( 香水工場の )
香る生活
クレオパトラの香水?
古代の話はアバウトだが、ロマンがあって好き (2019/10/14)
( 古代エジプトでは、没薬(ミルラ)が最強香料のようだ ※写真:没薬 )
スタッフが、"クレオパトラの香水が再現されたそうです" と、どこからかニュースを見つけて教えてくれた。
(クレオパトラの香水って、まあ、空想だろうなと思いつつ)
記事を見せてもらうと、再現したのは、エジプトの古代都市の発掘調査をしているハワイ大学・考古学研究所の人々。
実は、エジプト以外、ギリシアやローマの遺跡発掘で、"古代の香水を再現" といったニュースは、たまにでてくる。
読んでみると、結局、正確な文献などはなく、わずかな出土物をもとに空想で作ることが多いようだ。
だから、香水の中身に興味がある人間からすれば、バラエティ番組のエンタメとしてならおもしろいが、ニュースとしては、リアルさがやや物足りない。
しかし、情報の発信側からすれば「香料が発掘される」よりも「発掘された香料を元にクレオパトラの香水を再現」の方が、絶対に読者を引きつける、気持ちはわかるな~
今日の記事は下記のニュースを読んで投稿:
・Cleopatra May Have Once Smelled Like This Recreated Perfume
(クレオパトラは、こんな香りだったのでは - SMITHSONIAN.COM)
・Scent of an Egyptian queen? Scientists recreate perfume that could have been worn by Cleopatra
(これがクレオパトラの香り? - The National UAE)
・Cleopatra's ancient perfume recreated
(クレオパトラの香水、再現される - ハワイ大学ニュース)
・Archaeologists Recreate Ancient Egyptian Perfume Worn By Cleopatra
(考古学者、クレオパトラの香水復刻 - IFLSCIENCE)
クレオパトラは、西洋古代史において、もう圧倒的な存在、スーパースターなので、彼女の美容法、たとえば、バラの花びら風呂やロバのミルク風呂に入るといったこと自体が、説得力ある美容法となりがち。
(余談だが、ロバ乳入浴法は、伝説によると700頭のロバが必要だったとか → Donkey_milk)
香水の歴史を勉強すると、クレオパトラとマリー・アントワネットの逸話は必ず触れられる話題だが、実のところ、クレオパトラが香水史に果たした役割はよくわからない。
香水を使っていたかどうかさえ、わからない。
少なくとも現代の我らがイメージする香水は使っていないはずだ。
クレオパトラの香りは、ワシントンDCにある National Geographic Museum (ナショナルジオグラフィック博物館)で開催された "Queens of Egypt" (エジプト女王展) のために制作された。
制作された香水は2種類で、そのタイトルは「Mendesian & Metopian」(メンデスとメトピアの香水、メンデスとメトピアは古代都市で香水で有名らしいが、詳細はよくわからず時間切れ)
古代の香りに興味がある人はぜひエジプト女王展にお越しいただき、香りをお確かめください、とのこと。
ただし、8月-9月開催だったので、残念ながら読者のみなさまには、事後報告となったことお詫びしたい。
ところで、古代エジプトに香水は存在したか?という話だが、もちろん、存在しない。
香水とは、一般に香料をアルコールで溶かしたサラサラ液体をさすが、アルコール自体、世界史では10世紀頃、ペルシア(現在のイラン)で発明されたもの。
だから、香水の起源は、早くても10世紀以降となる。
(まあ、しかし、世の中にはアルコールは紀元前にすでに発明されていたという説もあり、ちょっとわからない)
では、今回取り上げている「クレオパトラの香水」とは何か?
