はファッションであることもまったく捨てていませんので、包容力が広くなったとも言えます。

(2015-01-08)
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