( 香水工場の )
香る生活
2015年、ブルガリアローズできばえ
ブルガリアでは5月からダマスクローズが一斉に開花し花の収穫が始まります。このハーベストシーズンは6月前半にはおおむね終了します。今年は非常によい品質ながら記録的な不作となりました(2015/08/31)
2016年の記事はこちら
(2015年クロップのローズオイルと2014年、2013年の比較スメリング)
今年もブルガリアでは、例年通り収穫を終え、蒸留されたローズオイルは、数週間の熟成期間を経て、早ければ7月には世界中のマーケットに向けて出荷されます。
予約しておいたローズオイルが当社に届いたのは8月上旬でした。
届いた日に、さっそく残っているスタッフを集めてスメリングです。今年の品質は「Not bad」と聞いていましたが、目を閉じるとムエットの先から香るダマスクローズは、パワフルで華やかさが輝いていました。
念のため 2014年、2013年のローズオイルをひっぱりだして比較してみます。
やはり、輝きがある香りです。
「今年はよい出来映えだなー」
その夜、ブルガリアの取引先には「今年の出来映えは、明るくパワフルだ!」とメールしました。ショッキングな返信はその数日後にきました。
品質は悪くないが、収穫量は例年の「7割減だった」という内容です。
ここ数年、天候は大荒れ。地球温暖化の影響か、暑すぎる年が多くなる一方、記録的な長雨と冷夏に見舞われることもあり、ブルガリアローズの栽培には試練が続いています。
しかし、70%の減産?・・・ビジネス運営も、ひどく厳しいのではと感じられ唖然としました。
私は昔、穀物商社に入りたいと思い、そんな会社さんを調べた時期がありましたが、彼らが農家ではなく商社になるこを目指した理由の一つが、農家の宿命である不作・豊作のリスクを非常に嫌っていたからということを知りましたが、今回のメールでも厳しさを思い知らされました。
今年の天候は比較的穏やかで恵まれていました。不作の原因は、3月頃の霜という説もありますが、総合すると不明なようです。とにかくなぜか花の付きが悪かったとのこと。
花の付き方は、前年の7月から8月ころの気候とコンディションの影響を受けるという学説があるらしく、昨年の驚異的な長雨と冷夏が原因の可能性も考え得るとの意見でした。
また、ネットで拾った現地の新聞などによると花摘み(季節労働者)の「労働力不足」や「労使関係の悪化」といった経営上の問題も顕在化してきているようです。
とにかくローズの摘み取りは短期決戦型で、一時に大多数の労働力の集中投下が必要です。これができないと途端に収穫量に影響を与えます。そんなに都合よく労働力を集めることは世界中厳しいはずです。
香料植物のプランテーションは、典型的な労働集約型の産業です。そのため先進国では、おおむね成立しないとされます。当然、日本も香料植物の生産が産業として成立するケースはきわめて希です。
富良野のラベンダー畑のように観光化するなど多角化がない限り厳しいでしょう。
ブルガリアは、1990年代の共産党政権の崩壊時から長年、経済不況に苦しんできましたが、経済的な安定と成長が始まるとこの問題は避けがたいと思われます。
お隣のトルコもダマスクローズの世界的な生産国ですが、こちらも生産量減産のニュースがありました。
Rose oil prices in Turkey expected to skyrocket as production falls
(不作によるローズオイル高騰、トルコ)
7千トンの予想が、5千5百トンとまりとなったというニュースです。4年連続の不作で、このうち今年は最悪の年となった模様です。原因は「極端な暑さと霜」とのこと。こちらも大きな天候不順をかかえているようです。
当然、品薄からローズオイルは高騰します。この高騰には「skyrocket」(スカイロケット)という表現が使用されており、どんなけ高くなるのかと恐怖しました。
ただでさえ、円はユーロに対して相当弱いですが、世界的なローズオイル不足で、さらに高騰するかと思うとややインパクトを感じます。
高くなるだけでなく、そもそもローズオイルを入手できないという事態も発生するでしょう。
そういう状況も知らずに当社は例年通りのレートでローズオイルを購入できました。
取引先からは何も言われていませんが、取引先の好意だったのかと、この記事を書きながら確信しています。
もともと当社は、ローズオイルに対して厳かな気持ちというか、今時の言い方なら「リスペクト」を払ってきました。ローズオイルの香りは神聖にさえ感じられるローズバカです。
しかし、これだけ希少になってくるとこの気持ちもますます強くなります。
今年もよいローズジェルを制作したいし、ローズ香水もよりいっそう大切な気持ちで制作したいと思います。
※武蔵野ワークスでは、ブルガリア産ダマスクローズ(ブルガリアンローズ)から香水の『ブルガリアンローズ・ジェル』『ローズの贈り物』などを生産しております。
(2015-08-31)
2016年の記事はこちら
(2015年クロップのローズオイルと2014年、2013年の比較スメリング)
2015年ローズオイルの到着
今年もブルガリアでは、例年通り収穫を終え、蒸留されたローズオイルは、数週間の熟成期間を経て、早ければ7月には世界中のマーケットに向けて出荷されます。
予約しておいたローズオイルが当社に届いたのは8月上旬でした。
今年のオイルのできばえは?