「香油」と思われる。
つまり、オリーブオイルのようなドロドロの液体に香料を混ぜたモノである。
高貴な人々は、これをカラダに塗っていたらしい。
おしゃれなクレオパトラだ、彼女も当然、香油を塗っていただろう。
メンデス(Mendes)とは、ナイルデルタ地帯にあるエジプトの古代都市。
いくつかの王朝の都になったことがあるので、日本でいえば奈良あたりのイメージではなかろうか(エジプトのことは全然知らないので、記事を読んだ範囲での憶測で書いている)
そして、古都メンデスは、香水の都として有名らしい。
上のハワイ大学の考古学研究所の人々は、メンデスに近い Tell Timai というところで10年にわたる発掘調査をしている。
紀元前3世紀ころの遺跡発掘では、香油を入れる壺やガラス容器とともにそれらを製造していたと思われる炉が発見され、香油の取引商と考えられている。
(※「香油の取引商」と軽く書いたが、黄金以上の価値があるとされた香油である、小さな貿易商のイメージではなく、現代なら多国籍大企業といったところだろう)
内容物の分析から、没薬(もつやく)・カルダモン・シナモン・オリーブオイルなどが検出された。
これらの結果とギリシア時代に書かれた文献をもとに制作したものが、今回の「クレオパトラの香水」とのこと。
(え、クレオパトラとどう関係あるの?というツッコミは、この際、やめておこう)
クレオパトラの王宮も香水の都メンデスも近いことだし、おおむね、こんな香りをまとっていたのではないか。
記事でも「クレオパトラが使っていたとは証明できないが、可能性はある」とやや苦し紛れなオチとなっていた。
今回復元されたクレオパトラの香り(Mendesian ) の特徴は、一言で言えば没薬。
私は嗅いでいないので、詳細に説明できないが、記事には没薬(もつやく)ベースとのこと。
没薬とは、アラビア半島などで自生している樹木の樹脂のことで、お香系の香りが特徴である。氷砂糖のような外見の固まりだ。
日本でも没薬を焚いて楽しむ人は多い。瞑想系の香りと言われる。
英語では、「myrrh」と表記する、発音は「マー」だ。
日本語では「ミルラ」と呼ばれることがある、これはラテン語かもしれない。ちょっと調べ直して、別の記事として投稿したい。
没薬(もつやく)の一番有名な利用方法は、おそらくミイラ。
防腐剤や薫香料として利用された。
そもそも「ミイラ」の語源は、没薬 = ミルラから来ているという説が一般的らしい。
以上、「らしい」ばかり続いたが、今日の記事はこれまで。
(2019-10-14)
( 古代エジプトでは、没薬(ミルラ)が最強香料のようだ ※写真:没薬 )
空想するしかない古代の香り
スタッフが、"クレオパトラの香水が再現されたそうです" と、どこからかニュースを見つけて教えてくれた。
(クレオパトラの香水って、まあ、空想だろうなと思いつつ)
記事を見せてもらうと、再現したのは、エジプトの古代都市の発掘調査をしているハワイ大学・考古学研究所の人々。
実は、エジプト以外、ギリシアやローマの遺跡発掘で、"古代の香水を再現" といったニュースは、たまにでてくる。
読んでみると、結局、正確な文献などはなく、わずかな出土物をもとに空想で作ることが多いようだ。
だから、香水の中身に興味がある人間からすれば、バラエティ番組のエンタメとしてならおもしろいが、ニュースとしては、リアルさがやや物足りない。
しかし、情報の発信側からすれば「香料が発掘される」よりも「発掘された香料を元にクレオパトラの香水を再現」の方が、絶対に読者を引きつける、気持ちはわかるな~
今日の記事は下記のニュースを読んで投稿:
・Cleopatra May Have Once Smelled Like This Recreated Perfume
(クレオパトラは、こんな香りだったのでは - SMITHSONIAN.COM)
・Scent of an Egyptian queen? Scientists recreate perfume that could have been worn by Cleopatra
(これがクレオパトラの香り? - The National UAE)
・Cleopatra's ancient perfume recreated
(クレオパトラの香水、再現される - ハワイ大学ニュース)
・Archaeologists Recreate Ancient Egyptian Perfume Worn By Cleopatra
(考古学者、クレオパトラの香水復刻 - IFLSCIENCE)
クレオパトラは美容界のインフルエンサー
クレオパトラは、西洋古代史において、もう圧倒的な存在、スーパースターなので、彼女の美容法、たとえば、バラの花びら風呂やロバのミルク風呂に入るといったこと自体が、説得力ある美容法となりがち。
(余談だが、ロバ乳入浴法は、伝説によると700頭のロバが必要だったとか → Donkey_milk)
香水の歴史を勉強すると、クレオパトラとマリー・アントワネットの逸話は必ず触れられる話題だが、実のところ、クレオパトラが香水史に果たした役割はよくわからない。
香水を使っていたかどうかさえ、わからない。
少なくとも現代の我らがイメージする香水は使っていないはずだ。
この香りは「エジプト女王展」の呼び物
クレオパトラの香りは、ワシントンDCにある National Geographic Museum (ナショナルジオグラフィック博物館)で開催された "Queens of Egypt" (エジプト女王展) のために制作された。
制作された香水は2種類で、そのタイトルは「Mendesian & Metopian」(メンデスとメトピアの香水、メンデスとメトピアは古代都市で香水で有名らしいが、詳細はよくわからず時間切れ)
古代の香りに興味がある人はぜひエジプト女王展にお越しいただき、香りをお確かめください、とのこと。
ただし、8月-9月開催だったので、残念ながら読者のみなさまには、事後報告となったことお詫びしたい。
古代エジプトに香水は存在したか?
