( 香水工場の )
香る生活
キンモクセイの里・桂林と香料工場
中国南部の都市・桂林(けいりん)へ行ってきました。この街には金木犀の香料を生産している会社さんがあります。この会社さんとの今後のお取引を含めたミーティングを行うために訪問させていただきました。(2015/10/06)
中国南部の都市・桂林(けいりん)
桂林という街をご存じですか?桂林市の人口は市街地で80万人。日本で言えば熊本市や静岡市と同じ人口規模で、中国内では風光明媚な地方都市というイメージの街です。秦の始皇帝によって桂林郡が設置され以来、歴史にもたびたび登場する古い街です。
桂林は、カルスト地形が有名で、雲南や重慶などのカルストとともに「中国南方カルスト」としてユネスコ世界遺産に登録されています。日本ではカルストのイメージは鍾乳洞ですが、桂林のカルストは険しく切り立つ岩山、タワーカルストが特徴です。
タワーカルストで有名な桂林
私もはじめて見るタワーカルストには驚かされました。ロッククライマーが見れば心躍りそうな険しさでした。
桂林の有名な観光はなんといっても「漓江下り」。市内を流れる漓江(りこう)という川をタワーカルストが林立する谷間を遊覧船で下っていくと、もうそこは山水画の世界とのこと。残念ながら私たちにはその時間はありませんでした。
「漓江クルーズは今回できないんですよ」と言うと先方さんも「え、そうなの?」と言った感じです。桂林に来たら「漓江下り」は必須アイテムのようです。
桂林市内を縦断する漓江
私たちの目的はもちろん金木犀。
桂林の「桂」は、日本ではカツラの樹を意味しますが、中国ではモクセイを意味します。つまり桂林は「金木犀の林」を意味します。桂林の市樹は「桂花樹」、市花は「桂花」。金木犀オンパレードですね。
街中は、もちろん金木犀だらけでした。40万本とも50万本とも言われています。私たちが訪問したのは2015年9月中旬。金木犀の樹木には微かな萌芽が出ていましたが、開花までにはまだ1ヶ月はかかりそうな気配でした。
タワーカルストで有名な桂林
ただし、市内の樹木全部が金木犀というわけでなく、クヌギやクスノキなども多く、ヤシの木も散見されました。植生は全体的にやや亜熱帯の雰囲気です。
市内中心部はバイク・車が縦横無尽に走り回り、唐辛子などの香辛料を多用した料理とザワザワ感が東南アジアを彷彿させる賑わいでした。
現地の方によると、金木犀は毎年10月中旬頃に咲くそうです。ただ、こちらも近年の異常気象のせいか開花時期の揺れが大きくなってきている模様です。
今回訪問させていただいた会社さんは「桂林拓普香料有限公司」。英語名「Guilin Four Seasons Sunshine Flavours & Fragrances Co., Ltd.」。この記事では桂林香料さんと呼ばせていただきます。
事務所は桂林中心部から車で30分の郊外にありました。居心地のよいゲストルームでミーティング
桂林香料さんのメインプロダクトは、金木犀のアブソリュート。
アブソリュートとは天然香料の一種です。香料は花や植物から採取しますが、採取方法によって大きく精油(エッセンシャルオイル)とアブソリュートに分かれます。
植物を水蒸気で蒸留して採取する香料が精油。これに対してアブソリュートはソルベント(溶剤)を使用して採取します。
アロマテラピーではより天然にこだわるため精油を利用しますが、高温の水蒸気で香り成分が変質しやすい欠点があり、香水業界では、どちらかといえばアブソリュートが伝統的に多く利用されてきました。
そもそも水蒸気蒸留では、金木犀の精油は実用レベルでの採取が不可能と推測されます。そこで金木犀の天然香料といえば必然的に金木犀アブソリュートとなるわけですが、金木犀の天然香料を生産している会社さんは、おそらく世界に数社。
桂林香料さんはその大手です。直接、この質問をぶつけてみました。すると次のような返答でした。
「金木犀のコンクリートを生産している会社なら数社ありますが、アブソリュートとなると当社だけかもしれません」
またまた専門用語が出てきて恐縮ですが、コンクリートとはアブソリュートが生成される前段階の生成物です。香り成分以外、様々な成分(たとえば、ワックスなど)が含まれる物質で、天然香料としては半製品です。
エタノールなどで香り成分のみをコンクリートから抽出したものがアブソリュートとなります。
金木犀は、観賞用としてヨーロッパや北米でも多少見かけますが、圧倒的に中国・日本に多く、金木犀の畑となると、もうこれは世界的に桂林周辺を含む中国南部に集中すると考えられます。
「金木犀の畑」とは花を採取するための畑です。中国では金木犀の花は、伝統的にそのまま乾燥してお茶やお酒の香り付け用フレーバーとして利用されますし、一部漢方薬にも利用されているようです。桂花から香料(アブソリュート)を生産し世界に輸出している会社さんが桂林香料さんです。
中国では、金木犀の花は「桂花」と呼ばれます。「金木犀の花」と表現する日本と比較すると専用の用語があるわけで、それだけ生活のと関連度が深いのかもしれません。
中国の金木犀の種類を質問してみました:
・丹桂 (Red Osmanthus)
・金桂 (Golden Osmanthus)
・銀桂 (Silver Osmanthus)
・四季桂
金桂。日本のウスギモクセイに相当するとする説が一般だが、香りが薄いウスギにたいして、金桂の香りは強く香料は、この花がメインの原料となる
いろいろありますね。もちろん、植物学の分類上は、まだまだあるはずですが、一般的に流通している金木犀の種類は上記4種類。
この中で桂林香料さんが使用する金木犀は「Golden」(金桂)。香りが最も強いとのことです。
日本にも金木犀や銀木犀などの種類がありますが、どれがどれに相当するかわかりますか?
