( 香水工場の )
香る生活
開運香水・スピリチュアル香水、開発案件あるある
パワー香水の製造依頼が来たら?(長文)・・ (2021/07/24)
( ふしぎな世界 )
香水、というか好きな香りは、気持ちをアップさせるし、心に灯がともる感じがする。
優しさや懐かしさや、心に「喝!」な気持ちを起こさせてくれる場合もある。
しかし、世の中には、香水にそれら以上の何らかの非日常的エネルギーを求める人々もいる。
ふしぎな力を宿す香水・・開運香水、スピリチュアル香水、ヒーリング香水・・いろいろな呼び方がある。
今日の記事では、これら「ふしぎ香水」を、まとめて「パワー香水」と呼びたい。
普通の香水に対して、ふしぎな力を宿す香水に関心ある人々も少なくないようだ。
読者は、パワー香水によって、現実に開運した、金運が付いた、恋がかなった、夢がかなった!という事例話を一番聞きたいと思うだろうが、残念、私の体験では、そういう話は聞いたことがない。
奇跡はそう簡単に起きないようだ。
誰か言っていたが、「奇跡は起きるが、少なくとも自分には起きない」と考えた方がご利益(ごりやく)があるとか。
私は、比較的信心深く、霊魂の存在や、人は生まれ変わるという輪廻も信じるし、道端のお地蔵様を見れば、粗相がないよう通り、場合によって100円・200円の賽銭も置いていく。
ちなみに、多くのみなさんと同じく、安いお土産の人形さえも、人形はなんとなく捨てにくいと感じるタイプ。
そんな私でも香水に霊的なパワーを注入することは賛成しない。
しかし、香水がときとして霊的な物体と見なされることには理解するし共感している。
第一に香水が「水」であること。
本当は、香水は水ではなくアルコール+香料で、水は入れない(少量入れる香水もあるにはある)が、水のような外見。
水は生命の根源で、火を鎮める物質。火が究極の「動」なら、水は究極の「静」である。
化学的には、水は極限的に安定した性質があり、ほぼすべての汚れが水によって清められる(凄い!)。
だから、多くの宗教で、水には神聖なる力が宿るとされる。
そして、香水の原料である香料は、お香や香油として、歴史の始まりとともに宗教儀式に関わってきた。
仏教・イスラム教・キリスト教、ほとんどの宗教で香料は神聖なものとされる。
おそらく、香料はヒンドゥー教やゾロアスター教、その他の全世界の大半の宗教儀式にも利用されるだろう(たぶん)。
そもそも香水の英語「perfume」の語源は、ラテン語の「per-fumum」=「煙を通して、煙によって」だそうで(コトバンク)、宗教儀式そのものから発症した言葉と推測される。
「香水 = 宗教儀式」なのだ(まあ、ちょっと断言過ぎますけどね)
だから、香水に神聖な力や宿るとしても、さもありなん、なんか納得しちゃう。
香水メーカーをやっていると、パワー香水の製造に関する問い合わせは、それなりにある。
パワー香水を製造して欲しいという話だが、我ら平均的な香水メーカーにパワー香水など創れるわけがない。
当然「香水は創れるが、霊的パワーの注入ができない」と返事するが、おおむね「その分は我々の方で」という答えが返ってくる。
パワー注入済みの原材料の支給や、あるいは満月の夜に製造するなどの製造条件が提示される。
パワー香水の案件は、大手さんだと、まずは相手してもらえないだろう。
だから、こういう案件は、小さな香水メーカーに問い合わせるに限る。
しかし、残念ながら、小さな会社でもこれらの香水の製造は、かなり厳しい。
理由は、おおむね薬事法の高い壁が越えられないのだ。
スピリチュアルなエネルギーを注入した「水」を使った香水製造を依頼されたことがある。
水は化粧品原料として使用可能であるので、製造自体は可能であるが、エネルギーが注入されていることが心配である。
薬事法では、化粧品に効果効能があることは許されない。
金運が付く、恋がかなうなどのご利益があると薬事法違反である。
