( 香水工場の )
香る生活
クロモジ香水を作る
森の香りを秘めるクロモジ (2023/04/10)
( 高尾山で見つけたクロモジの花。バリバリの直射日光より半日陰の日当たりを好むようで杉林の中の開けた場所などで見つけやすい )
「クロモジ香水を作る」とタイトルで宣言しましたが、作るのは調香師(パフューマー)さんです。
そしてもうできている。
『黒文字の花』というネーミングになった。
クロモジは精油が採れる樹木、うれしいことに国内の山林ではたいてい普通に自生している。
(クロモジの北限はサクラに似ているので北海道では、もしかしたら自生していないかも)
そして、クロモジ精油を採取している蒸留所さんもたくさんある。
だからクロモジ精油は入手しやすい。
クロモジは古来より香りの樹木として日本人に愛されてきた。
とはいえ、ただ生えているだけでは香りは感じられない。
クロモジ油は枝の皮と幹の間に多く含まれるため、枝や葉を折ったりちぎったりするとその香りが感じられる。
その香りの元がクロモジ油である。
この記事で言うクロモジ精油とはクロモジ油を指している。
この記事を書くために日曜日、早朝から高尾山を登ってきた。
東京周辺の人間にとって高尾山はよく知られた観光地、一言で言えば東京都心から電車でサクッと行ける本格的な山。
大阪周辺の人にとっての吉野山的なポジションといえば関西圏の人にもわかりやすいかもしれない。
吉野山の方が歴史も規模もはるかに大きいが、高尾山も魅力的な山である。
標高はわずか600メートル。
なので登山としては物足りないものの、体力が余る場合は高尾山の裏に続く山脈へと遠出すれば、7~8時間はすばらしい景色を楽しめる。そして体力消耗しきるまで歩くとハイな気分になれる、しかもその日のうちに都心に戻れる近さ。
クロモジは多くの山で自生しているが、その密集度はいろいろ。
高尾山にクロモジの群生地があるかどうかわからない。
昨日の高尾山では稲荷山コースをたどってみたが、頂上まで1時間の間に数カ所でクロモジに出会えた。
( クロモジの樹木はやせてヒョロヒョロと伸びるものが多い。特徴がないのでみわけにくい )
日曜日の高尾山・・それにしても登山者の多いことよ、そして、外国からのお客様の多いことよ。
ミシュラン三つ星になる前は、孤独を楽しめる霊山の雰囲気があった。
古来より修験者が修行を行う山だったし、現在でも山中にある滝行道場では年間数万人が滝に打たれているらしい。
しかし、2007年のミシュラン以降、日曜日の山道を連なる人々の列はまるで列車のように途切れずお祭りのような賑わいである。
クロモジは枝と葉に油分が含まれているので精油(クロモジ油)は枝葉を水蒸気蒸留で採取する。
(クロモジの花は平均的な蒸留所さんでは精油採取には使用されない)
精油は枝と葉に含まれるため、ウッディな香りやグリーンな香りを空想しがちだが、クロモジ精油の特徴的なメイン成分は "なんとリナロール" である。
(「なんと!」の連呼は、大騒ぎテレビ通販みたいで安っぽいのだが、それを知ったときの私の素直な心情はこれだった)
リナロールは花の香りを思わせるとってもフローラルな香りの代表的成分。
(意外でしょ?)