ところで、古代エジプトに香水は存在したか?という話だが、もちろん、存在しない。
香水とは、一般に香料をアルコールで溶かしたサラサラ液体をさすが、アルコール自体、世界史では10世紀頃、ペルシア(現在のイラン)で発明されたもの。
だから、香水の起源は、早くても10世紀以降となる。
(まあ、しかし、世の中にはアルコールは紀元前にすでに発明されていたという説もあり、ちょっとわからない)
では、今回取り上げている「クレオパトラの香水」とは何か?
「香油」と思われる。
つまり、オリーブオイルのようなドロドロの液体に香料を混ぜたモノである。
高貴な人々は、これをカラダに塗っていたらしい。
おしゃれなクレオパトラだ、彼女も当然、香油を塗っていただろう。
香水の都メンデス
メンデス(Mendes)とは、ナイルデルタ地帯にあるエジプトの古代都市。
いくつかの王朝の都になったことがあるので、日本でいえば奈良あたりのイメージではなかろうか(エジプトのことは全然知らないので、記事を読んだ範囲での憶測で書いている)
そして、古都メンデスは、香水の都として有名らしい。
上のハワイ大学の考古学研究所の人々は、メンデスに近い Tell Timai というところで10年にわたる発掘調査をしている。
紀元前3世紀ころの遺跡発掘では、香油を入れる壺やガラス容器とともにそれらを製造していたと思われる炉が発見され、香油の取引商と考えられている。
(※「香油の取引商」と軽く書いたが、黄金以上の価値があるとされた香油である、小さな貿易商のイメージではなく、現代なら多国籍大企業といったところだろう)
内容物の分析から、没薬(もつやく)・カルダモン・シナモン・オリーブオイルなどが検出された。
これらの結果とギリシア時代に書かれた文献をもとに制作したものが、今回の「クレオパトラの香水」とのこと。
(え、クレオパトラとどう関係あるの?というツッコミは、この際、やめておこう)
クレオパトラの王宮も香水の都メンデスも近いことだし、おおむね、こんな香りをまとっていたのではないか。
記事でも「クレオパトラが使っていたとは証明できないが、可能性はある」とやや苦し紛れなオチとなっていた。
クレオパトラの香り = 没薬(もつやく)
今回復元されたクレオパトラの香り(Mendesian ) の特徴は、一言で言えば没薬。
私は嗅いでいないので、詳細に説明できないが、記事には没薬(もつやく)ベースとのこと。
没薬とは、アラビア半島などで自生している樹木の樹脂のことで、お香系の香りが特徴である。氷砂糖のような外見の固まりだ。
日本でも没薬を焚いて楽しむ人は多い。瞑想系の香りと言われる。
英語では、「myrrh」と表記する、発音は「マー」だ。
日本語では「ミルラ」と呼ばれることがある、これはラテン語かもしれない。ちょっと調べ直して、別の記事として投稿したい。
没薬(もつやく)の一番有名な利用方法は、おそらくミイラ。
防腐剤や薫香料として利用された。
そもそも「ミイラ」の語源は、没薬 = ミルラから来ているという説が一般的らしい。
以上、「らしい」ばかり続いたが、今日の記事はこれまで。
(2019-10-14)
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