( 香水工場の )
香る生活
香水とバラ、バラの歴史とエピソード
香水原料に欠かせないバラ。そこでバラの歴史をまとめました。香水の歴史とセットでお役に立てれば幸いです。
バラの歴史とエピソード
バラ(ローズ)の原産は野薔薇です。中国西南部の亜熱帯地方(チベット周辺、中国雲南省、ミャンマー)にはバラの野生品種が多数生息していることからバラの原産地は中国・ヒマラヤ・インドあたりと推測されています。
クレタ島クノッソス宮殿でバラのフレスコ画が発見されました。人類最古級の宮殿ですので、バラと人類の古い関係がわかります。このように世界の古代遺跡や伝説にはかなり古くからバラが現れており古代から人類に愛されていました。
古代ギリシャの女性詩人サッフォーが、バラを「花の女王」と謳ったのは紀元前7世紀、はるか昔のことです。
バラの歴史に欠かせないパーソナリティがクレオパトラ7世です。カエサルとアントニウスというローマ帝国屈指の英雄達を手玉に取ったクレオパトラ伝説には「バラ風呂」と「バラ床」が必ずセットで語られます。宮殿を床をバラの花びらで敷き詰めたり、膝の高さまでバラの花びらを敷いた寝室の話など空想をかき立てられます。
ローマ時代はバラの花が貴族の贅沢品としてしっかり根付く時代です。古代ローマの軍人であり博物学者であったガイウス・プリニウスが残した『博物誌』には祭りの日にバラの花びらが惜しげもなく街頭でまかれていた光景が記録されています。
暴君の誉れ高いネロ皇帝のバラシャワー(花びらを天井から雨のように降り注いで晩餐会の部屋をバラの花で埋め尽くしたという伝説)は有名です。君主がバラ遊びに高じれば貴族や民も同じ対象に関心を持っただろうことは歴史の語るところですが、この時代には大変なバラ需要が発生していたことが推測されます。
しかし、バラが香水に利用されたという記録は残念ながらありません。そもそも香水が香水として歴史に登場するのは15世紀ころからであり、ローマ時代に香水らしきものといえば、香油がありました。ハーブや香料を練り合わせたオイルです。現代のスキンケアのように利用されていたと考えられます。
当時の香油は没薬・乳香をはじめ、オリーブ油・ゴマ油・ヒマシ油が主原料で、バラが主要原料として利用されたとは言い難いようです。おそらくバラからエッセンシャルオイルを抽出する技術がなかったため、バラはもっぱら生花として利用されたと考えられます。
旺盛なバラ需要を満たすために、クレオパトラ時代〜ローマ時代には、すでに大がかりなバラ栽培・バラ農園が始まっていたことが今日定説になっています。
ローマの場合は、バラ栽培技術がまだ未熟だった模様でエジプトより船でバラを輸入していたという記録がありますが(あるいは生産コストがエジプトの方が安価だったのかもしれません)、冷凍設備がない時代のことですので大変なことだったと思われます。
ローマ時代のバラは装飾に使用されると同時にお酒に入れて飲まれたり料理に使用されたり、と様々な利用方法がありました。
お風呂文化が盛んだったローマ時代はクレオパトラ同様バラ風呂が人気でした。ローマ帝国崩壊後はヨーロッパはなぜか風呂文化を衰退させることになりますが、同時にバラ文化も衰退します。
一方、中東では、バラ文化を衰退させたヨーロッパと違って、宗教儀式や生活にローズウォーターの需要がありバラ文化は温存されました。十字軍はその本来の目的とは別に中東の様々な産物をヨーロッパに持ち帰る結果となりますが、この中にイラン・イラク・シリアなどから持ち帰ったバラがありました。
中世ヨーロッパでは、バラはキリスト教会や修道院の中庭で薬草として栽培されました。薬草を作る技術や機材は、その後「薬局」の前進となります。また、バラの栽培畑はその後のバラ庭園やイングリッシュ・ガーデンなど現代のガーデニングの基礎を作ることになります。
10年くらい前に日本上陸した「サンタ・マリア・ノヴェッラ」は今日では化粧品・トイレタリーの会社ですが13世紀フィレンツェのドミニコ会修道院付属の薬局が起源です。
当時病人や怪我人には薬草を処方するくらいしかありませんので、教会や修道院の薬局は、病院的な位置づけだったと思われます。そして、当然様々な効用が知られているバラは大切な「薬品」の一つでした。
ここで「様々な効用」を少しリストアップすると...
