( 香水工場の )
香る生活
樟脳工場の見学
樟脳工場に行ってきました。クスノキは比較的身の回りにある樹木でありながら貴重なオイルも生み出す木として再認識 (2016/12/05)
(竜脳パウダー:「樟脳」の兄弟にあたる「竜脳」。樟脳に似た香りで香水の原料として当社内に在庫しているものを撮影。蓋を開けるだけで目がシバシバする清涼感は樟脳とそっくり)
歴史好きならクスノキといえば楠木正成公(くすのきまさしげ)を思い浮かべるかも。日本史の中で、真田親子とともに天才軍略家として異彩を放ちます。
正成公とクスノキの間に名前以外、何か関係があるわけではなさそうですが、クスノキはちょっと特別な樹木という気になります。
また、クスノキは九州や四国の神社では必ず植えられている必須の大木です。神木としてのイメージも伴います。このへんもやっぱり物語性のある木ですよね。
樟脳といえば"タンス防虫剤"。昭和世代ならこのイメージは強いと思います。樟脳の香りは、薬草風で突き抜けるようなシャープな清涼感が特徴。
好き嫌いは分かれますが、私はしばらく浸っていたい香りです。
樟脳は、医薬品にも利用されます。当社では樟脳を香水の香料として使うことはほぼありませんが、似た香りの「竜脳」(リュウノウ)なら、香水の香料として当社でも常時在庫しています。
竜脳の話をはじめると長くなりますので、竜脳は樟脳から簡単に得られることだけお知らせします。 竜脳は「墨の香り」の正体で、(樟脳・竜脳・墨の香り)は、三位一体の関係です。
香水でもよく使う竜脳、その続きで、樟脳に興味を抱くようになりました。
で、気づけば近所の公園にも、毎日利用する駅の駅前にも、いろいろなところにクスノキが植えられており、案外身近な存在だったことを再認識します。
福岡に行く案件があり、せっかくの遠出、その足で樟脳の蒸留工場を見学させてもらうことにしました。
クスノキは、もともと南洋植物で、日本では九州・四国に広く分布します。
防虫剤や医薬品としての価値があり、おそらく奈良・平安時代の遠い昔から、樟脳は生産されていたのではと空想しています(裏は取れていませんが)。
福岡には江戸時代から続く樟脳工場があります。
樟脳は、あまり知られていませんが、火薬(無煙火薬)の原料で、人類初の合成樹脂であるセルロイドの原料であり、第二次世界大戦までは国家の命運を担う戦略物資でした。
※セルロイドは、落ち着いた質感を持ったプラスティックで、メガネのフレームや万年筆など高級品・嗜好品・調度品の素材として愛されましたが、欠点は発火性。世界の人々をノスタルジーで悶絶させた映画『ニューシネマ・パラダイス』ではフィルムが自然発火するシーンがあります。映画を見たとき当時は「え、なんで燃えるの?」と思いましたが、その答えはセルロイドだから、と今は推測します
日本が戦前、台湾で運営したクスノキ・プランテーションは、その当時世界の樟脳の80%を産出し、軍事的な優位性を維持する要因の一つだったそうです。
台湾には「樟脳博物館」があり、そういう歴史を勉強できるそうです(行きたい!)
また医薬品として樟脳はさまざまな応用がありますが、象徴的なコトバが「カンフル剤」。オランダ語「カンフル」とは樟脳のこと。
つまり、樟脳は元気が出る刺激的なお薬なんですね。
ただし、現在では火薬・セルロイド・医薬品、いずれも別の物資にリプレイスされ、樟脳の戦略物資的な役割はかなりの部分終了しました。
木材や葉っぱを水蒸気蒸留して得られる液体を冷却すると樟脳オイルと白い固形状の樟脳が得られます。
見学させていただいた工場では、木材のみ利用されていました。こちらがその写真 →
(クスノキを細かく裁断しチップ化にする、白い木材の方が樟脳は多く含まれるが、赤い「アカクス」が近年多くなっている)
(巨大な蒸留釜、クスノキチップを水蒸気で蒸します。こういう釜は一点モノなので、高価で貴重と思われます)
(樟脳オイルと樟脳。固形化した結晶部分が一般によくみられる樟脳)
前回のメルマガで、樟脳工場を見学できそうですと編集後記にメモしたら、お客様よりコメントいただきました。防虫剤として天然樟脳は相当優れていそうですね。
「大阪在住の知人がもう20年近く前にインドなどで長期の仕事に行くことになり、その際彼女の御祖母様がいわく『樟脳を持って行くといいよ』で、実際、樟脳のおかげで虫の害にほとんどあわなかったとのこと」
「ちなみにその彼女は去年8月~約1年間ベトナムで働いていたのですがやはり持っていった樟脳のおかげでベッド周り、お部屋も全然虫の害にあわなかったそうです。蚊取り線香などより抜群の効果があるようですよ」
樟脳・竜脳については、まだまだ書き足りませんが、長くなりましたので、これくらいで。
ちなみに福岡の樟脳工場さんは、一般の観光客にも公開されていますが、小さな工場さんで、見学者が押し寄せると影響も大きいかと、この記事では具体的な情報掲載は控えさせて頂きます。
しかし、興味ある方は検索してみてください。現在、樟脳工場は日本にわずか、すぐにわかります。
私が訪問した際、説明いただいた女性主人に「もし誰か、樟脳師になるために弟子入りしたいと言われたら、可能でしょうか?」とお聞きしたところ苦笑いされていました。
(2016-12-06)
