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( 香水工場の )

香る生活


深い味わいヒバの精油
(2013/10/17)

以前、奈良のヒノキ精油工場を見学して、持続可能なエコシステムに驚きました。その後、ヒノキの仲間ヒバの精油工場を見学できました。こちらもエコな生産システムでした(2013/10/17)
ヒバ油工場見学、津軽半島



憧れのヒバの木


ヒバという樹木をご存じでしょうか?青森出身の知人によると、ヒバ造りの家には、一種の憧れがあるそうです。小さい頃、近所でヒバの家が建ったので遊びに行くとヒバの香りが漂っていて子供心に「この家はお金持ちなん」と感じたそうです。


日本の三大美林


関東以南だったら、ヒバ造りの家は、ヒノキ造りの家のイメージに当たるかもしれません。ヒバは高級木材として有名で、とくに青森ヒバは、秋田スギ・木曽ヒノキとともに日本三大美林と言われます。青森市・青龍寺の五重塔、平泉・中尊寺の金色堂がヒバ材をメインに建てられていることは、ヒバファンの誇りでしょう。


ヒバの森が点在する津軽・下北半島


ヒバは、ヒノキ科に属する日本固有の樹木です。生育北限は北海道、南限は栃木県日光とされていますが、青森県、とくに本州最北端の津軽・下北の両半島には全国のヒバ林の80%以上が集中するヒバ森林地帯が形成されています。


1万年前は、日光さえも遮るヒバ森林地帯?


とはいえ1万年以上前には、おそらく現在の青森県全体が、日光さえも遮るヒバ森林に覆い尽くされていたことを考えると、長期的にヒバ林は存亡の危機にあるかもしれません。


国有林として保護されるヒバの林


下北半島の東通村・猿ケ森(ひがしどおりむら・さるがもり)の海岸には、広大なヒバの埋没林があります。今回の取材では行けませんでしたが、地図にも「ヒバの埋没林」と明記されています。

猿ケ森海岸のヒバ森林は、800-1,000年前に埋もれたと考えられています。当時の温暖化の影響かもしれません。津軽・下北両半島のメジャーなヒバ林は、現在、国有林として無秩序な伐採が規制され、林野庁による保護活動が続いております。

ヒバの林、津軽半島


きわだつヒバの耐朽性と芳香


ヒバの特徴は、木質の堅さや木肌の美しさ、手触りの優しさですが、なんといっても腐朽(ふきゅう)に対する強さと香りです。木材の腐朽は主に細菌やシロアリなどに起因しますが、ヒバの耐朽性・耐蟻性は、世界の木材のトップクラス、国内ではおそらくNo.1の実力があるのではないでしょうか。

津軽・下北半島の厳しい風土が育むヒバ精油の香りは独特で、目を閉じて味わいたい香りです。そして、その香りの中に耐朽性を高める成分であるヒノキチオールが1%-2%の割合で含まれています。


ヒノキチオールとは?


ヒノキチオールとは、ヒバの精油に含まれる芳香成分です。ヒノキチオールは、モノテルペン芳香族化合物です。

モノテルペン芳香族とは、ベンゼン環をベースとして10個の炭化水素を持つ化合物です。植物などに含まれる生体物質で多種多様のモノテルペン芳香族があります。


精油に多く含まれるモノテルペン芳香族


モノテルペン芳香族は、とくに精油の中から多く発見され、多くは香しい芳香があり、共通して殺菌効果があること、そして抗ガン性など人体へのふしぎな効果をもつ物質が多いことが特徴で、新薬開発の最先端モデル物質として研究対象されることが多々あります。

また、ヒノキチオールは、また少量なら食品添加物としても利用可能で、化粧品やトイレタリーへの応用も期待されています。育毛効果の研究レポートもあるそうです。


調理器具として理想的な素材


ヒバ材は、その香りの高さから、柱や内装材として利用されますが「まな板」としての利用は全国区ではないかと思います。私もヒバのまな板を使用していますが、もうプラスティックには戻れません。

ヒノキチオールは、低毒性でながら広い抗菌スペクトル(多種多様の細菌やウイルスに対する抗菌性)を示しますので、まな板やお箸など食器や調理器具として理想的な素材です。


ヒバ精油工場の現場


当社にとってヒバ精油の重要性は、日本で採取される数少ない精油の一つという点です。日本では人件費などの問題から精油生産は一般にビジネスとして厳しいとされます。

しかし、ヒノキ精油やヒバ精油は、精油の採取自体が目的ではなく、製材課程で余った廃材などを原料に副次的に産出されています。

ヒバ製材所、津軽半島


ヒバ精油工場さん


私たちが訪問したヒバの精油工場は、青森県五所川原市にある製材所さん。通常は工場見学は厳しいとのお話でしたが、取材企画書を事前にお送りし、なんとか許可を頂くことができました(この場を借りてお礼申し上げます)。

敷地内には製材工場が数棟あり、その一番奥に精油工場がありました。こちらの製材所では主に国有林から伐採されたヒバ材の製材を行っているそうです。

ヒバ製材所内、津軽半島

この製材所さんが精油採取を始めたのは、平成7年だそうで約20年の歴史があります。当時は他にも数社(7社とも8社とも)の製材所さんがヒバ精油の採取をしていたとのことですが、ヒバ自体の生産量に限りもあり、多くの製材所さんがヒバ精油の生産を現在は休止されているそうです。


オガクズから生まれるヒバ精油


製材の課程ででるオガクズは、天井のパイプを通じて効率よく精油工場に運ばれ、大きな圧力釜にて水蒸気蒸留され精油が抽出されます。一日の可能な処理量は1トン。1トンのオガクズから10kgの精油が生産されます。エコなシステムですよね。


青森ヒバの香りの魅力


今回『サンタの贈り物 クリスマスツリー』は、こちらの精油をベースに調香したものです。コントロールされ持続可能なヒバ材の生産とオガクズまで無駄なく使うエコシステムから生まれた精油です。津軽・下北半島の厳しい気候が育んだヒバ精油は気持ちを引き締める香りがします。

サンタの贈り物、クリスマスツリー(2013年)


厳しい土地が育む強さ


私たちが訪問した日は11月中旬、雪はまだでしたが、2週間もすると津軽半島は、純白一色の雪景色になるとのことでしたが、この製材所さんの工場周辺は「風が強くて雪も吹き飛ばされる」とのこと。

雪さえとどまれない厳しい土地でした。工場裏手に見えていた発電用風車は、この土地の風の風量を物語ります。

ここから車で5分も走ると日本海にでますが、そこで荒れ狂う日本海を目撃したとき、津軽に来た実感がひしひしと湧いてきました。そんな土地で生まれた樹木の精油であることを知り、ヒバ精油への愛着がまた一段と深まりました。



(2013-10-17)
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