( 香水工場の )
香る生活
ワインと香水の意外な共通性#8(保管方法)
どちらも酸化と紫外線と温度変化に弱い
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ワインと香水の意外な共通性の最終回です。日本では電気式ワインセラーの売れ行きが好調とのこと。電気式ワインセラーと冷蔵庫はどう違うの?という疑問があると思います。
・コンプレッサー由来の細かい振動が少ない。ワインは振動を嫌います。
・適度な温度。低温という意味では冷蔵庫はいいのですが、実はワインは低温すぎることをむしろ嫌います。日本の通常のご家庭では冷蔵庫は5度程度で運転されていることが多い思いますが、ワインは15〜18度前後で保管されているワイナリーが多いようです。
・適度な湿度。冷蔵庫の乾燥もワインには脅威。コルクの収縮が心配です。収縮液漏れや雑菌の侵入や酸素の混入というリスクも増大します。高い湿度はカビの原因になりますが、それはコルクの表面だけ。ワイナリーではカビよりも乾燥をはるかに警戒しています。
欧米では、上記のような条件を満たす場所として地下室がワインセラーとして利用されることはよく知られています。地下室なら放射線である紫外線にさらされることもなく化学変質に対しても安心です。
さらに欲を言えば「空気は薄いほうがいい」です。この場合の薄さとは高山での空気の薄さでなく酸素濃度の低さです。地下室は、二酸化炭素が溜まりそうで酸素は薄そうです。ワインは喜びます。酸化はワインの大敵。風味と味の劣化を招くため、二酸化炭素や窒素の多い環境が好まれます。
かなりこだわりのある人は飲みかけのワインボトルに窒素ガスを封入する人もいます。そういうワインボトルへの窒素封入用ガスボンベもワイン専門店などで1000円程度で市販されています。実は、この窒素ガスボンベ。香水の原料である精油などの香料の保管にも使えるのです。精油などの香料も酸化が大敵なので、こんなところもワインと香料の類似性ですね。
私の経験では、香水は夏の室温程度の高温になっても保管にそれほど大きな影響は起きませんが、低くなったり高温になったりという温度変化を繰り返すとよくありません。
物質が膨張と収縮を繰り返す過程で化学的には分子同士の重合や反応が起きやすくなり変質しやすくなるためと推測しています。ワインの保管も温度変化はとくに避けたいものと聞きます。
赤ワインのボトルには通常茶色や紺色に色が付いた遮光瓶(しゃこうびん)が使用されます。遮光瓶の目的は紫外線の影響を少なくするためです。香水の原料である香料もほぼ遮光瓶に入れられます。デフォルト遮光瓶です。医薬品も同じですね。
実は遮光瓶だから光を完全シャットアウトするわけではないのですが(そういう意味ではアルミ缶などは優れている)、ガラス材質は、安価で耐薬品性が優れていて開封せずに中身が見えるため遮光瓶は多用されます。プラスティックは酸素の透過性や耐薬品性で劣ります。
ちなみに、遮光瓶には茶ビン、青ビン、緑ビン、黒ビンなど色の違いがあります。それらは吸収する光の波長や吸収量に違いがあり、茶ビンが一番無難なようです。それが茶ビン普及率の高さではないかと推測しています。
また最先端のUVカット塗装技術も普及してきましたので、もしかすると透明ビンのままで遮光効果があり、今後、色ビンは減少していくかもしれません。
世界最古のお酒、ワイン。なんせ葡萄をもいで放置しておくだけでワインになりますから最古のお酒といわれても納得できます。ハンムラビ法典にはワインの商いについて人々が守ることが規定されているとのことですが、注目すべき点は「飲み過ぎてはならない」という規定もあるそうです。21世紀になっても人類はまだこの過ちを犯し続けています。そんな魅力があるんでしょうね。
今夜もテーブルワインで乾杯!
