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( 香水工場の )

香る生活


ソニア・リキエルの清算
今日は、香水から少し離れるが、フランスのファッション・ブランド「ソニア・リキエル」のニュースを読んで、現代の中小ブランドの運命について考えてみた (2019/07/29)


「ソニア リキエル」、身売り先がなく清算へ 店舗も即日閉店(WWD 2019/07/26)



ソニア・リキエルとは?


ソニア・リキエルは、日本でも愛用者が多いブランド。

もしやフランス人の感覚では、日常的な色彩やデザインかもしれませんが、外国人から見ればフランスらしさとかわいらしさが両立しているブランドさんでした。


世界的ブランドもこんなにあっさり?


ソニア・リキエルの原点は、創業者ソニア・リキエルさんが、1968年に創業したメゾン。「ニットの女王」と称されたソニアさんは2016年に亡くなりますが、その後わずか3年で倒産という事態に至りました。

(世界的ブランドなのに、こんなにあっさり終わるのか・・)

ブランドは、母体の事業会社が倒産しても、ブランドそのものが消えるわけでない。

しかし、ブランドを支えた資産(商標権や人材、工場、ノウハウ)は、清算の時点で、離散・流出してしまう可能性が高く、今後の再起の可能性は不明。

世界的知名度の高さを考えれば、投資家が放置するとも思えないが、残念ながら手をさしのべた投資家はいなかったようです。


中小ブランドの運命を象徴


WWDの記事にはこう書かれています。

「LVMHやケリングの業績は19年も好調だが、ソニア リキエルの清算は、より小規模なファッションブランドが置かれている苦境を浮き彫りに」

さすが WWD、視点が大人ですよね、この部分は私には共感する部分。

LVMH や KERING は、数多くの世界的ブランドを傘下に持つブランド帝国、相変わらず世界中で絶好調のようですが、もうこのクラスになると、ブランドというより多国籍大企業。

ブランドは、本来、創業者とその家族による小規模経営が伝統的な形態だった。

しかし、1980年代 LVMH の出現は、ブランドといえども資本主義体制に組み込まれ、大企業にならなければ生き残れないことを世界に示した。

それで、ブランドも売り買いの対象へと変貌した。

お金さえあれば、本来そのブランドとは無関係な人や、ブランドへの愛着とは無関係に経営に参加できるようになった。


成長し続けなければ死ぬ世界


毎日、世界中で、無数のあらゆる種類のブランドが生まれいるが、小さなままではブランドは、成功しないのが現代の常識。

成長しないブランドは、成功せず、浸透せず、水が途絶えた植物のように枯れる可能性が高い。

力があるブランドは、LVMH や KERING などのブランド帝国の軍門に下ることが生き残るため常套手段になりつつあり、独立独歩なんて、あまり流行りません。

数年前、フランスの小さな香水ブランドさんと話したことがあります。小さな香水ブランドといっても、当社よりよほど大きく、世界に売り出しはじめたブランドさんだった。

創業者の彼女が言うには、「いったんブランドを立ち上げたら、もう、成長し続けるしか道はない」と話していたことが印象的だった。

(おそらく、外部から、それなりの投資を受け入れているんだろうな、と)


資本主義体制の中で


資本主義体制の中で生き残るためには、投資家からの支援(つまり、投資)が必要。

だけと、いったん受け入れると、さらに資本主義体制の深みにはまり、身動きが取れなくなる・・蟻地獄のような世界。

世のベンチャー企業さんも同じ構図だろう。

(ベンチャーの場合、IPOで、それまでの膨大な借金も投資も一気にチャラにできるが、ブランドは通常 IPO をしない、というか "できない" が正確か)

それまで、家族経営だったソニア・リキエルも、2012年、香港の投資会社に8割の株式を売却。この時点で、実質的に家族経営は終わっていたのだろう。


再建を祈ります


企業の平均寿命は、人よりよほど短く「30年」程度。

それを考えれば、ソニア・リキエルは 60年の歴史を築き、また再建される可能性もあるわけで、ソニア・リキエルさんの偉業は明白だ。再起をお祈りしたい。




(2019-07-29)
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