( 香水工場の )
香る生活
2013年のダマスクローズ出来映え
(2013/07/02)
(114) 当社にとってバラ精油(ローズオイル)は、香水とスキンケア製品(コンシンのジェル)の原料としてとっても重要。使用するローズオイルは主にブルガリア産ダマスクローズ・オイル。毎年この時期になると「今年の生育はどうだったかな?」と気になります(2013/07/01)
(ブルガリア・バラの谷のダマスクローズ畑。「バラの谷」とはいえ、山から山まで距離があり普通に見れば「平原」) Photos by NatureBase AD Bulgaria
ブルガリアは東欧の国。西は黒海に面し、南はトルコとギリシアに接しています。穏やかな気候で農業が盛んな国です。料理はヘルシーで日本人の口に合います。日本ではヨーグルトのイメージが強いのですが、香水関係者にとっては世界最大のバラ精油生産国。
香水の歴史は、ある意味、バラの香りを追求してきた歴史でもあり、「ブルガリア = 香水関係者の巡礼地」で、香水業界から多くの人が足を運びます。
ブルガリア中央部「バラの谷」と呼ばれるエリアは、バラの生育にとってとくに理想的な気候と土壌条件を備えており、世界的に有名なバラ産地の地位を獲得しています。このへんは私が昔書いたダマスクローズの取材記事に詳しいです。
10年くらい前の統計では、ブルガリアは世界のダマスクローズ精油の70%を供給していると言われていました。現在は少し落ちていると推測されますが、それでも圧倒的な存在のはずです。
近年、イラン・トルコ・モロッコ・アフガニスタン・中国などで精油目的のダマスクローズ栽培が品質・生産量ともに目を見張る勢いで成長していますが、それでも知名度・人気という点で、ブルガリア産のダマスクローズは「ブルガリアン・ダマスクローズ」と呼ばれ「ローズオイルのブランド」的な地位を獲得しています。
ブルガリアで栽培されている精油用のバラ品種は主にダマスクローズ、それに数量は多くありませんが「アルバ品種」です。ダマスクローズは強く豪華な香り、アルバは上品で気品に満ちた香りが特徴です。
ダマスクローズは、4月頃から開花し5月に収穫を行います。花を手でつみ取り近所の蒸留所に運び込んでローズオイルを採取します。これは時間との勝負で、夜明け前から日が昇るまでの数時間に、いかに多く摘み取り、そしてすぐに蒸留所に運び込めるかでローズオイルの収量と品質に差が出ます。
バラ農家は、家族総出で摘み取りに向かいます。この時期は季節労働者も含めて町全体・村全体が戦争のような状況になります。
(収穫されたダマスクローズ) Photos by NatureBase AD Bulgaria
一帯の多数の蒸留所からモクモクと蒸気が吐き出される光景は、この時期のバラの谷の風物詩です。無数の咲いているバラの花とともに、この蒸気のおかげで、町全体・村全体がバラの香りに包まれますので、外から来た人には感動的です。
私もカザンラク駅を降り立ったとき、町全体に漂うダマスクローズの香りに圧倒されました。そして、はるばるバラの巡礼地にやってきた実感を体験しました。しかし、カザンラクの人にはごく普通の香りと光景のようであまり感動はないようです。御殿場の人が目前に迫る富士山の偉容を見ても驚かないことと同じなんでしょうね。
このカザンラクは「バラの谷」の中に位置する比較的大きな町です。毎年6月に市主催で「バラ祭り」が開催されます。2013年は6月1日-2日に開催されました。
「バラ祭り」は以前から自然発生的にバラの谷のあちこちにありましたが、近年では世界中から観光客を集める一大イベントに成長しています。「バラ祭り」では、民族衣装を着た女性たちが町を練り歩き、楽しい民族音楽やダンスを披露してくれます。
なお、ブルガリアといえば、民族衣装をまとった女性がバラの花摘みをする写真ですが、あんな格好で花摘みをすることは絶対にありません。正装して野良仕事というわけですから、かなりヘンな写真なんですが、観光パンフレットとしては絵になるんですよね。
さて、今年のダマスクローズの生育状況ですが、一言で言えば「不作」の年になるかもしれません。
日本は近年、亜熱帯化が進んでいると言われますが、ヨーロッパも地球温暖化が進んでいるようです。4月といえばまだ寒いはずのモスクワで、公園の噴水に飛び込む市民の写真がニュースで流れはじめたのは、2000年代の初期だったと思います。
