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(229) [投書]夏
私が子供だった頃、夏はもっと透明で、風が軽やかに吹き抜けていきました。病弱なので、もっぱら家の中で過ごす事が多く、父は私のためにオモチャのようなカキ氷削り器を買い、親子三人でよく作ったものです。


夏祭りの屋台で売られている色鮮やかなメロンの緑、イチゴの赤、・・・・・といったシロップではなく、我が家のカキ氷はカルピス(今の子供たちは自分で作って飲んだりするのかしら?)と缶詰ゆで小豆をかけるのが定番でした。カルピスの壜のフタを開けた時の、甘酸っぱい花のような濃い香りと、ゆで小豆の少し気だるい感じの甘い匂い、それに混ざって缶から漂う微かな酸味のある匂い・・・。はっきりと目の前にあるように思い出すことが出来ます。力をこめて氷を削る、まだ若き姿の父も目に浮かんで、私は思わず一人微笑んでしまいます。


先日あまりに暑いので、父が懐かしの氷削り器を戸棚の奥から探し出してきてカキ氷を作ってくれたよ、と母が携帯メールを送ってきました。何をかけて食べたの?とは尋ねなかったけれど、私の鼻先を、あの三つの甘酸っぱい優しい香りが、吹き抜けていきました。


・・・ミリアム:ウオの耳

私の香り・香水のつけ方:


(2008-12-20)
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