1)精神の鎮静作用、特に女性の心を穏やかにすることが知られています。
2)消化系器官への効用。弱った肝臓や胃腸を壮健にすることが知られており現在でもローズウォーターやローズオイルを日常的に服用する人々がいます。
3)殺菌作用。強力な殺菌作用が知られておりブルガリアではローズウォーターを目薬や消毒液として利用されています。
※日本のある病院ではローズオイルがピロリ菌を殲滅する作用があることを発見して現在実験中です。私はローズオイルがピロリ菌に対してかなり強度な殺菌効果があることを確信しています。しかし、仮に効果が高いと証明されても、商品化となると・・・かなり高価なおクスリになりますね。また医薬品業界の鉄則ですが現代医薬では天然物から医薬品を作ることは少ないでしょう。このお話はまた後日にしましょう。
バラはその優雅さからヨーロッパの権力者の家紋やエンブレム、グループロゴ、シンボルなどにも採用されていきます。
「薔薇十字団」(ローゼンクロイツ、Rosenkreuzer。17世紀ヨーロッパで流布した魔術の秘密結社)、「薔薇戦争」(赤薔薇を家紋とするランカスター家と白薔薇家紋のヨーク家の熾烈な戦争。イングランドの内戦)など「バラ」の名前をもった団体や集団が歴史上に躍り出ます。
またキリスト教では、赤バラはキリストの血、白バラはマリアを象徴し、イスラム教では赤バラは唯一神アッラー、白バラはムハンマドを象徴する花として人類にとって不動の地位を獲得します。
「朕は国家なり」と言い放ったルイ14世に象徴されるフランス絶対王政時代になると大がかりなバラ庭園が出現するようになります。その中で特に重要なバラ庭園がナポレオン夫妻のマルメゾン宮殿のバラ庭園です。バラの熱心な愛好者であった皇后ジョゼフィーヌは、夫の不在の寂しさを紛らわせるためパリ郊外のマルメゾン宮殿でバラの蒐集と繁殖に執念を燃やします。
ジョゼフィーヌはバラコレクションの道半ばで燃え尽きるように亡くなるのですがヨーロッパ、中国、日本など世界中から多種多様なバラがマルメゾン宮殿集められる一方、画家のルドゥーテを支援し「バラ図譜」を描かせバラ研究の学術的な発展に貢献します。
時代を同じくしてアンドレ・デュポンによる人工受粉によるバラ育種の技術が確立され、マルメゾン宮殿はジョゼフィーヌ没後も世界のバラ庭園の殿堂としての地位と役割を果たすことになります。現在の観賞用モダンローズの基礎はジョゼフィーヌのバラへの執念とマルメゾン宮殿に基礎があるといえそうです。
バラ一族の生物学的家系図を調べておきましょう。これを少し知っているとブルガリアローズと普通のバラがなぜあれほど違う印象を受けるのか理解できますし、バラを見るにも俄然楽しくなります。
生物学的な分類から。バラ科には桜や桃も含まれておりかなり広範囲な仲間を形成しています。
しかし、一般にバラといえば通常「バラ科バラ属」のバラを指します。
バラ科バラ属のばらは、遠い祖先には西洋バラの4種類と東洋バラの2種があります(その前をたどればけっきょく同一の野生バラに行き着くと思いますが、教科書的には、この「西洋バラ4種類&東洋バラ2種」からバラ系譜図は始まります)。
西洋バラ
・ガリカローズ
・ダマスクローズ
・センティフォーリア(百枚の花びら)
・アルバ(白バラ)
東洋バラ
・ローザ・シネンシス
・ローザ・ギガンティア(高い香り立ち、香りはティーローズへと受け継がれる)
西洋バラは現代でも香料用途としてかなり大きな存在感を持っています。
強く華やかで甘みのある芳香が特徴の「ダマスクローズ」と「センティフォーリア」はとくに重要です。香水原料のローズオイルが採取できるバラで、香水原料として最高のものです。一方、東洋バラには上品で落ち着きのある香りがありティー系(紅茶様)と称されます。東洋バラからは一般に香水原料としてのローズオイルは採取されません。
もともとバラは初夏に一度だけ咲く一季咲きの花だったのですが、中国産のバラは四季咲き性の性質を獲得していました。花びらは高芯剣弁咲きと呼ばれ肉厚があり剣のようにとがり外側に反り返ります。西洋人が18世紀前後、中国産のバラをヨーロッパに持ち帰ることから現代バラ、モダンローズの歴史が始まります。