他の成分には、α-ピネン、β-ピネン、テルピネオール、リモネン、シネオールなど。
これらはウッディ系+シトラス系である。
よってクロモジ精油の香りは、フローラル系からウッディ系、シトラス系の成分まで多彩な香りが詰まっており、香りの宝庫的精油なのだ。
しかし、精油自体をスメリングするとメインのリナロールよりもウッディ系でスパイシーな香りだと私は感じる。
(この理由はわからない)
で、精油そのものの香りは山中で瞑想しているかのような静寂感が実によい。
かつて伊豆半島で採取されたクロモジ精油がヨーロッパに輸出されていたとのことだが、欧米の人々には東洋のエキゾチックな香りに感じられたことだろう。
クロモジは4月に黄色いかわいい花をつける。
私が観察した範囲では香りはあまり感じられない。
しかし、世の中広いもので花の香りをヘッドスペースという方法で分析した研究者さんもいて、香気成分はフェネチルアルコールやゲラニオールだそうである。
こちらも産地によって異なるが、どちらもバラの花の代表的な香気成分。
本来はバラに近い香りを発しているのかもしれないが、当社の新作香水『黒文字の花』は香りの宝庫クロモジ精油の香りをベースにしたイメージの香りなのでバラの香りはしない。
あくまでも花からイメージした香りであり、クロモジの花の香りそのものではないことをお伝えしたい。
クロモジ精油の香りは、なかなかよい。
(クロモジ香水を作るのなら「クロモジ精油そのままでいいんじゃない!?」)と思ってしまうほど。
しかし、精油そのままの香りだと当社の存在意義がなくなるので、新作香水の製品名は『黒文字の花』にして調香師のクリエーションを入れさせてもらった。
実はクロモジ香水を作ることになり、全国の4~5産地からクロモジ精油を取り寄せて香りを比較したが、見事に香りが異なっておりどの産地の精油を配合するかも迷った。
クロモジには数種類の派生品種がありクロモジ自体の違いもあるし、土壌や気候、蒸留方法の違い、使用部位の比率の違いもあり全国のクロモジ精油の香りはかなり違っている。
心鎮めるウッディでスパイシーな香りに仕上がっている。
「クロモジ精油そのままの方がいいぞ」と言われないよう、香水らしくちょっとだけオシャレにアレンジした。
今年の『5月の贈り物』として5月にデビューする、気になる方はお試しあれ。
【関連記事】
(2024/04/08) 2024年『5月の贈り物』は『黒文字の花』
・香水『黒文字の花』はいかがでしたか?
・クロモジ香水を作る
・5月の贈り物・黒文字の花
お客様コメント:
2023/05/09 (Tue) 05:16:27
定番化を望みます
・コメント:
ほんのり甘くて爽やかで、でもって樹の幹や湿った土を感じるような力強さもあるように思え、とても不思議でクセになる薫り。芽吹き頃の林のなかを歩いている気持ちになりたい方にお勧めしたいです♪
・・nono*snow
(2023-04-10)
( 高尾山で見つけたクロモジの花。バリバリの直射日光より半日陰の日当たりを好むようで杉林の中の開けた場所などで見つけやすい )
新作プロジェクト
「クロモジ香水を作る」とタイトルで宣言しましたが、作るのは調香師(パフューマー)さんです。
そしてもうできている。
『黒文字の花』というネーミングになった。
日本の山に生えているクロモジ
クロモジは精油が採れる樹木、うれしいことに国内の山林ではたいてい普通に自生している。
(クロモジの北限はサクラに似ているので北海道では、もしかしたら自生していないかも)
そして、クロモジ精油を採取している蒸留所さんもたくさんある。
だからクロモジ精油は入手しやすい。
クロモジとは?
クロモジは古来より香りの樹木として日本人に愛されてきた。
とはいえ、ただ生えているだけでは香りは感じられない。
クロモジ油は枝の皮と幹の間に多く含まれるため、枝や葉を折ったりちぎったりするとその香りが感じられる。
その香りの元がクロモジ油である。
この記事で言うクロモジ精油とはクロモジ油を指している。
高尾山 (たかおさん) の話
この記事を書くために日曜日、早朝から高尾山を登ってきた。
東京周辺の人間にとって高尾山はよく知られた観光地、一言で言えば東京都心から電車でサクッと行ける本格的な山。
大阪周辺の人にとっての吉野山的なポジションといえば関西圏の人にもわかりやすいかもしれない。
吉野山の方が歴史も規模もはるかに大きいが、高尾山も魅力的な山である。
標高はわずか600メートル。
なので登山としては物足りないものの、体力が余る場合は高尾山の裏に続く山脈へと遠出すれば、7~8時間はすばらしい景色を楽しめる。そして体力消耗しきるまで歩くとハイな気分になれる、しかもその日のうちに都心に戻れる近さ。
クロモジは多くの山で自生しているが、その密集度はいろいろ。
高尾山にクロモジの群生地があるかどうかわからない。
昨日の高尾山では稲荷山コースをたどってみたが、頂上まで1時間の間に数カ所でクロモジに出会えた。
( クロモジの樹木はやせてヒョロヒョロと伸びるものが多い。特徴がないのでみわけにくい )
かつて霊山だった高尾山
日曜日の高尾山・・それにしても登山者の多いことよ、そして、外国からのお客様の多いことよ。
ミシュラン三つ星になる前は、孤独を楽しめる霊山の雰囲気があった。
古来より修験者が修行を行う山だったし、現在でも山中にある滝行道場では年間数万人が滝に打たれているらしい。
しかし、2007年のミシュラン以降、日曜日の山道を連なる人々の列はまるで列車のように途切れずお祭りのような賑わいである。
クロモジ精油の香り
クロモジは枝と葉に油分が含まれているので精油(クロモジ油)は枝葉を水蒸気蒸留で採取する。
(クロモジの花は平均的な蒸留所さんでは精油採取には使用されない)
精油は枝と葉に含まれるため、ウッディな香りやグリーンな香りを空想しがちだが、クロモジ精油の特徴的なメイン成分は "なんとリナロール" である。
(「なんと!」の連呼は、大騒ぎテレビ通販みたいで安っぽいのだが、それを知ったときの私の素直な心情はこれだった)
リナロールは花の香りを思わせるとってもフローラルな香りの代表的成分。
(意外でしょ?)