ワインと香水の意外な共通性#8(保管方法)
ワインと香水の意外な共通性#7(オリ)
ワインと香水の意外な共通性#6(よい製品はよい畑作りから)
ワインと香水の意外な共通性#5(優勢なフランス語)
ワインと香水の意外な共通性#4(アッサンブラージュで奥深く)
ワインと香水の意外な共通性#3(明記されない賞味期限)
ワインと香水の意外な共通性#2(香りを楽しむモノ)
ワインと香水の意外な共通性#1(似た関係)
(2009-07-04)
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ワインと香水の意外な共通性の最終回です。日本では電気式ワインセラーの売れ行きが好調とのこと。電気式ワインセラーと冷蔵庫はどう違うの?という疑問があると思います。
・コンプレッサー由来の細かい振動が少ない。ワインは振動を嫌います。
・適度な温度。低温という意味では冷蔵庫はいいのですが、実はワインは低温すぎることをむしろ嫌います。日本の通常のご家庭では冷蔵庫は5度程度で運転されていることが多い思いますが、ワインは15〜18度前後で保管されているワイナリーが多いようです。
・適度な湿度。冷蔵庫の乾燥もワインには脅威。コルクの収縮が心配です。収縮液漏れや雑菌の侵入や酸素の混入というリスクも増大します。高い湿度はカビの原因になりますが、それはコルクの表面だけ。ワイナリーではカビよりも乾燥をはるかに警戒しています。
欧米では、上記のような条件を満たす場所として地下室がワインセラーとして利用されることはよく知られています。地下室なら放射線である紫外線にさらされることもなく化学変質に対しても安心です。
さらに欲を言えば「空気は薄いほうがいい」です。この場合の薄さとは高山での空気の薄さでなく酸素濃度の低さです。地下室は、二酸化炭素が溜まりそうで酸素は薄そうです。ワインは喜びます。酸化はワインの大敵。風味と味の劣化を招くため、二酸化炭素や窒素の多い環境が好まれます。
かなりこだわりのある人は飲みかけのワインボトルに窒素ガスを封入する人もいます。そういうワインボトルへの窒素封入用ガスボンベもワイン専門店などで1000円程度で市販されています。実は、この窒素ガスボンベ。香水の原料である精油などの香料の保管にも使えるのです。精油などの香料も酸化が大敵なので、こんなところもワインと香料の類似性ですね。
私の経験では、香水は夏の室温程度の高温になっても保管にそれほど大きな影響は起きませんが、低くなったり高温になったりという温度変化を繰り返すとよくありません。
物質が膨張と収縮を繰り返す過程で化学的には分子同士の重合や反応が起きやすくなり変質しやすくなるためと推測しています。ワインの保管も温度変化はとくに避けたいものと聞きます。
赤ワインのボトルには通常茶色や紺色に色が付いた遮光瓶(しゃこうびん)が使用されます。遮光瓶の目的は紫外線の影響を少なくするためです。香水の原料である香料もほぼ遮光瓶に入れられます。デフォルト遮光瓶です。医薬品も同じですね。
実は遮光瓶だから光を完全シャットアウトするわけではないのですが(そういう意味ではアルミ缶などは優れている)、ガラス材質は、安価で耐薬品性が優れていて開封せずに中身が見えるため遮光瓶は多用されます。プラスティックは酸素の透過性や耐薬品性で劣ります。
ちなみに、遮光瓶には茶ビン、青ビン、緑ビン、黒ビンなど色の違いがあります。それらは吸収する光の波長や吸収量に違いがあり、茶ビンが一番無難なようです。それが茶ビン普及率の高さではないかと推測しています。
また最先端のUVカット塗装技術も普及してきましたので、もしかすると透明ビンのままで遮光効果があり、今後、色ビンは減少していくかもしれません。
世界最古のお酒、ワイン。なんせ葡萄をもいで放置しておくだけでワインになりますから最古のお酒といわれても納得できます。ハンムラビ法典にはワインの商いについて人々が守ることが規定されているとのことですが、注目すべき点は「飲み過ぎてはならない」という規定もあるそうです。21世紀になっても人類はまだこの過ちを犯し続けています。そんな魅力があるんでしょうね。
今夜もテーブルワインで乾杯!
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ワインと香水の意外な共通性#1(似た関係)
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