( 香水工場の )
香る生活
原料工場の爆発とビタミン剤の枯渇
香水原料が入手できない悪夢 (2018/03/07)
(Ludwigshafen, Germany, 18 Oct.2016 / Photo: AFP News)
ドイツの総合化学大手。
ドイツには世界最大級の化学・医薬会社がたくさんありますが、BASFは、バイエル、ヘキストとともに「ドイツ総合化学御三家」と呼ばれます。
BASF、通称「バスフ」。
長い歴史がある会社さん。創業は1865年、日本では明治維新がはじまろうとしている頃ですね。
世界屈指の大企業であるBASFでは、一般的な化学製品だけでなく、医薬品原料や香料なども生産されている。
ルートヴィヒスハーフェン工場にて2016年10月17日、さらに1年後の2017年10月31日、爆発と火災が発生しました。
(ルートヴィヒスハーフェンは、ライン川中流域の小さな街で、BASFの主力工場とともに本社所在地)
2017年の事故は、現場近くでパイプラインの組立作業が行われており、作業の火花からパイプライン内のエチレン、プロピレン、ブチレンなどの引火性液体に引火した可能性がありますが、詳細は不明です。
爆発で工場機能の多くが失われて、現在も操業が大きく制限されている模様。
この影響で多種多様な製品の生産が中止に追い込まれました。
その中で、特に世界的に影響が大きい製品(成分)が、シトラールやイソプレノールです。
これらは多くの医薬成分や香料のスタート原料で、スタート原料から派生する多種多様の成分が製造不可となる。
たとえば、シトラールはビタミンA・ビタミンE・イオノンなどの原料。
そのため、ビタミン製剤を製造する医薬品・サプリ・食品会社などへの影響は大きく、現在、世界的にビタミンA・ビタミンEが、産業ベースで非常に枯渇しています。
各社にはそれ相応の製造済み製品在庫があるため、一般消費者への影響はまだ顕在化していません。
しかし、操業再開が遅れれば、世界的な品薄・価格高騰の恐れがあります。
その中で、たとえば、リナロール。
リナロールは、多くの花に含まれるフローラルな香りの代表的成分です。スズラン、ラベンダー、ベルガモットのような芳香の成分です。
リナロールが、入っていない香水は、探す方が困難と思えるほど、香水の基本中の基本成分。
このリナロールは、BASFでの生産が止まっているイソプレンを出発原料。
BASFの工場爆発事故のニュースが世界に報道されたとき、日本での報道はほぼありませんでしたし、海外でも大きくは取り上げられませんでした。
一般消費者への影響は直接的でなかったためですが、しかし、食品や医薬品関係者には大きな衝撃が走りました。
また香料会社や香水メーカーにも大きなショックでした。
原料調達に走る関係者で、業界は騒がしくなり、一部では買い占め騒動も発生しているようです。
実は私もリナロールを求めて香料会社や商社など数社に電話を入れましたが、すべて「手に入らない」と断られました。
製品在庫がある程度ありますので、すぐには影響ありませんが、新規製造分で影響を受けるものがあります。
その一つが「5月の贈り物」。
今年の「5月の贈り物」はまだ公表しておりませんが、「アネモネ」という新作を予定しています。こちらの製造にリナロールが不足しており、数量が取れない見通しです。
BASF最新のプレスリリースによると、この3月末にシトラールの工場が完成(そうなんです、修理というレベルでなく再度立て直し)し、設備の導入・試運転・操業開始は6月から夏を見込んでいるとのことです。
※シトラールの出荷の今後の見通しアナウンスメント(2018年1月):
BASF TRADE NEWS | JAN 10, 2018
※シトラール再出荷スケジュール専用ページ:
Force Majeure Citral Value Chain
リナロールをはじめ、様々な成分が入手できない状態ですが(当社ではとくにISO E SUPERの調達に苦しんでいる)、秋口から順次供給がはじまるのではないかという予想が業界の噂です。
(2018-03-07)
(Ludwigshafen, Germany, 18 Oct.2016 / Photo: AFP News)
BASFとは?
