Home > ブログ
リスト表示 | (edit)
( 香水工場の )

香る生活


香水と Iso-E-Super
この原料が入手できなくなり香水業界は騒然 (2018/11/07)

super
( "Super"というだけあって文字通り、万能というイメージが強い人気の香料 )


Iso E Superとは?


米国の香料メジャー IFF (International Flavors & Fragrances)社の商品名で非常に人気がある合成香料。

読み方は、日本では「イソ・イー・スーパー」、英語圏では「アイエスオー・イー・スーパー」。

もしかしたら「アイソ・イー・スーパー」と呼んでい人もいるかもしれない。

香水業界では「Iso E」で通る。

香りの特徴は「アンバーグリスのような香り」で「ウッディの香り」と言われるが、一言では表現しがたい多彩な香りを醸し出す。

人によっては、乾いた香り、シダー(針葉樹)の香り、ベルベットのような香り、フローラルな香りとも表現される。中にはレモンのようなとも、つまり、多彩なのだ。

しかも、ロングラスティング(長い持続性)で、拡散性がよく(香水の性質としてとても重要)、そして、他の香料と喧嘩しないという点も凄い。

(とても美しい高貴な貴婦人で、性格がよく、人付き合いもよい、そんな存在なのだ)

しかも、原料価格はリーゾナブル・・・こんな原料、なかなかない。

余談だが、英語圏WikipedaiによるとIso E Superは、タバコのフレーバーとしても使用されているとか。

(やり過ぎだろうと思わないことはない)


フェロモン効果というウワサも


フェロモン効果とは、異性にアピールするセクシー効果のことだ。

Iso E Superとムスクには、このウワサが絶えない。これは日本よりも、むしろ海外でささやかれるウワサである。

香水を販売する立場の我々からすれば、このウワサは、事実であろうとなかろうと、ありがたい。

このウワサひとつで、売れ方が全然違うのだろうから。ブランドさんによっては、意図的なリークをしてでも流したいウワサだろう。

しかし、中立的な立場で言えば、ヒトフェロモン自体存在が疑われているし、Iso E Superにそのような効果があることを科学的に検証した文献や事例を、私は見たことがない。


私の感じ方


アンバーライクで、ウッディーライクな香りである Iso E Super だが、個人的な感想を書きたい。

私の感じ方は「あまり香りを感じない」だ。

スーパーな香料の話をしているのに、腰を折るような内容で恐縮だが、調香師(パフューマー)のみなさんが評価するような香りには感じない。

実を言うと、香水には必須の原料であるムスクも、私はあまり感じない方である。これは嗅覚の生理的な問題であり、パフューマーの中にも、実はまれにそういう人がいるようだ。

しかし、直接感じなくてもIso E Superやムスクを香水に入れるか入れないかでは、全体の印象に大きな影響がある。

それらは、やはり少しでも入っていた方が、香りのまろやかさや深みぐんと増す気がする。


モダン香水ではほぼ必須


Iso E Super の凄さは、1990年代以降のモダン香水では、量の違いはあるけど、これを入れない香水は珍しいといわれるほどポピュラーな原料に成長している点だ。

それ自体の香りの良さ以外に、他の香料との相性がよく、他の香料のカドを落としてまろやかにする効果があるとされる。

(コーヒーに入れるミルクのようなものか)


Iso E Superの歴史


1973年に IFF社の John Hall氏 と James Sanders氏 によって発見される。

そのとき命名されたパテント名は「Isocyclemone E(イソシクレモンE)」だが、その後、より香りが強い製造方法を生み出され「Iso E Super」と命名される。

(最初の Isocyclemone はレモンのような香りだったのかな?)

今年は2018年なので、なんと45年も前(半世紀も前)に生み出された香料だが、これが現在の地位を獲得するまでには時間がかかった。

この香料のブレイクスルーとなった事件は、1988年、「Christian Dior Fahrenheit」のリリースだった。

「ファーレンハイト」という香水、現在でも販売されているメンズの香りだが、それまでにない香りとその商業的大成功に世界中のパフューマーが衝撃を受けたのだ。

それ以降、次々にIso E Superは採用されていく。

下記は、香水ファンならご存じの世界的なベストセラーとなった名香で、相当濃い濃度でIso E Superを配合した製品だ:

・Eternity (Calvin Klein, 1988)

・Tresor (Lancome, 1990)

・Feminite du Bois (Shiseido, 1992)

そして、このIso E Superブームのクライマックスが、なんと、成分が、ついに「Iso E Super 100%」という製品の出現である。

・Molecule 01 (Escentric Molecules, 2006)


衝撃的! Iso E Super だけの香水? "ん~パフューマーってなんだろう" と疑問も湧いてくる。

海外のユーザも同じで、それならIso E Superを自分で買って香水として使ってもいいわけではと実践する人もいるが、そこはブランド・パワーの心理的な影響も大きいだろう。

おおむね、自分作の Iso E Super 香水と Molecule 01 とは違う香りに感じるようだ。

また、こちらの製品のIso E Superは、通常のIso E Superではなく、特別バージョンではないかとも考えられる。

有機化合物は同じ化学式でも異性体があって微妙に違うバリエーションが発生するので、ありえる。

(IFF社がこのためだけに特別仕様Iso E Superを製造するとは思えないが、あるかも、私にはわからない)


Iso E Superが入手できない!


ようやく今日の本題に入ってきた。

しかし、あまり長く書いてきたので、ここで力つきてしまった。

要は、Iso E Superは、現在入手できないのだ。

当社もIso E Superを、それなりに多くの製品に配合しているため、在庫切れになっても製品製造ができない製品が続出中となっている。

(そして、この調子では今後も在庫切れアイテムが増える予感)

この部分は、もう一回書き直すが、現在在庫切れで苦しんでいる大きな原因が、このIso E Superなのだ → 在庫切れ info

(今日はこれくらいで)


□関連記事
・この続編:「スノーミント」はなぜ止まったか?



(2018-11-07)
search
月一メルマガ

TOP