気づけば、毎年4月から熱波がロシアから東欧・地中海エリアを襲うことが多くなりました。たとえば、以前のパリでは、毎年バラの最盛期である5月、冷涼な初夏の中でバラの開花を楽しめたのですが、このところ暑くてバラが「早く咲く」「痛みやすい」といった嘆きが多くなったようです。
バラ農園 ( NatureBase AD Bulgaria(*1) ) のオーナーさんからいただいたメールによると「2013年4月後半は、この60年で最高の気温を記録した」とのことです。
5月に入っても非常に熱く、収穫が早まっただけでなく短期間に一気に収穫を行ったそうです。バラの開花時期は、芳香成分が離散しないよう晴天より、むしろ曇天の方がいいのですが、カラカラの晴天が続きコンディションはよくなかったことを知りました。
記録的な猛暑の結果、収穫は例年の20%減。天然物ですので、ワインのように当たり年やそうでない年の変化は、仕方ないことですし、それも自然の一部として受け入れなければいけませんが、バラの収穫に関心がある私たちには、毎年ドキドキしながらこの4月-5月を過ごします。
(見事なダマスクローズ。日本で栽培するとこの大きさ・形・色つやになりにくい) Photos by NatureBase AD Bulgaria
とはいえ、今年もすばらしいローズオイルができたことは間違いありません。当社にも今月中には、できたてほやほやのローズオイルがブルガリアより入荷予定です。
これらは一部は「コンシンのジェル」に、一部は12月リリースのオードパルファム「ローズの贈り物」になります。ワクワク。ご期待ください。これを書いているだけで豪華な香りがしてきそうで、やや興奮気味です。
(追記:2013/11/18)
2013年 コンシンのジェル完成
(*1) NatureBase AD Bulgaria・・・ブルガリアのバラ栽培及び蒸留所を経営されている会社さん
(2013-07-02)
(114) 当社にとってバラ精油(ローズオイル)は、香水とスキンケア製品(コンシンのジェル)の原料としてとっても重要。使用するローズオイルは主にブルガリア産ダマスクローズ・オイル。毎年この時期になると「今年の生育はどうだったかな?」と気になります(2013/07/01)
(ブルガリア・バラの谷のダマスクローズ畑。「バラの谷」とはいえ、山から山まで距離があり普通に見れば「平原」) Photos by NatureBase AD Bulgaria
香水の歴史は、バラの香りへの憧れの歴史
ブルガリアは東欧の国。西は黒海に面し、南はトルコとギリシアに接しています。穏やかな気候で農業が盛んな国です。料理はヘルシーで日本人の口に合います。日本ではヨーグルトのイメージが強いのですが、香水関係者にとっては世界最大のバラ精油生産国。
香水の歴史は、ある意味、バラの香りを追求してきた歴史でもあり、「ブルガリア = 香水関係者の巡礼地」で、香水業界から多くの人が足を運びます。
ブルガリア中央部「バラの谷」
ブルガリア中央部「バラの谷」と呼ばれるエリアは、バラの生育にとってとくに理想的な気候と土壌条件を備えており、世界的に有名なバラ産地の地位を獲得しています。このへんは私が昔書いたダマスクローズの取材記事に詳しいです。
10年くらい前の統計では、ブルガリアは世界のダマスクローズ精油の70%を供給していると言われていました。現在は少し落ちていると推測されますが、それでも圧倒的な存在のはずです。
ローズオイルのブランド、ブルガリアン・ローズ
近年、イラン・トルコ・モロッコ・アフガニスタン・中国などで精油目的のダマスクローズ栽培が品質・生産量ともに目を見張る勢いで成長していますが、それでも知名度・人気という点で、ブルガリア産のダマスクローズは「ブルガリアン・ダマスクローズ」と呼ばれ「ローズオイルのブランド」的な地位を獲得しています。
ブルガリアで栽培されている精油用のバラ品種は主にダマスクローズ、それに数量は多くありませんが「アルバ品種」です。ダマスクローズは強く豪華な香り、アルバは上品で気品に満ちた香りが特徴です。
村全体で盛り上がるバラの収穫期
ダマスクローズは、4月頃から開花し5月に収穫を行います。花を手でつみ取り近所の蒸留所に運び込んでローズオイルを採取します。これは時間との勝負で、夜明け前から日が昇るまでの数時間に、いかに多く摘み取り、そしてすぐに蒸留所に運び込めるかでローズオイルの収量と品質に差が出ます。