販売時にそういう喧伝もしていけない、それが薬事法である。
罪に問われるのは、製造依頼者でも販売者でもなく、製造メーカーである。
だから、どんなパワーが注入されているかわからないとメーカーは慎重となる。
当社も丁寧にお断りした。
上の案件はエネルギー注入済みの水の持ち込み案件だったが、ナゾの液体持ち込み案件もあった。
クライアントは、水のようなものと言っていたが、何が入っているかわからないものだと、それに対してメーカーは慎重にならざるを得ない。
化粧品原料は、日本化粧品工業連合会が認めた成分でないと入れることはできない。
たまに畑に生えている野菜から抽出したエキスを持ち込んで、これでコスメ作ってという案件が来ることがあるが、化粧品工業連合会にリストアップされた成分でないと、なかなか気軽にはできないのが現状である。
話は変わるが、近年、米国では大麻(マリファナ)を解禁する州が増えており、大麻栽培と大麻成分を配合した化粧品・食品・嗜好品が産業として続々と立ち上がりつつある。
同時に、それら大麻成分が配合されたナゾの液体や粉末が化粧品原料や食品原料として出回りはじめていて、ネットでは、安易に手を出す人もいると聞く。
普通の化粧品メーカーは、出所がしっかりしたモノでないと手を出さない。
大麻関連コスメは、近い将来、世界的に普及する可能性はあるものの、かなりの粗悪品や偽物も同時に出回ると予想されるので、やはり政府による厳しい管理体制は避けがたいだろう。
月に関するパワー香水の案件も多い。
当社は直接いただいたことはないが、同業者から聞いた話では、スーパームーンや新月の時に製造してほしいとか、製造したものをそれらの光に当てて欲しいという依頼を受けた。
成分に関しては、薬事法上問題はないが、ふしぎな香水として売り出されたら薬事法違反なので、そういうリスクを考慮して詳しく聞かなかったという。
そもそも月光の下で製造して欲しいと言われても、その人の工場は夜間操業はしないのでできないと言っていた。
( 月と香水は、イメージが似合う気がする )
これは当社が打診された案件。香水自体は、普通の香水の製造だったが、納品後、何らかの方法で「パワーを注入する」という話だった。
完成した製品に製造業者でない第三者が、消費者に渡る前に、何かの成分を加えたり、何らの手を加えることは薬事法違反である。
香水の小分け販売も、パッケージを開封して操作するという点で、厳密には薬事法違反の可能性が高い。
「スピリチュアル・パワー」の注入が、その「手を加える」に相当するかどうかは、大いに議論の余地があるが、やはり、本件はお断りした。
パワー注入の結果、チャクラが開いたりすることは有り難い話ではあるが、メーカーにとってリスクは高い。
(2021-07-24)
( ふしぎな世界 )
香水とスピリチュアル・パワー
香水、というか好きな香りは、気持ちをアップさせるし、心に灯がともる感じがする。
優しさや懐かしさや、心に「喝!」な気持ちを起こさせてくれる場合もある。
しかし、世の中には、香水にそれら以上の何らかの非日常的エネルギーを求める人々もいる。
ふしぎな力を宿す香水・・開運香水、スピリチュアル香水、ヒーリング香水・・いろいろな呼び方がある。
今日の記事では、これら「ふしぎ香水」を、まとめて「パワー香水」と呼びたい。
普通の香水に対して、ふしぎな力を宿す香水に関心ある人々も少なくないようだ。
パワー香水で奇跡は起きるか?
読者は、パワー香水によって、現実に開運した、金運が付いた、恋がかなった、夢がかなった!という事例話を一番聞きたいと思うだろうが、残念、私の体験では、そういう話は聞いたことがない。
奇跡はそう簡単に起きないようだ。
誰か言っていたが、「奇跡は起きるが、少なくとも自分には起きない」と考えた方がご利益(ごりやく)があるとか。
香水は、なぜ霊的に感じられるのか?