日本の金木犀 = 金桂(きんけい)?
と推測された方が多いのではないでしょうか? 実は、丹桂(たんけい)が日本の金木犀に相当するという説が一般的です。
金桂は花の色彩からすれば日本の薄黄木犀に近いと思われます。ただ金木犀は色彩の点で丹桂に似ていますが、香りの点で金桂に近いので「金木犀 = 丹桂」説には異論も多そうです。
私の想像では日本には金桂が輸入され、現地化の過程で変異を起こし現在の金木犀になったかも?・・・と考えています。
ただ、金木犀はそもそも日本原産という説もあってよくわからない状況です。将来のDNAによる検証を待つしかありません。
ところで、上記4種の金木犀のうち日本では珍しいと思われる品種が「四季桂」です。文字通り四季咲きの金木犀で、桂林香料さん会社内に植林されていたので拝見しましたが、花付きが悪く香りも弱く香料としては利用しないとのことでした。
桂林香料さんに取引先の会社さんを質問してみました。ビジネス上の守秘義務と倫理上の問題がありますので詳細には書けませんが、この業界なら誰もが知っている世界的な香料会社さんが多数含まれていました。
日本の大手さんの名前もありましたが、フランスの香料会社さんとの取引がメインのようです。フランスの香料会社さんは伝統的に世界の天然香料産地に強いコネクションと信頼関係を構築しており、また香料の品質や安全性の評価に対してスキルとノウハウをお持ちなので、やはり強いですね。
桂林香料さんは2007年創業。社長のYさんは、桂林生まれの40代女性。彼女は大学卒業後、政府系機関で調香師(パフューマー)として働いていましたが、30代半ば独立し、この会社を起こされました。場所は桂林市内から車で30分程度の広大な工業団地内にあります。
工業団地といっても、トラックだけが行き交う殺伐とした地帯ではなく、桂林を含む広西チワン族自治区がもともと自然が豊かで「植物王国」「薬草の宝庫」と呼ばれている地帯だけに自然とハイテク産業の接点のようなエリアでした。
創業わずか10年未満で100人の従業員をかかえる企業へと成長しました。
「女性の社長さんって、多いですか?」と質問すると珍しくないそうです。中国では女性は家庭に入るという考え方は少なく、学校卒業後は社会に出て働くことが当然のことで、自然と女性社長も少なくないそうです。
天然香料生産をしている会社は世界中にたくさんありますが、先進国では経営自体が成立しにくく、また一般に零細な経営になりがちなビジネスモデルとされていますが、桂林香料さんは巨大で非常に成功されている会社さんでした。
中国の経済自体が、過去10年間、驚異的な経済成長を続けてきましたので、国内の経済発展と政府の大規模な経済政策にうまく会社成長のベクトルが合致したという要因も大きいでしょうか。
この会社さんにも中国経済の勢いを象徴しているかのような輝きを感じました。
金木犀のための訪問なので、金木犀が咲いている時期に行きたかったのですが、まず開花タイミングが不安定ですし、また開花のピーク時に行けば一年の最繁忙期、迷惑になるので少し早いのですが9月中旬に行きました。
桂林市内の金木犀は、先ほど書いたとおりまだまだです。当然、工場もアブソリュート生産はまだ開始されていないと予想していましたが「ラッキーでしたね。今日はちょうど金木犀の今年最初の仕込みをやっています」と。本当にラッキーでした。
香料採取のための仕込み作業
中国は広大なので、市街地がまだでも、すでに開花し収穫可能な金木犀畑がどこかにあるようです。収穫方法は樹木の下に大きな布を敷いて樹木を揺らしたり叩いたりすると、熟した花が自然と落ちてくるといった合理的な方法が採られています。
工場に案内されると、もう目より先に金木犀のふくよかな芳香が感じられ、充満した金木犀の香りに包まれました。ちょっと感動的なな瞬間ですよ。
工場では、集められ大量の桂花が計量され、コンクリート壁で作られたセルに投げ込まれていました。ソルベント抽出するまで食塩水に浸す仕込み作業です。
作業現場の雰囲気は和気あいあいとしており、会社の雰囲気も伝わってきます。
作業されている人は10人程度。全員が桂林香料のスタッフと思っておりましたが、金木犀の花を納品にきている農家さんも数人混じっているそうです。
