( 香水工場の )
香る生活
「もっと持続力がある香りが欲しい!」
・・ (2022/11/06)
( 香水 = パワフルな香り? )
当社製品のご愛用に感謝申し上げます。
ごもっともです。
実際「もっと持続力がある香りが欲しい」というご要望は多い。
にもかかわらず、なぜ当社はこのご要望を実現できないのか?を今日はお話します。
一言で言えば「やれば欧米ブランドさんとそっくりにな香りになる」からです。
実は濃度と持続性はそれほど相関関係はありません。
当社香水の濃度は「10%」。
濃度による一般的な分類なら「オードパルファム」に相当する。
この濃度を上げても持続性への影響は軽微。
ネットでは「濃度が高い = 持続性がある」と多く書かれていますが、実際試されてないのでは?・・と思う。
持続性を上げるには、濃度より持続力がある成分の選択とそれら組み合わせがポイント。
たとえばムスク。
ムスクは香りの魅力を高める役割があるが、実は香りの保留剤としても使われる。
天然のムスクはワシントン条約で取引が禁止されており、香水で使用されるムスクはすべて合成香料。
しかし、この合成ムスクで具合が悪くなる人も少なくない。
(香りの強い柔軟剤にはムスクがかなり入っている。「香害」として嫌う人はおそらくこのムスクに反応されているのではないかと私は推測している)
香りの持続性を高めるにはムスクの濃度も上げるが、どうも、それが当社は好きでない。
ムスクのような持続性を上げる原料を多めに使うと、あまり好きでない香りになる傾向があり、また、欧米風テイストの香水に近づいていく。
「長く華やかに香る」ことは、香水の目標でありよい香水の条件である。
しかし、欧米の香水に近づくと、絶対にかなわないし、当社の存在意義自体がなくなるという危険がある。
そして、それ以上に自分達が好きで納得する製品でなくなるという気持ちの部分も大きい。
これが、当社が淡い香水を作る背景となっている。
これからも「長く華やかに香る」製品は作れないかもしれない・・
最後に、なぜ「長く華やかに香る香水」が生まれたのか?の歴史をお話して今日の話題は終わります。
香水は中世ヨーロッパで生まれた。
当時はジャスミンやオレンジフラワーなど天然の原料のみで制作していた。
天然原料だけだと香りは弱くすぐに飛ぶ。
これが調香師たちの悩みでした。
強く・長く香る原料や調合技術を求め、調香師や錬金術師たちの苦労が続いた時代です。
1900年代になると化学の合成技術は驚異的な発展を遂げる。
とくにドイツ・スイスといった国で化学産業が勃興し、医薬品・香料などの合成・製造が盛んになり、そして、香水業界にとって念願だった「長く華やかに香る」が技術的に実現した。
その象徴的製品がかの有名な1921年リリースの『シャネルNo.5』。
No.5には、複数の合成香料アルデヒドがアルデヒド・カクテルという手法で配合されている。
(このへんは去年「シャネルNo.5のちょっと悲しい話」で書きました)
『シャネルNo.5』以降、現代の香水文化は華開き、香水は長く華やかに香ることが当たり前となった。
空港の免税店などの香水は、お店のもう何十メートルも前からパワフルに香っており、そのパワーに圧倒されます。
まるで一帯の空気をオレンジやピンク色に変えるくらいのパワーです。
そんな香水が世界の人々には愛されるのです。
パワフルな香水は、とくに経済成長が著しい元気な国で好まれる傾向があるという・・中東、インド、中国など。
一方で、欧米の人々にも一部では弱い・淡い香りへの回帰もはじまっており、新興のニッチブランドでは淡い自然な香りをウリにする製品もかなり生まれている。
今後、香水トレンドがどうなるかわからない。
ボクの中では「油絵」対「水彩画」、「関東風・濃味」対「関西風・薄味」のような図式に見える。
世界でも今後、薄味好みの人が増える予感がしている。
(2022-11-06)
( 香水 = パワフルな香り? )
投書をいただきました
いつも菖蒲とサイレンスを愛用しています。ありがとうございます。
ただ最近、香りだちの穏やかさと持続性の短さが気になっています。好きな香りをもっと長く楽しみたいのです!