私は、比較的信心深く、霊魂の存在や、人は生まれ変わるという輪廻も信じるし、道端のお地蔵様を見れば、粗相がないよう通り、場合によって100円・200円の賽銭も置いていく。
ちなみに、多くのみなさんと同じく、安いお土産の人形さえも、人形はなんとなく捨てにくいと感じるタイプ。
そんな私でも香水に霊的なパワーを注入することは賛成しない。
しかし、香水がときとして霊的な物体と見なされることには理解するし共感している。
第一に香水が「水」であること。
本当は、香水は水ではなくアルコール+香料で、水は入れない(少量入れる香水もあるにはある)が、水のような外見。
水は生命の根源で、火を鎮める物質。火が究極の「動」なら、水は究極の「静」である。
化学的には、水は極限的に安定した性質があり、ほぼすべての汚れが水によって清められる(凄い!)。
だから、多くの宗教で、水には神聖なる力が宿るとされる。
香料は、もともと宗教的アイテム
そして、香水の原料である香料は、お香や香油として、歴史の始まりとともに宗教儀式に関わってきた。
仏教・イスラム教・キリスト教、ほとんどの宗教で香料は神聖なものとされる。
おそらく、香料はヒンドゥー教やゾロアスター教、その他の全世界の大半の宗教儀式にも利用されるだろう(たぶん)。
そもそも香水の英語「perfume」の語源は、ラテン語の「per-fumum」=「煙を通して、煙によって」だそうで(コトバンク)、宗教儀式そのものから発症した言葉と推測される。
「香水 = 宗教儀式」なのだ(まあ、ちょっと断言過ぎますけどね)
だから、香水に神聖な力や宿るとしても、さもありなん、なんか納得しちゃう。
パワー香水の製造依頼
香水メーカーをやっていると、パワー香水の製造に関する問い合わせは、それなりにある。
パワー香水を製造して欲しいという話だが、我ら平均的な香水メーカーにパワー香水など創れるわけがない。
当然「香水は創れるが、霊的パワーの注入ができない」と返事するが、おおむね「その分は我々の方で」という答えが返ってくる。
パワー注入済みの原材料の支給や、あるいは満月の夜に製造するなどの製造条件が提示される。
しかし、やはり創りにくいのだ
パワー香水の案件は、大手さんだと、まずは相手してもらえないだろう。
だから、こういう案件は、小さな香水メーカーに問い合わせるに限る。
しかし、残念ながら、小さな会社でもこれらの香水の製造は、かなり厳しい。
理由は、おおむね薬事法の高い壁が越えられないのだ。
エネルギー注入済みの「水」
スピリチュアルなエネルギーを注入した「水」を使った香水製造を依頼されたことがある。
水は化粧品原料として使用可能であるので、製造自体は可能であるが、エネルギーが注入されていることが心配である。
薬事法では、化粧品に効果効能があることは許されない。
金運が付く、恋がかなうなどのご利益があると薬事法違反である。
販売時にそういう喧伝もしていけない、それが薬事法である。
罪に問われるのは、製造依頼者でも販売者でもなく、製造メーカーである。
だから、どんなパワーが注入されているかわからないとメーカーは慎重となる。
当社も丁寧にお断りした。
ナゾの成分持ち込み
上の案件はエネルギー注入済みの水の持ち込み案件だったが、ナゾの液体持ち込み案件もあった。
クライアントは、水のようなものと言っていたが、何が入っているかわからないものだと、それに対してメーカーは慎重にならざるを得ない。
化粧品原料は、日本化粧品工業連合会が認めた成分でないと入れることはできない。
たまに畑に生えている野菜から抽出したエキスを持ち込んで、これでコスメ作ってという案件が来ることがあるが、化粧品工業連合会にリストアップされた成分でないと、なかなか気軽にはできないのが現状である。
話は変わるが、近年、米国では大麻(マリファナ)を解禁する州が増えており、大麻栽培と大麻成分を配合した化粧品・食品・嗜好品が産業として続々と立ち上がりつつある。
同時に、それら大麻成分が配合されたナゾの液体や粉末が化粧品原料や食品原料として出回りはじめていて、ネットでは、安易に手を出す人もいると聞く。
普通の化粧品メーカーは、出所がしっかりしたモノでないと手を出さない。
大麻関連コスメは、近い将来、世界的に普及する可能性はあるものの、かなりの粗悪品や偽物も同時に出回ると予想されるので、やはり政府による厳しい管理体制は避けがたいだろう。
スーパームーンや新月のスピリチュアル香水
月に関するパワー香水の案件も多い。
当社は直接いただいたことはないが、同業者から聞いた話では、スーパームーンや新月の時に製造してほしいとか、製造したものをそれらの光に当てて欲しいという依頼を受けた。
成分に関しては、薬事法上問題はないが、ふしぎな香水として売り出されたら薬事法違反なので、そういうリスクを考慮して詳しく聞かなかったという。
そもそも月光の下で製造して欲しいと言われても、その人の工場は夜間操業はしないのでできないと言っていた。
( 月と香水は、イメージが似合う気がする )
製造後、製品にパワーを注入する案件
これは当社が打診された案件。香水自体は、普通の香水の製造だったが、納品後、何らかの方法で「パワーを注入する」という話だった。
完成した製品に製造業者でない第三者が、消費者に渡る前に、何かの成分を加えたり、何らの手を加えることは薬事法違反である。
香水の小分け販売も、パッケージを開封して操作するという点で、厳密には薬事法違反の可能性が高い。
「スピリチュアル・パワー」の注入が、その「手を加える」に相当するかどうかは、大いに議論の余地があるが、やはり、本件はお断りした。
パワー注入の結果、チャクラが開いたりすることは有り難い話ではあるが、メーカーにとってリスクは高い。
(2021-07-24)
< 米フォードからガソリン香水 || シャネルNo.5のちょっと悲しい話 >
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