( 香水工場の )
香る生活
香るイチジクの葉っぱ
お客様からイチジクの乾燥葉をいただきました。意外にもよい香りに驚く話(2017/06/05)
(イチジクの乾燥葉っぱ。この香り、癒やされます。※写真に見えるサンタさんは、サンタ型のクリップ、特に意味はありません)
私の実家にはイチジクの樹があり、初夏に実を付けていました。イチジクの記憶と言えば、初夏に実がなること、そして、子供の頃、それをちぎって食べていたこと。
ただ、子供にとって、そんなに驚喜するような食べ物ではありませんでした。
今となっては、イチジクが練り込まれたイチジクパンなどはワインのお伴として、ちょっと贅沢なおつまみとなっていますが、あの味は大人にならないとわからない味なんだなと今さら感じます。
フレグランスの仕事をするようになって、海外ではイチジクの葉っぱの香りをフレグランスとして楽しむ人々が存在することに気づきました。日本ではあまり聞きませんよね。
イチジクの葉っぱは英語では「フィグリーフ」。「フィグ」がイチジク。
子供の頃、食べていた自家製イチジクの食感や味や、そして、葉を折ると吹き出す白色の液体の記憶はあるのですが、ニオイの記憶はありません。
数ヶ月前、別件にてお客様と電話協議していたら、何かのはずみで話題がイチジクの葉の香りになりました。梅雨の頃になると葉っぱを収穫して室内で干しておくそうです。
そうすると時間とともにイチジクの葉の香りがお部屋に漂うようになり、ナチュラルな香りで自宅が満たされるそうです。
内心「そんないい香りだったかな?」と受話器を握っておりましたが、次回、葉っぱを送ってあげましょうと提案されました。
いえいえ、そんなお手数には及びませんと返答しましたが、ある日、封筒に入れられたイチジクの葉っぱが我が社のポストに投函されておりました。
封筒から取り出したイチジクの葉っぱは、プレスしたように(電話帳で押し花にしてもらった模様)、平坦で乾燥していました。
鼻を近づけると、うーん、これは柏餅の匂い。
近くにいたスタッフに「どんな香り?」と言いながら「柏餅みたいでしょう? これイチジクだって」と完全に誘導・ネタばらし・完結型の質問をしておりました。
会社の壁に一枚貼り、自宅の天井に数枚つり下げて香りを観察中です。送られてきて一週間程度、香りはやや変化している気がします。
どこか「ニッキが混じったような・・・」というスタッフもおります。ニッキ(シナモン)のような香り(日本のお菓子・八つ橋はニッキの香りが特徴ですよね)も確かに潜んでいます。
おもしろい香りです。
興味が湧いて、ちょっと調べてみました。なになにアダムとイヴの例の"局所隠し菜っ葉"は、イチジクの葉だったか。
イチジクは、旧約聖書の"エデンの園"に登場するレギュラー樹木。つまり、キリスト教の人々からすれば、神が住まわれる楽園の樹木ですから、いかに神聖なものか察しが付きます。
日本人の感覚からするとおそらく、樟脳か菩提樹あたりに相当するのでは。
アダムとイヴは、蛇にそそのかされ「禁断の果実」を食べて楽園を追われますが、この禁断の実、リンゴかイチジクかで論争が絶えなかったこともはじめて知りました。
当社のパフューマーにも香りを見せたところ「おもしろい香り」と言っておりました。
葉っぱのグリーン感がベースの香りですが、独特の甘さがあり、スパイスのように気持ちをちょっと刺激してくれるところが印象的です。
お部屋に吊すというお客様の趣旨がわかりました。
吊しておくと乾いた干し草のようなグリーン感のある香りがじわーっと下りてくるのです。お客様はセクシーな香りとも表現されていました。
お香を焚かれるご家庭はそれなりにあると思いますが、もしご自宅にイチジクの樹が生えているなら、お香代わりにこんな使い方も、オススメかもしれません。
焚かれたお香ほど、はっきりとは感じませんが、しかし、タダですし、手間暇かけずに香りライフが楽しめますよ。
米国カリフォルニアに拠点を置く"香水なんでも辞典"「Fragrantica」(フラグランティカ)には、フィグリーフの香りについての濃い内容の記事が掲載されています。
世界のフィグリーフ・フレグランス製品も、このページに多数リストアップされています。こんなにあるですね。
そして、フィグリーフの雰囲気を出すためのキーとなる香り成分(香料)の紹介もあります。
キーとなる香り成分(香料)とは「ステモンとγ-オクタラクトン」(stemone and octalactone gamma)
ステモンとは、大手香料会社ジボダン社の香料。グリーン感を演出する香りです。
γ-オクタラクトンは、果物のプルーンのような香りで、この二つを合わせることでフィグリーフのような香りになると解説されています。
これらの香料は、当社でも使っていますが、この二つだけでは、本物の香りからは、ほど遠いでしょう。経験的にそう感じます。時間が許せば、ちょっとテストしてみたいような・・・
上記のフラグランティカのページでフィグリーフの説明に「この香りは、どこか地中海を感じさせる(To give a Mediterranean feel)」だそうです。
欧米人にとってフィグリーフは、地中海の夏のバカンスのイメージも香ることが伝わってきます。イチジクには、彼らにとって歴史的・文化的背景があるんですね。
(2017-06-05)
(イチジクの乾燥葉っぱ。この香り、癒やされます。※写真に見えるサンタさんは、サンタ型のクリップ、特に意味はありません)
イチジクの記憶