(竜脳パウダー:「樟脳」の兄弟にあたる「竜脳」。樟脳に似た香りで香水の原料として当社内に在庫しているものを撮影。蓋を開けるだけで目がシバシバする清涼感は樟脳とそっくり)
物語性が伴いがちなクスノキ
歴史好きならクスノキといえば楠木正成公(くすのきまさしげ)を思い浮かべるかも。日本史の中で、真田親子とともに天才軍略家として異彩を放ちます。
正成公とクスノキの間に名前以外、何か関係があるわけではなさそうですが、クスノキはちょっと特別な樹木という気になります。
また、クスノキは九州や四国の神社では必ず植えられている必須の大木です。神木としてのイメージも伴います。このへんもやっぱり物語性のある木ですよね。
クスノキから採れる樟脳
樟脳といえば"タンス防虫剤"。昭和世代ならこのイメージは強いと思います。樟脳の香りは、薬草風で突き抜けるようなシャープな清涼感が特徴。
好き嫌いは分かれますが、私はしばらく浸っていたい香りです。
樟脳は、医薬品にも利用されます。当社では樟脳を香水の香料として使うことはほぼありませんが、似た香りの「竜脳」(リュウノウ)なら、香水の香料として当社でも常時在庫しています。
竜脳の話をはじめると長くなりますので、竜脳は樟脳から簡単に得られることだけお知らせします。 竜脳は「墨の香り」の正体で、(樟脳・竜脳・墨の香り)は、三位一体の関係です。
案外、身近なクスノキ
香水でもよく使う竜脳、その続きで、樟脳に興味を抱くようになりました。
で、気づけば近所の公園にも、毎日利用する駅の駅前にも、いろいろなところにクスノキが植えられており、案外身近な存在だったことを再認識します。
九州に残る樟脳蒸留所
福岡に行く案件があり、せっかくの遠出、その足で樟脳の蒸留工場を見学させてもらうことにしました。
クスノキは、もともと南洋植物で、日本では九州・四国に広く分布します。
防虫剤や医薬品としての価値があり、おそらく奈良・平安時代の遠い昔から、樟脳は生産されていたのではと空想しています(裏は取れていませんが)。
福岡には江戸時代から続く樟脳工場があります。
軍事物資の顔も
樟脳は、あまり知られていませんが、火薬(無煙火薬)の原料で、人類初の合成樹脂であるセルロイドの原料であり、第二次世界大戦までは国家の命運を担う戦略物資でした。
※セルロイドは、落ち着いた質感を持ったプラスティックで、メガネのフレームや万年筆など高級品・嗜好品・調度品の素材として愛されましたが、欠点は発火性。世界の人々をノスタルジーで悶絶させた映画『ニューシネマ・パラダイス』ではフィルムが自然発火するシーンがあります。映画を見たとき当時は「え、なんで燃えるの?」と思いましたが、その答えはセルロイドだから、と今は推測します
日本が戦前、台湾で運営したクスノキ・プランテーションは、その当時世界の樟脳の80%を産出し、軍事的な優位性を維持する要因の一つだったそうです。
台湾には「樟脳博物館」があり、そういう歴史を勉強できるそうです(行きたい!)
また医薬品として樟脳はさまざまな応用がありますが、象徴的なコトバが「カンフル剤」。オランダ語「カンフル」とは樟脳のこと。
つまり、樟脳は元気が出る刺激的なお薬なんですね。
ただし、現在では火薬・セルロイド・医薬品、いずれも別の物資にリプレイスされ、樟脳の戦略物資的な役割はかなりの部分終了しました。
樟脳の作り方
木材や葉っぱを水蒸気蒸留して得られる液体を冷却すると樟脳オイルと白い固形状の樟脳が得られます。
見学させていただいた工場では、木材のみ利用されていました。こちらがその写真 →
(クスノキを細かく裁断しチップ化にする、白い木材の方が樟脳は多く含まれるが、赤い「アカクス」が近年多くなっている)
(巨大な蒸留釜、クスノキチップを水蒸気で蒸します。こういう釜は一点モノなので、高価で貴重と思われます)
(樟脳オイルと樟脳。固形化した結晶部分が一般によくみられる樟脳)
お客様コメント
前回のメルマガで、樟脳工場を見学できそうですと編集後記にメモしたら、お客様よりコメントいただきました。防虫剤として天然樟脳は相当優れていそうですね。
「大阪在住の知人がもう20年近く前にインドなどで長期の仕事に行くことになり、その際彼女の御祖母様がいわく『樟脳を持って行くといいよ』で、実際、樟脳のおかげで虫の害にほとんどあわなかったとのこと」
「ちなみにその彼女は去年8月~約1年間ベトナムで働いていたのですがやはり持っていった樟脳のおかげでベッド周り、お部屋も全然虫の害にあわなかったそうです。蚊取り線香などより抜群の効果があるようですよ」
まだ書き足りないけど最後に
樟脳・竜脳については、まだまだ書き足りませんが、長くなりましたので、これくらいで。
ちなみに福岡の樟脳工場さんは、一般の観光客にも公開されていますが、小さな工場さんで、見学者が押し寄せると影響も大きいかと、この記事では具体的な情報掲載は控えさせて頂きます。
しかし、興味ある方は検索してみてください。現在、樟脳工場は日本にわずか、すぐにわかります。
私が訪問した際、説明いただいた女性主人に「もし誰か、樟脳師になるために弟子入りしたいと言われたら、可能でしょうか?」とお聞きしたところ苦笑いされていました。
(2016-12-06)
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