バラ農家は、家族総出で摘み取りに向かいます。この時期は季節労働者も含めて町全体・村全体が戦争のような状況になります。
(収穫されたダマスクローズ) Photos by NatureBase AD Bulgaria
町を覆い尽くすバラの香り
一帯の多数の蒸留所からモクモクと蒸気が吐き出される光景は、この時期のバラの谷の風物詩です。無数の咲いているバラの花とともに、この蒸気のおかげで、町全体・村全体がバラの香りに包まれますので、外から来た人には感動的です。
私もカザンラク駅を降り立ったとき、町全体に漂うダマスクローズの香りに圧倒されました。そして、はるばるバラの巡礼地にやってきた実感を体験しました。しかし、カザンラクの人にはごく普通の香りと光景のようであまり感動はないようです。御殿場の人が目前に迫る富士山の偉容を見ても驚かないことと同じなんでしょうね。
カザンラクのバラ祭り
このカザンラクは「バラの谷」の中に位置する比較的大きな町です。毎年6月に市主催で「バラ祭り」が開催されます。2013年は6月1日-2日に開催されました。
「バラ祭り」は以前から自然発生的にバラの谷のあちこちにありましたが、近年では世界中から観光客を集める一大イベントに成長しています。「バラ祭り」では、民族衣装を着た女性たちが町を練り歩き、楽しい民族音楽やダンスを披露してくれます。
なお、ブルガリアといえば、民族衣装をまとった女性がバラの花摘みをする写真ですが、あんな格好で花摘みをすることは絶対にありません。正装して野良仕事というわけですから、かなりヘンな写真なんですが、観光パンフレットとしては絵になるんですよね。
2013年の収穫が終わりました
さて、今年のダマスクローズの生育状況ですが、一言で言えば「不作」の年になるかもしれません。
日本は近年、亜熱帯化が進んでいると言われますが、ヨーロッパも地球温暖化が進んでいるようです。4月といえばまだ寒いはずのモスクワで、公園の噴水に飛び込む市民の写真がニュースで流れはじめたのは、2000年代の初期だったと思います。
温暖化の影響か?
気づけば、毎年4月から熱波がロシアから東欧・地中海エリアを襲うことが多くなりました。たとえば、以前のパリでは、毎年バラの最盛期である5月、冷涼な初夏の中でバラの開花を楽しめたのですが、このところ暑くてバラが「早く咲く」「痛みやすい」といった嘆きが多くなったようです。
バラ農園 ( NatureBase AD Bulgaria(*1) ) のオーナーさんからいただいたメールによると「2013年4月後半は、この60年で最高の気温を記録した」とのことです。
猛暑でも天然の産物
5月に入っても非常に熱く、収穫が早まっただけでなく短期間に一気に収穫を行ったそうです。バラの開花時期は、芳香成分が離散しないよう晴天より、むしろ曇天の方がいいのですが、カラカラの晴天が続きコンディションはよくなかったことを知りました。
記録的な猛暑の結果、収穫は例年の20%減。天然物ですので、ワインのように当たり年やそうでない年の変化は、仕方ないことですし、それも自然の一部として受け入れなければいけませんが、バラの収穫に関心がある私たちには、毎年ドキドキしながらこの4月-5月を過ごします。
(見事なダマスクローズ。日本で栽培するとこの大きさ・形・色つやになりにくい) Photos by NatureBase AD Bulgaria
2013年の秋、参上いたします
とはいえ、今年もすばらしいローズオイルができたことは間違いありません。当社にも今月中には、できたてほやほやのローズオイルがブルガリアより入荷予定です。
これらは一部は「コンシンのジェル」に、一部は12月リリースのオードパルファム「ローズの贈り物」になります。ワクワク。ご期待ください。これを書いているだけで豪華な香りがしてきそうで、やや興奮気味です。
(追記:2013/11/18)
2013年 コンシンのジェル完成
2013年 コンシンのジェル完成
(*1) NatureBase AD Bulgaria・・・ブルガリアのバラ栽培及び蒸留所を経営されている会社さん
(2013-07-02)
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