別の棟ではアブソリュート生産のための設備も拝見させていただきましたが、近代的で大規模な設備はちょっと日本では見ることができない規模でこちらも驚かされました。写真は許可されませんでしたので掲載できないことが残念です。
大変有意義な工場見学となりましたが、一つだけ心残りなことは、金木犀畑を拝見できなかったことです。「ここからかなり遠いので無理です」と断られました。
本当に遠いからかもしれませんし、あるいは別の理由かもしれません。企業同士の取引ですので、そのへんはいろいろな事情があると思われます。しかし、信頼関係を構築できれば次回は見せてもらえると期待しています。
今回の出張は、中国の金木犀事情にいろいろな意味で触れることができた有意義な旅になりました。世界的に有名な金木犀の街で金木犀の香料を生産している会社さんと率直な意見交換ができたことは、私たちにとっても宝のような機会だったと感じます。
私たちの訪問を快く受け入れてくれた桂林香料の代表Y氏とスタッフのみなさまにこの場を借りてお礼を申し上げます。
また、今回、桂林と金木犀のトピックをこうやって記事としてみなさまにお伝えできる機会があることに感謝いたします。
【DATA】
Guilin Four Seasons Sunshine Flavours & Fragrances(FSS F&F)
http://www.gltop.com.cn/
(2015-10-06)
中国南部の都市・桂林(けいりん)
桂林とは?
桂林という街をご存じですか?桂林市の人口は市街地で80万人。日本で言えば熊本市や静岡市と同じ人口規模で、中国内では風光明媚な地方都市というイメージの街です。秦の始皇帝によって桂林郡が設置され以来、歴史にもたびたび登場する古い街です。
桂林は、カルスト地形が有名で、雲南や重慶などのカルストとともに「中国南方カルスト」としてユネスコ世界遺産に登録されています。日本ではカルストのイメージは鍾乳洞ですが、桂林のカルストは険しく切り立つ岩山、タワーカルストが特徴です。
タワーカルストで有名な桂林
私もはじめて見るタワーカルストには驚かされました。ロッククライマーが見れば心躍りそうな険しさでした。
桂林の有名な観光はなんといっても「漓江下り」。市内を流れる漓江(りこう)という川をタワーカルストが林立する谷間を遊覧船で下っていくと、もうそこは山水画の世界とのこと。残念ながら私たちにはその時間はありませんでした。
「漓江クルーズは今回できないんですよ」と言うと先方さんも「え、そうなの?」と言った感じです。桂林に来たら「漓江下り」は必須アイテムのようです。
桂林市内を縦断する漓江
桂林の金木犀
私たちの目的はもちろん金木犀。
桂林の「桂」は、日本ではカツラの樹を意味しますが、中国ではモクセイを意味します。つまり桂林は「金木犀の林」を意味します。桂林の市樹は「桂花樹」、市花は「桂花」。金木犀オンパレードですね。
街中は、もちろん金木犀だらけでした。40万本とも50万本とも言われています。私たちが訪問したのは2015年9月中旬。金木犀の樹木には微かな萌芽が出ていましたが、開花までにはまだ1ヶ月はかかりそうな気配でした。
タワーカルストで有名な桂林
ただし、市内の樹木全部が金木犀というわけでなく、クヌギやクスノキなども多く、ヤシの木も散見されました。植生は全体的にやや亜熱帯の雰囲気です。
市内中心部はバイク・車が縦横無尽に走り回り、唐辛子などの香辛料を多用した料理とザワザワ感が東南アジアを彷彿させる賑わいでした。
現地の方によると、金木犀は毎年10月中旬頃に咲くそうです。ただ、こちらも近年の異常気象のせいか開花時期の揺れが大きくなってきている模様です。
桂林拓普香料有限公司
今回訪問させていただいた会社さんは「桂林拓普香料有限公司」。英語名「Guilin Four Seasons Sunshine Flavours & Fragrances Co., Ltd.」。この記事では桂林香料さんと呼ばせていただきます。
事務所は桂林中心部から車で30分の郊外にありました。居心地のよいゲストルームでミーティング
桂林香料さんのメインプロダクトは、金木犀のアブソリュート。
金木犀アブソリュートとは?