届いた日に、さっそく残っているスタッフを集めてスメリングです。今年の品質は「Not bad」と聞いていましたが、目を閉じるとムエットの先から香るダマスクローズは、パワフルで華やかさが輝いていました。
念のため 2014年、2013年のローズオイルをひっぱりだして比較してみます。
やはり、輝きがある香りです。
「今年はよい出来映えだなー」
その夜、ブルガリアの取引先には「今年の出来映えは、明るくパワフルだ!」とメールしました。ショッキングな返信はその数日後にきました。
信じがたい不作の年
品質は悪くないが、収穫量は例年の「7割減だった」という内容です。
ここ数年、天候は大荒れ。地球温暖化の影響か、暑すぎる年が多くなる一方、記録的な長雨と冷夏に見舞われることもあり、ブルガリアローズの栽培には試練が続いています。
しかし、70%の減産?・・・ビジネス運営も、ひどく厳しいのではと感じられ唖然としました。
私は昔、穀物商社に入りたいと思い、そんな会社さんを調べた時期がありましたが、彼らが農家ではなく商社になるこを目指した理由の一つが、農家の宿命である不作・豊作のリスクを非常に嫌っていたからということを知りましたが、今回のメールでも厳しさを思い知らされました。
記録的な不作の原因は?
今年の天候は比較的穏やかで恵まれていました。不作の原因は、3月頃の霜という説もありますが、総合すると不明なようです。とにかくなぜか花の付きが悪かったとのこと。
花の付き方は、前年の7月から8月ころの気候とコンディションの影響を受けるという学説があるらしく、昨年の驚異的な長雨と冷夏が原因の可能性も考え得るとの意見でした。
また、ネットで拾った現地の新聞などによると花摘み(季節労働者)の「労働力不足」や「労使関係の悪化」といった経営上の問題も顕在化してきているようです。
とにかくローズの摘み取りは短期決戦型で、一時に大多数の労働力の集中投下が必要です。これができないと途端に収穫量に影響を与えます。そんなに都合よく労働力を集めることは世界中厳しいはずです。
香料植物のプランテーションは、典型的な労働集約型の産業です。そのため先進国では、おおむね成立しないとされます。当然、日本も香料植物の生産が産業として成立するケースはきわめて希です。
富良野のラベンダー畑のように観光化するなど多角化がない限り厳しいでしょう。
ブルガリアは、1990年代の共産党政権の崩壊時から長年、経済不況に苦しんできましたが、経済的な安定と成長が始まるとこの問題は避けがたいと思われます。
隣国トルコでも不作
お隣のトルコもダマスクローズの世界的な生産国ですが、こちらも生産量減産のニュースがありました。
Rose oil prices in Turkey expected to skyrocket as production falls
(不作によるローズオイル高騰、トルコ)
7千トンの予想が、5千5百トンとまりとなったというニュースです。4年連続の不作で、このうち今年は最悪の年となった模様です。原因は「極端な暑さと霜」とのこと。こちらも大きな天候不順をかかえているようです。
当然、品薄からローズオイルは高騰します。この高騰には「skyrocket」(スカイロケット)という表現が使用されており、どんなけ高くなるのかと恐怖しました。
ただでさえ、円はユーロに対して相当弱いですが、世界的なローズオイル不足で、さらに高騰するかと思うとややインパクトを感じます。
高くなるだけでなく、そもそもローズオイルを入手できないという事態も発生するでしょう。
感謝の気持ちがアップしてしまう
そういう状況も知らずに当社は例年通りのレートでローズオイルを購入できました。
取引先からは何も言われていませんが、取引先の好意だったのかと、この記事を書きながら確信しています。
もともと当社は、ローズオイルに対して厳かな気持ちというか、今時の言い方なら「リスペクト」を払ってきました。ローズオイルの香りは神聖にさえ感じられるローズバカです。
しかし、これだけ希少になってくるとこの気持ちもますます強くなります。
今年もよいローズジェルを制作したいし、ローズ香水もよりいっそう大切な気持ちで制作したいと思います。
※武蔵野ワークスでは、ブルガリア産ダマスクローズ(ブルガリアンローズ)から香水の『ブルガリアンローズ・ジェル』『ローズの贈り物』などを生産しております。
(2015-08-31)
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