ドイツの総合化学大手。
ドイツには世界最大級の化学・医薬会社がたくさんありますが、BASFは、バイエル、ヘキストとともに「ドイツ総合化学御三家」と呼ばれます。
BASF、通称「バスフ」。
長い歴史がある会社さん。創業は1865年、日本では明治維新がはじまろうとしている頃ですね。
世界屈指の大企業であるBASFでは、一般的な化学製品だけでなく、医薬品原料や香料なども生産されている。
不運な爆発事故
ルートヴィヒスハーフェン工場にて2016年10月17日、さらに1年後の2017年10月31日、爆発と火災が発生しました。
(ルートヴィヒスハーフェンは、ライン川中流域の小さな街で、BASFの主力工場とともに本社所在地)
2017年の事故は、現場近くでパイプラインの組立作業が行われており、作業の火花からパイプライン内のエチレン、プロピレン、ブチレンなどの引火性液体に引火した可能性がありますが、詳細は不明です。
爆発で工場機能の多くが失われて、現在も操業が大きく制限されている模様。
世界への影響
この影響で多種多様な製品の生産が中止に追い込まれました。
その中で、特に世界的に影響が大きい製品(成分)が、シトラールやイソプレノールです。
これらは多くの医薬成分や香料のスタート原料で、スタート原料から派生する多種多様の成分が製造不可となる。
たとえば、シトラールはビタミンA・ビタミンE・イオノンなどの原料。
そのため、ビタミン製剤を製造する医薬品・サプリ・食品会社などへの影響は大きく、現在、世界的にビタミンA・ビタミンEが、産業ベースで非常に枯渇しています。
各社にはそれ相応の製造済み製品在庫があるため、一般消費者への影響はまだ顕在化していません。
しかし、操業再開が遅れれば、世界的な品薄・価格高騰の恐れがあります。
リナロールという成分
その中で、たとえば、リナロール。
リナロールは、多くの花に含まれるフローラルな香りの代表的成分です。スズラン、ラベンダー、ベルガモットのような芳香の成分です。
リナロールが、入っていない香水は、探す方が困難と思えるほど、香水の基本中の基本成分。
このリナロールは、BASFでの生産が止まっているイソプレンを出発原料。
BASFの工場爆発事故のニュースが世界に報道されたとき、日本での報道はほぼありませんでしたし、海外でも大きくは取り上げられませんでした。
一般消費者への影響は直接的でなかったためですが、しかし、食品や医薬品関係者には大きな衝撃が走りました。
また香料会社や香水メーカーにも大きなショックでした。
原料調達に走る関係者で、業界は騒がしくなり、一部では買い占め騒動も発生しているようです。
実は私もリナロールを求めて香料会社や商社など数社に電話を入れましたが、すべて「手に入らない」と断られました。
当社への影響
製品在庫がある程度ありますので、すぐには影響ありませんが、新規製造分で影響を受けるものがあります。
その一つが「5月の贈り物」。
今年の「5月の贈り物」はまだ公表しておりませんが、「アネモネ」という新作を予定しています。こちらの製造にリナロールが不足しており、数量が取れない見通しです。
BASF工場の今後の見通し
BASF最新のプレスリリースによると、この3月末にシトラールの工場が完成(そうなんです、修理というレベルでなく再度立て直し)し、設備の導入・試運転・操業開始は6月から夏を見込んでいるとのことです。
※シトラールの出荷の今後の見通しアナウンスメント(2018年1月):
BASF TRADE NEWS | JAN 10, 2018
※シトラール再出荷スケジュール専用ページ:
Force Majeure Citral Value Chain
今後の見通し
リナロールをはじめ、様々な成分が入手できない状態ですが(当社ではとくにISO E SUPERの調達に苦しんでいる)、秋口から順次供給がはじまるのではないかという予想が業界の噂です。
(2018-03-07)
< 「越幾斯」 なんと読むでしょう? || ネイルケア「こまめ」はじまり >
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