アブソリュートとは天然香料の一種です。香料は花や植物から採取しますが、採取方法によって大きく精油(エッセンシャルオイル)とアブソリュートに分かれます。
植物を水蒸気で蒸留して採取する香料が精油。これに対してアブソリュートはソルベント(溶剤)を使用して採取します。
アロマテラピーではより天然にこだわるため精油を利用しますが、高温の水蒸気で香り成分が変質しやすい欠点があり、香水業界では、どちらかといえばアブソリュートが伝統的に多く利用されてきました。
そもそも水蒸気蒸留では、金木犀の精油は実用レベルでの採取が不可能と推測されます。そこで金木犀の天然香料といえば必然的に金木犀アブソリュートとなるわけですが、金木犀の天然香料を生産している会社さんは、おそらく世界に数社。
非常に珍しい金木犀の香料メーカー
桂林香料さんはその大手です。直接、この質問をぶつけてみました。すると次のような返答でした。
「金木犀のコンクリートを生産している会社なら数社ありますが、アブソリュートとなると当社だけかもしれません」
またまた専門用語が出てきて恐縮ですが、コンクリートとはアブソリュートが生成される前段階の生成物です。香り成分以外、様々な成分(たとえば、ワックスなど)が含まれる物質で、天然香料としては半製品です。
エタノールなどで香り成分のみをコンクリートから抽出したものがアブソリュートとなります。
金木犀は、観賞用としてヨーロッパや北米でも多少見かけますが、圧倒的に中国・日本に多く、金木犀の畑となると、もうこれは世界的に桂林周辺を含む中国南部に集中すると考えられます。
「金木犀の畑」とは花を採取するための畑です。中国では金木犀の花は、伝統的にそのまま乾燥してお茶やお酒の香り付け用フレーバーとして利用されますし、一部漢方薬にも利用されているようです。桂花から香料(アブソリュート)を生産し世界に輸出している会社さんが桂林香料さんです。
中国の金木犀について
中国では、金木犀の花は「桂花」と呼ばれます。「金木犀の花」と表現する日本と比較すると専用の用語があるわけで、それだけ生活のと関連度が深いのかもしれません。
中国の金木犀の種類を質問してみました:
・丹桂 (Red Osmanthus)
・金桂 (Golden Osmanthus)
・銀桂 (Silver Osmanthus)
・四季桂
金桂。日本のウスギモクセイに相当するとする説が一般だが、香りが薄いウスギにたいして、金桂の香りは強く香料は、この花がメインの原料となる
いろいろありますね。もちろん、植物学の分類上は、まだまだあるはずですが、一般的に流通している金木犀の種類は上記4種類。
この中で桂林香料さんが使用する金木犀は「Golden」(金桂)。香りが最も強いとのことです。
日本にも金木犀や銀木犀などの種類がありますが、どれがどれに相当するかわかりますか?
日本の金木犀 = 金桂(きんけい)?
