( 香水工場の )
香る生活
「スノーミント」はなぜ止まった?
今日は、世界中のパフューマーさんお気に入りのスーパー香料"Iso E Super"続編です (2018/11/27)
( 「スノーミント」を皮切りに、いくつかのアイテムが在庫切れ。その原因は・・・ )
前回の Iso E Super の話は、予想外に長く書いてしまった。自分の記事を読み返して、多くの人にとっては、どうでもよい話なのに、つい力んだなと思う。
しかし、もし香水の中身に関心がある方なら、覚えていても損はない成分名なので、記憶にとどめて欲しい。
さて、長々と話してきた理由は、現在、この香料が手に入らないからだ。
2017年の秋くらいから Iso E Super の流通が世界的に止まっていることに気づいた。
実はこの頃、ドイツ BASF 社の本社工場で大火災が発生し、ビタミン剤の原料となる成分の生産が止まった。
この成分は、さまざまな薬品や香料のスタート原料 (この原料をベースにさまざまな成分へと変化可能な原料) だったために、世界中の薬品会社や香料会社の間で、買い付け・買い溜めが起こり大騒ぎとなった。
(業界内の事件なので、一般にはニュースにならなかったが、我々には、文字通り、上を下への大騒ぎだった)
この事件の影響でリナロールという成分の入手が不可能となり、当社でもいくつかの製品の生産がストップした。
(リナロールとは、代表的なお花の香り天然成分。よい香りがするお花で、この成分を含まない花は珍しいというほどの代表的芳香物質)
しかし、結果から言えば、リナロールは半年くらいで流通が徐々に回復し、夏にはストップしていた当社アイテムも復旧していった。
一方、 Iso E Super 。
こちらは、リナロールほどのインパクトはなく、また、食品や医薬品への応用も少ないため、さらに大きなニュースにならなかった(日本での、メディアによる報道は皆無ではなかろうか)。
そこが伏兵だった。
(香料成分の需要は、食品や医薬品に比較するとあまりにも微少。枯渇すれば香水メーカーには死活問題だが、世界の人々の生活には、ほぼインパクトなしのレベル)
この成分は、米国の香料メジャー IFF 社の製品であることは前回お知らせしたが、実際に製品を供給する企業は、アロマ関連では世界大手の Privi Organics 社(インド)。
こちらのムンバイ近くのマハード工場で2017年4月に爆発が発生。
(現地の人々がスマホで撮影したニュース記事がインドでは多数でている。関心ある方は「Privi Organics, Explosion」で検索)
幸い死者はなく、環境汚染も軽微とのことで、ひとまずよかったと思ったが、その瞬間、香水業界にとっては、Iso E Super が止まったことを意味した。
この年の秋には Iso E Super の入手は厳しくなり、2018年に入ると「まったく手に入らない」状態となり、そのまま今日に至っている。
大企業さんと比較すれば、当社が使用する Iso E Super の量など、鼻クソほどにもない、なのにまったく入手できない。
香料会社や商社など手当たり次第当たっても、だめだった。
マハード工場の再稼働を待つしかないが、爆発の規模が大きかったようで、独BASF の爆発同様、"修理レベル"でなく"工場再建レベル"で復興中とのこと。
先日の情報では「工場はだいぶんできた」との話だった。
が、海外の人々の「だいぶんできた」感覚は、日本人とはなかり違うので、どこまでてきたか、私にはまったくわからない。
インドに飛んだところで、大手取引先でもない私に工場をみせてくれるはずもなく、情報も得られないだろう。
現在、当社製品の欠品で一番苦しんでいる成分が、Iso E Super だ。
当社製品にも Iso E Super は多用されており、これが入手できずいる。その結果「スノーミント」を皮切りに次々と在庫切れが発生している。
本日11月下旬現在、 Iso E Super の入荷見込みはまったく立っていない。
在庫切れを起こしているアイテムは、こちら → 在庫切れ info。
この在庫切れアイテムのすべてが Iso E Super 由来というわけではないが、多くが、Iso E Super が原因で再生産できずにいる。
社内では、他の似た原料での作り直し案も出たが、香りが若干変化するリスクを考えれば、今はじっと待つ方が得策だろうという判断をしている。
みなさまにはご迷惑をお掛けするが、以上の状況である。かたじけなく、お待ちいただくしか今は手立てがないこと、お許しいただきたい。
□関連記事
香水と Iso-E-Super
(2018-11-27)
( 「スノーミント」を皮切りに、いくつかのアイテムが在庫切れ。その原因は・・・ )