他のブランドで、代用できるような香水も色々と探してはみましたが(すみません、、、)納得がいく香りは見つかりませんでした。
私のわがままですが、もう少し濃度が高く香りが長持ちする製品が出ると非常に嬉しいです。
当社製品のご愛用に感謝申し上げます。
ごもっともです。
実際「もっと持続力がある香りが欲しい」というご要望は多い。
にもかかわらず、なぜ当社はこのご要望を実現できないのか?を今日はお話します。
一言で言えば「やれば欧米ブランドさんとそっくりにな香りになる」からです。
香りの持続性と濃度
実は濃度と持続性はそれほど相関関係はありません。
当社香水の濃度は「10%」。
濃度による一般的な分類なら「オードパルファム」に相当する。
この濃度を上げても持続性への影響は軽微。
ネットでは「濃度が高い = 持続性がある」と多く書かれていますが、実際試されてないのでは?・・と思う。
持続性を上げるには、濃度より持続力がある成分の選択とそれら組み合わせがポイント。
持続性を上げる成分
たとえばムスク。
ムスクは香りの魅力を高める役割があるが、実は香りの保留剤としても使われる。
天然のムスクはワシントン条約で取引が禁止されており、香水で使用されるムスクはすべて合成香料。
しかし、この合成ムスクで具合が悪くなる人も少なくない。
(香りの強い柔軟剤にはムスクがかなり入っている。「香害」として嫌う人はおそらくこのムスクに反応されているのではないかと私は推測している)
香りの持続性を高めるにはムスクの濃度も上げるが、どうも、それが当社は好きでない。
欧米風テイストの香水
ムスクのような持続性を上げる原料を多めに使うと、あまり好きでない香りになる傾向があり、また、欧米風テイストの香水に近づいていく。
「長く華やかに香る」ことは、香水の目標でありよい香水の条件である。
しかし、欧米の香水に近づくと、絶対にかなわないし、当社の存在意義自体がなくなるという危険がある。
そして、それ以上に自分達が好きで納得する製品でなくなるという気持ちの部分も大きい。
これが、当社が淡い香水を作る背景となっている。
これからも「長く華やかに香る」製品は作れないかもしれない・・
最後に、なぜ「長く華やかに香る香水」が生まれたのか?の歴史をお話して今日の話題は終わります。
よい香水の条件:長く華やかに香る
香水は中世ヨーロッパで生まれた。
当時はジャスミンやオレンジフラワーなど天然の原料のみで制作していた。
天然原料だけだと香りは弱くすぐに飛ぶ。
これが調香師たちの悩みでした。
強く・長く香る原料や調合技術を求め、調香師や錬金術師たちの苦労が続いた時代です。
香水革命『シャネルNo.5』
1900年代になると化学の合成技術は驚異的な発展を遂げる。
とくにドイツ・スイスといった国で化学産業が勃興し、医薬品・香料などの合成・製造が盛んになり、そして、香水業界にとって念願だった「長く華やかに香る」が技術的に実現した。
その象徴的製品がかの有名な1921年リリースの『シャネルNo.5』。
No.5には、複数の合成香料アルデヒドがアルデヒド・カクテルという手法で配合されている。
(このへんは去年「シャネルNo.5のちょっと悲しい話」で書きました)
長く華やかに香ることが普通になり・・
『シャネルNo.5』以降、現代の香水文化は華開き、香水は長く華やかに香ることが当たり前となった。
空港の免税店などの香水は、お店のもう何十メートルも前からパワフルに香っており、そのパワーに圧倒されます。
まるで一帯の空気をオレンジやピンク色に変えるくらいのパワーです。
そんな香水が世界の人々には愛されるのです。
パワフルな香水は、とくに経済成長が著しい元気な国で好まれる傾向があるという・・中東、インド、中国など。
一方で、欧米の人々にも一部では弱い・淡い香りへの回帰もはじまっており、新興のニッチブランドでは淡い自然な香りをウリにする製品もかなり生まれている。
今後、香水トレンドがどうなるかわからない。
ボクの中では「油絵」対「水彩画」、「関東風・濃味」対「関西風・薄味」のような図式に見える。
世界でも今後、薄味好みの人が増える予感がしている。
(2022-11-06)
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