と推測された方が多いのではないでしょうか? 実は、丹桂(たんけい)が日本の金木犀に相当するという説が一般的です。
金桂は花の色彩からすれば日本の薄黄木犀に近いと思われます。ただ金木犀は色彩の点で丹桂に似ていますが、香りの点で金桂に近いので「金木犀 = 丹桂」説には異論も多そうです。
私の想像では日本には金桂が輸入され、現地化の過程で変異を起こし現在の金木犀になったかも?・・・と考えています。
ただ、金木犀はそもそも日本原産という説もあってよくわからない状況です。将来のDNAによる検証を待つしかありません。
ところで、上記4種の金木犀のうち日本では珍しいと思われる品種が「四季桂」です。文字通り四季咲きの金木犀で、桂林香料さん会社内に植林されていたので拝見しましたが、花付きが悪く香りも弱く香料としては利用しないとのことでした。
金木犀の世界的アブソリュートベンダー
桂林香料さんに取引先の会社さんを質問してみました。ビジネス上の守秘義務と倫理上の問題がありますので詳細には書けませんが、この業界なら誰もが知っている世界的な香料会社さんが多数含まれていました。
日本の大手さんの名前もありましたが、フランスの香料会社さんとの取引がメインのようです。フランスの香料会社さんは伝統的に世界の天然香料産地に強いコネクションと信頼関係を構築しており、また香料の品質や安全性の評価に対してスキルとノウハウをお持ちなので、やはり強いですね。
桂林香料さんは2007年創業。社長のYさんは、桂林生まれの40代女性。彼女は大学卒業後、政府系機関で調香師(パフューマー)として働いていましたが、30代半ば独立し、この会社を起こされました。場所は桂林市内から車で30分程度の広大な工業団地内にあります。
工業団地といっても、トラックだけが行き交う殺伐とした地帯ではなく、桂林を含む広西チワン族自治区がもともと自然が豊かで「植物王国」「薬草の宝庫」と呼ばれている地帯だけに自然とハイテク産業の接点のようなエリアでした。
創業わずか10年未満で100人の従業員をかかえる企業へと成長しました。
「女性の社長さんって、多いですか?」と質問すると珍しくないそうです。中国では女性は家庭に入るという考え方は少なく、学校卒業後は社会に出て働くことが当然のことで、自然と女性社長も少なくないそうです。
天然香料生産をしている会社は世界中にたくさんありますが、先進国では経営自体が成立しにくく、また一般に零細な経営になりがちなビジネスモデルとされていますが、桂林香料さんは巨大で非常に成功されている会社さんでした。
中国の経済自体が、過去10年間、驚異的な経済成長を続けてきましたので、国内の経済発展と政府の大規模な経済政策にうまく会社成長のベクトルが合致したという要因も大きいでしょうか。
この会社さんにも中国経済の勢いを象徴しているかのような輝きを感じました。
ラッキーだった訪問タイミング
金木犀のための訪問なので、金木犀が咲いている時期に行きたかったのですが、まず開花タイミングが不安定ですし、また開花のピーク時に行けば一年の最繁忙期、迷惑になるので少し早いのですが9月中旬に行きました。
桂林市内の金木犀は、先ほど書いたとおりまだまだです。当然、工場もアブソリュート生産はまだ開始されていないと予想していましたが「ラッキーでしたね。今日はちょうど金木犀の今年最初の仕込みをやっています」と。本当にラッキーでした。
香料採取のための仕込み作業
中国は広大なので、市街地がまだでも、すでに開花し収穫可能な金木犀畑がどこかにあるようです。収穫方法は樹木の下に大きな布を敷いて樹木を揺らしたり叩いたりすると、熟した花が自然と落ちてくるといった合理的な方法が採られています。
工場に案内されると、もう目より先に金木犀のふくよかな芳香が感じられ、充満した金木犀の香りに包まれました。ちょっと感動的なな瞬間ですよ。
工場では、集められ大量の桂花が計量され、コンクリート壁で作られたセルに投げ込まれていました。ソルベント抽出するまで食塩水に浸す仕込み作業です。
作業現場の雰囲気は和気あいあいとしており、会社の雰囲気も伝わってきます。
作業されている人は10人程度。全員が桂林香料のスタッフと思っておりましたが、金木犀の花を納品にきている農家さんも数人混じっているそうです。
別の棟ではアブソリュート生産のための設備も拝見させていただきましたが、近代的で大規模な設備はちょっと日本では見ることができない規模でこちらも驚かされました。写真は許可されませんでしたので掲載できないことが残念です。
大変有意義な工場見学となりましたが、一つだけ心残りなことは、金木犀畑を拝見できなかったことです。「ここからかなり遠いので無理です」と断られました。
本当に遠いからかもしれませんし、あるいは別の理由かもしれません。企業同士の取引ですので、そのへんはいろいろな事情があると思われます。しかし、信頼関係を構築できれば次回は見せてもらえると期待しています。
まとめ
今回の出張は、中国の金木犀事情にいろいろな意味で触れることができた有意義な旅になりました。世界的に有名な金木犀の街で金木犀の香料を生産している会社さんと率直な意見交換ができたことは、私たちにとっても宝のような機会だったと感じます。
私たちの訪問を快く受け入れてくれた桂林香料の代表Y氏とスタッフのみなさまにこの場を借りてお礼を申し上げます。
また、今回、桂林と金木犀のトピックをこうやって記事としてみなさまにお伝えできる機会があることに感謝いたします。
【DATA】
Guilin Four Seasons Sunshine Flavours & Fragrances(FSS F&F)
http://www.gltop.com.cn/
(2015-10-06)
< 今年もダブル・ベタガードで決まり! || 2015年のキンモクセイの花 >
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