長い話の理由
前回の Iso E Super の話は、予想外に長く書いてしまった。自分の記事を読み返して、多くの人にとっては、どうでもよい話なのに、つい力んだなと思う。
しかし、もし香水の中身に関心がある方なら、覚えていても損はない成分名なので、記憶にとどめて欲しい。
さて、長々と話してきた理由は、現在、この香料が手に入らないからだ。
独BASFの火災とビタミン剤の枯渇
2017年の秋くらいから Iso E Super の流通が世界的に止まっていることに気づいた。
実はこの頃、ドイツ BASF 社の本社工場で大火災が発生し、ビタミン剤の原料となる成分の生産が止まった。
この成分は、さまざまな薬品や香料のスタート原料 (この原料をベースにさまざまな成分へと変化可能な原料) だったために、世界中の薬品会社や香料会社の間で、買い付け・買い溜めが起こり大騒ぎとなった。
(業界内の事件なので、一般にはニュースにならなかったが、我々には、文字通り、上を下への大騒ぎだった)
この事件の影響でリナロールという成分の入手が不可能となり、当社でもいくつかの製品の生産がストップした。
(リナロールとは、代表的なお花の香り天然成分。よい香りがするお花で、この成分を含まない花は珍しいというほどの代表的芳香物質)
しかし、結果から言えば、リナロールは半年くらいで流通が徐々に回復し、夏にはストップしていた当社アイテムも復旧していった。
昨年から止まっていた Iso E Super
一方、 Iso E Super 。
こちらは、リナロールほどのインパクトはなく、また、食品や医薬品への応用も少ないため、さらに大きなニュースにならなかった(日本での、メディアによる報道は皆無ではなかろうか)。
そこが伏兵だった。
(香料成分の需要は、食品や医薬品に比較するとあまりにも微少。枯渇すれば香水メーカーには死活問題だが、世界の人々の生活には、ほぼインパクトなしのレベル)
この成分は、米国の香料メジャー IFF 社の製品であることは前回お知らせしたが、実際に製品を供給する企業は、アロマ関連では世界大手の Privi Organics 社(インド)。
こちらのムンバイ近くのマハード工場で2017年4月に爆発が発生。
(現地の人々がスマホで撮影したニュース記事がインドでは多数でている。関心ある方は「Privi Organics, Explosion」で検索)
幸い死者はなく、環境汚染も軽微とのことで、ひとまずよかったと思ったが、その瞬間、香水業界にとっては、Iso E Super が止まったことを意味した。
そして Iso E Super は止まった
この年の秋には Iso E Super の入手は厳しくなり、2018年に入ると「まったく手に入らない」状態となり、そのまま今日に至っている。
大企業さんと比較すれば、当社が使用する Iso E Super の量など、鼻クソほどにもない、なのにまったく入手できない。
香料会社や商社など手当たり次第当たっても、だめだった。
マハード工場の再稼働を待つしかないが、爆発の規模が大きかったようで、独BASF の爆発同様、"修理レベル"でなく"工場再建レベル"で復興中とのこと。
工場はかなりできあがってきた?
先日の情報では「工場はだいぶんできた」との話だった。
が、海外の人々の「だいぶんできた」感覚は、日本人とはなかり違うので、どこまでてきたか、私にはまったくわからない。
インドに飛んだところで、大手取引先でもない私に工場をみせてくれるはずもなく、情報も得られないだろう。
在庫切れを起こしたアイテム
現在、当社製品の欠品で一番苦しんでいる成分が、Iso E Super だ。
当社製品にも Iso E Super は多用されており、これが入手できずいる。その結果「スノーミント」を皮切りに次々と在庫切れが発生している。
本日11月下旬現在、 Iso E Super の入荷見込みはまったく立っていない。
在庫切れを起こしているアイテムは、こちら → 在庫切れ info。
この在庫切れアイテムのすべてが Iso E Super 由来というわけではないが、多くが、Iso E Super が原因で再生産できずにいる。
お待ちいただくしか・・
社内では、他の似た原料での作り直し案も出たが、香りが若干変化するリスクを考えれば、今はじっと待つ方が得策だろうという判断をしている。
みなさまにはご迷惑をお掛けするが、以上の状況である。かたじけなく、お待ちいただくしか今は手立てがないこと、お許しいただきたい。
□関連記事
香水と Iso-E-Super
(2018-11-27)
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