他の成分には、α-ピネン、β-ピネン、テルピネオール、リモネン、シネオールなど。
これらはウッディ系+シトラス系である。
よってクロモジ精油の香りは、フローラル系からウッディ系、シトラス系の成分まで多彩な香りが詰まっており、香りの宝庫的精油なのだ。
しかし、精油自体をスメリングするとメインのリナロールよりもウッディ系でスパイシーな香りだと私は感じる。
(この理由はわからない)
で、精油そのものの香りは山中で瞑想しているかのような静寂感が実によい。
かつて伊豆半島で採取されたクロモジ精油がヨーロッパに輸出されていたとのことだが、欧米の人々には東洋のエキゾチックな香りに感じられたことだろう。
クロモジの花の香り
クロモジは4月に黄色いかわいい花をつける。
私が観察した範囲では香りはあまり感じられない。
しかし、世の中広いもので花の香りをヘッドスペースという方法で分析した研究者さんもいて、香気成分はフェネチルアルコールやゲラニオールだそうである。
こちらも産地によって異なるが、どちらもバラの花の代表的な香気成分。
本来はバラに近い香りを発しているのかもしれないが、当社の新作香水『黒文字の花』は香りの宝庫クロモジ精油の香りをベースにしたイメージの香りなのでバラの香りはしない。
あくまでも花からイメージした香りであり、クロモジの花の香りそのものではないことをお伝えしたい。
クロモジの香りの多様性
クロモジ精油の香りは、なかなかよい。
(クロモジ香水を作るのなら「クロモジ精油そのままでいいんじゃない!?」)と思ってしまうほど。
しかし、精油そのままの香りだと当社の存在意義がなくなるので、新作香水の製品名は『黒文字の花』にして調香師のクリエーションを入れさせてもらった。
実はクロモジ香水を作ることになり、全国の4~5産地からクロモジ精油を取り寄せて香りを比較したが、見事に香りが異なっておりどの産地の精油を配合するかも迷った。
クロモジには数種類の派生品種がありクロモジ自体の違いもあるし、土壌や気候、蒸留方法の違い、使用部位の比率の違いもあり全国のクロモジ精油の香りはかなり違っている。
香水『黒文字の花』
心鎮めるウッディでスパイシーな香りに仕上がっている。
「クロモジ精油そのままの方がいいぞ」と言われないよう、香水らしくちょっとだけオシャレにアレンジした。
今年の『5月の贈り物』として5月にデビューする、気になる方はお試しあれ。
【関連記事】
(2024/04/08) 2024年『5月の贈り物』は『黒文字の花』
・香水『黒文字の花』はいかがでしたか?
・クロモジ香水を作る
・5月の贈り物・黒文字の花
お客様コメント:
2023/05/09 (Tue) 05:16:27
定番化を望みます
・コメント:
ほんのり甘くて爽やかで、でもって樹の幹や湿った土を感じるような力強さもあるように思え、とても不思議でクセになる薫り。芽吹き頃の林のなかを歩いている気持ちになりたい方にお勧めしたいです♪
・・nono*snow
(2023-04-10)
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