私の実家にはイチジクの樹があり、初夏に実を付けていました。イチジクの記憶と言えば、初夏に実がなること、そして、子供の頃、それをちぎって食べていたこと。
ただ、子供にとって、そんなに驚喜するような食べ物ではありませんでした。
今となっては、イチジクが練り込まれたイチジクパンなどはワインのお伴として、ちょっと贅沢なおつまみとなっていますが、あの味は大人にならないとわからない味なんだなと今さら感じます。
フィグリーフのフレグランス
フレグランスの仕事をするようになって、海外ではイチジクの葉っぱの香りをフレグランスとして楽しむ人々が存在することに気づきました。日本ではあまり聞きませんよね。
イチジクの葉っぱは英語では「フィグリーフ」。「フィグ」がイチジク。
子供の頃、食べていた自家製イチジクの食感や味や、そして、葉を折ると吹き出す白色の液体の記憶はあるのですが、ニオイの記憶はありません。
イチジクの乾燥葉っぱ
数ヶ月前、別件にてお客様と電話協議していたら、何かのはずみで話題がイチジクの葉の香りになりました。梅雨の頃になると葉っぱを収穫して室内で干しておくそうです。
そうすると時間とともにイチジクの葉の香りがお部屋に漂うようになり、ナチュラルな香りで自宅が満たされるそうです。
内心「そんないい香りだったかな?」と受話器を握っておりましたが、次回、葉っぱを送ってあげましょうと提案されました。
いえいえ、そんなお手数には及びませんと返答しましたが、ある日、封筒に入れられたイチジクの葉っぱが我が社のポストに投函されておりました。
第一印象は「柏餅」
封筒から取り出したイチジクの葉っぱは、プレスしたように(電話帳で押し花にしてもらった模様)、平坦で乾燥していました。
鼻を近づけると、うーん、これは柏餅の匂い。
近くにいたスタッフに「どんな香り?」と言いながら「柏餅みたいでしょう? これイチジクだって」と完全に誘導・ネタばらし・完結型の質問をしておりました。
会社の壁に一枚貼り、自宅の天井に数枚つり下げて香りを観察中です。送られてきて一週間程度、香りはやや変化している気がします。
どこか「ニッキが混じったような・・・」というスタッフもおります。ニッキ(シナモン)のような香り(日本のお菓子・八つ橋はニッキの香りが特徴ですよね)も確かに潜んでいます。
おもしろい香りです。
調べてみて知った奥深いイチジク
興味が湧いて、ちょっと調べてみました。なになにアダムとイヴの例の"局所隠し菜っ葉"は、イチジクの葉だったか。
イチジクは、旧約聖書の"エデンの園"に登場するレギュラー樹木。つまり、キリスト教の人々からすれば、神が住まわれる楽園の樹木ですから、いかに神聖なものか察しが付きます。
日本人の感覚からするとおそらく、樟脳か菩提樹あたりに相当するのでは。
アダムとイヴは、蛇にそそのかされ「禁断の果実」を食べて楽園を追われますが、この禁断の実、リンゴかイチジクかで論争が絶えなかったこともはじめて知りました。
おもしろい香り
当社のパフューマーにも香りを見せたところ「おもしろい香り」と言っておりました。
葉っぱのグリーン感がベースの香りですが、独特の甘さがあり、スパイスのように気持ちをちょっと刺激してくれるところが印象的です。
お部屋に吊すというお客様の趣旨がわかりました。
吊しておくと乾いた干し草のようなグリーン感のある香りがじわーっと下りてくるのです。お客様はセクシーな香りとも表現されていました。
お香を焚かれるご家庭はそれなりにあると思いますが、もしご自宅にイチジクの樹が生えているなら、お香代わりにこんな使い方も、オススメかもしれません。
焚かれたお香ほど、はっきりとは感じませんが、しかし、タダですし、手間暇かけずに香りライフが楽しめますよ。
フラグランティカの記事
米国カリフォルニアに拠点を置く"香水なんでも辞典"「Fragrantica」(フラグランティカ)には、フィグリーフの香りについての濃い内容の記事が掲載されています。
世界のフィグリーフ・フレグランス製品も、このページに多数リストアップされています。こんなにあるですね。
この香りを創るとしたら?
そして、フィグリーフの雰囲気を出すためのキーとなる香り成分(香料)の紹介もあります。
キーとなる香り成分(香料)とは「ステモンとγ-オクタラクトン」(stemone and octalactone gamma)
ステモンとは、大手香料会社ジボダン社の香料。グリーン感を演出する香りです。
γ-オクタラクトンは、果物のプルーンのような香りで、この二つを合わせることでフィグリーフのような香りになると解説されています。
これらの香料は、当社でも使っていますが、この二つだけでは、本物の香りからは、ほど遠いでしょう。経験的にそう感じます。時間が許せば、ちょっとテストしてみたいような・・・
(余談)フィグリーフは、ヨーロッパ人の憧れ?
上記のフラグランティカのページでフィグリーフの説明に「この香りは、どこか地中海を感じさせる(To give a Mediterranean feel)」だそうです。
欧米人にとってフィグリーフは、地中海の夏のバカンスのイメージも香ることが伝わってきます。イチジクには、彼らにとって歴史的・文化的背景があるんですね。
(2017-06-05)
< GALAXY、商品開発失敗の悲しい話 || 山麓の香水工場 >
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