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( 香水工場の )

香る生活


香水メーカーにも迫る原材料の高騰
いろんな商品の価格がドンドン上がっています・・・そんなニュースがあふれていて、いまさら取り上げるまでもないのですが、ボクらような「コスメの小規模な製造業」側から内情話は珍しいので、今日はちょっと話してみたい・・(2022/10/05)

インフレが進む( 工場にもインフレの荒波が・・ )


電力価格が上がると・・


生活物資では何が一番高くなったと感じますか?・・とくに小麦、食用油、電力あたりでは?

このうち食用油と電力は、コスメ工場にもインパクトになっています。

何を動かすにも電力が必要な工場では、電力料金が上がれば、何でも上がる。

取引先の工場では、巨大な工場内を照らす水銀灯を全部LED照明へと交換することで、大幅な電力消費削減に成功!・・したが、この1年で電力料金は元に戻った。

(「行って来い」な結果ではあるが、「LED初期投資分が回収できない~」とその社長さんは嘆いておりました)


食用オイルの高騰


みんな大好きなマヨネーズの高騰も激しい、国内メジャーブランドのキユーピーマヨネーズは1年で3回、累計20%くらい上がったらしい。

マヨ高騰は食品オイルの高騰が大きな要因らしいが、食品オイルの高騰は同時にコスメ用オイルの高騰も意味する。

オイルを大量に使っているコスメ工場の社長さんに聞いたら、同じオイルでもオリーブオイルとホホバオイルは比較的安定しているが、ココナッツオイルやパームオイルの高騰が厳しいらしい。

ヒマワリオイルの世界的産地であるウクライナが現在、戦時状態で生産も輸出もままならない。

そこで世界中の食品会社が、ヒマワリオイルからココナッツオイルやパームオイルにシフトしたことが原因のようだ。

ココナッツオイルは石鹸やシャンプー、スキンケアオイルなどの主要原料であり、コスメ業界にとって重要だが、今となっては世界中の食品業界とコスメ業界で争奪戦となっている。

英国の伝統的な庶民の味「フィッシュ&チップス」はヒマワリオイルで揚げていたが、今はオイルが入手困難で次々と廃業に追い込まれているというニュースがでていた。

英国に行った際は、紙に包まれたフィッシュ&チップスをほおばりながら街を歩くのが好きだったが、次回行った時、もうフィッシュ&チップスのスタンドに出会えないかもしれない。

(というか、円安かつインフレの欧米では、もはやマックランチが2千円~3千円の時代である、庶民には海外に行くチャンスそのものが狭まってきている)


ウッドショック


数年前から続いている木材不足。

新築住宅の高騰も周知の話だが、東京森林隊でボランティア経験があるボクとしては国内林業の復活に期待する部分もあり複雑である。

(東京は意外にも大きな山林地帯を有し良質な木材を大量に産出するが、コスト構造上産業として成立しにくい難題を抱えデッドロック状態である)

紙はこの数年、つねに上がり続ける物資に変貌してしまった。

コスメ工場への影響はダンボール箱と商品箱。

ダンボール箱を使わない製造業はおそらくない、大量に使用する工場には痛手である。

先日も取引先から「11月より原紙コストアップに伴う値上げ」という通知が来た。

(この2年で、3~4回目の通知である)

「倉庫の保管場所が許すのなら、今月中に発注いかが?」という内容だった。

親切で言ってくれているのか、営業をかけられているのか微妙である。

同じように容器類や包装に使われるプラスティックも常に上がっている。

今後も続くと言われている。


原料の値上げ


香水の原料の大部分は香料である。

香料の値上げは香水の原価を直撃するだけに、たまに夢でうなされるほど、戦々恐々としている。

実は香料は過去20年絶え間なく穏やかに値上げが続いてきた。

しかし、本当に困ることは、ものによってはある日、突然高騰したり入手できなくなる事態。

たとえば、仮にカリフォルニアで山火事や洪水が発生し、グレープフルーツ畑が壊滅したといったニュースがでたとする・・当社と関係する原料としてはグレープフルーツ精油が影響を受けるだろう。

「グレープフルーツ畑が壊滅」というニュースが世界を回った瞬間、精油はすぐに買い占められ値は上がる。

天然香料は、近年の異常気象に振り回される傾向が激しさを増しているし、こういう事例が頻繁に発生している。

合成香料に関しても似た状況である。

たとえば、数年前、ドイツの化学大手○○社の工場で爆発が起きた。

テロではなく運悪く配管工事中の火花が薬品に引火したらしい。

生産されていた薬品は、香料だけでなく医薬品やビタミン剤原料。

この日からある重要な香料が高騰し、そして1年にわたって入手そのものができなくなるという事態に陥った。

(このとき、その重要成分が世界中でわずか1社でしか製造されていない事実を知った)

世界中で「1社しか製造していない香料や医薬品成分」は案外多い。

「価格を上げます」や「この成分の製造は終了です」と言われればそれまでである。

誰も異議申し立てできない事実を思い知る事件だった。





(2022-10-05)
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