現在の私たちが日常的に見るバラは高芯剣弁咲きのモダンローズがほとんどで、ダマスクローズなど原種に近いオールドローズを見るとバラには見えないかもしれません。
オールドローズの花びらは「カップ咲き」や「平咲き」と呼ばれ、薄くヒラヒラとして気高いモダンローズと比較するとよれた感じですね。スキのないほど着飾った貴婦人とスッピンの娘っ子ほどの違いがあります。
これら西洋バラと東洋バラが交配されることによって新種のバラが次々と生まれました。モダンローズはティー系の香りを獲得し、四季咲きで、花びらは高芯剣弁咲き、それらにプラスして耐寒性、強健性というマルチな性質を獲得しました。
中でもそれを代表するバラが『ラ・フランス』です。モダンローズの記念すべき第一号でこの系統は「ハイブリッド・ティー」とよばれとくに観賞用として現代バラの主流をなします。
「ハイブリッド・ティー」以前をオールドローズ、以降をモダンローズと呼びます。
モダンローズには上品なティーの香りがありますが精油用途としては向いていません。精油(ローズオイル)がほとんど採取できないためです。そのため現在でも香水に使用するローズオイルといえば「ダマスクローズ」と「センティフォーリア」などのオールドローズが使用されています。
バラの精油(ローズオイル)の香りを「バラではない」と感じられる方がたまにおられますが、その理由は「精油(ローズオイル)と生きている花の香り」の違いということが一つ。もう一つは、ローズオイルが採れるバラは、私たちが日常的に接しているバラと、そもそも品種が違うという事実があります。
(2006-07-08)
バラの歴史とエピソード
バラの起源
バラ(ローズ)の原産は野薔薇です。中国西南部の亜熱帯地方(チベット周辺、中国雲南省、ミャンマー)にはバラの野生品種が多数生息していることからバラの原産地は中国・ヒマラヤ・インドあたりと推測されています。
すでに紀元前から賞賛された「花の女王」バラ
クレタ島クノッソス宮殿でバラのフレスコ画が発見されました。人類最古級の宮殿ですので、バラと人類の古い関係がわかります。このように世界の古代遺跡や伝説にはかなり古くからバラが現れており古代から人類に愛されていました。
古代ギリシャの女性詩人サッフォーが、バラを「花の女王」と謳ったのは紀元前7世紀、はるか昔のことです。
バラの歴史に欠かせないパーソナリティがクレオパトラ7世です。カエサルとアントニウスというローマ帝国屈指の英雄達を手玉に取ったクレオパトラ伝説には「バラ風呂」と「バラ床」が必ずセットで語られます。宮殿を床をバラの花びらで敷き詰めたり、膝の高さまでバラの花びらを敷いた寝室の話など空想をかき立てられます。
バラ吹雪、ローマ時代のバラ熱狂
ローマ時代はバラの花が貴族の贅沢品としてしっかり根付く時代です。古代ローマの軍人であり博物学者であったガイウス・プリニウスが残した『博物誌』には祭りの日にバラの花びらが惜しげもなく街頭でまかれていた光景が記録されています。
暴君の誉れ高いネロ皇帝のバラシャワー(花びらを天井から雨のように降り注いで晩餐会の部屋をバラの花で埋め尽くしたという伝説)は有名です。君主がバラ遊びに高じれば貴族や民も同じ対象に関心を持っただろうことは歴史の語るところですが、この時代には大変なバラ需要が発生していたことが推測されます。
香水原料として利用されなかったバラ
しかし、バラが香水に利用されたという記録は残念ながらありません。そもそも香水が香水として歴史に登場するのは15世紀ころからであり、ローマ時代に香水らしきものといえば、香油がありました。ハーブや香料を練り合わせたオイルです。現代のスキンケアのように利用されていたと考えられます。
当時の香油は没薬・乳香をはじめ、オリーブ油・ゴマ油・ヒマシ油が主原料で、バラが主要原料として利用されたとは言い難いようです。おそらくバラからエッセンシャルオイルを抽出する技術がなかったため、バラはもっぱら生花として利用されたと考えられます。
ローマ時代のバラ農園
旺盛なバラ需要を満たすために、クレオパトラ時代〜ローマ時代には、すでに大がかりなバラ栽培・バラ農園が始まっていたことが今日定説になっています。
ローマの場合は、バラ栽培技術がまだ未熟だった模様でエジプトより船でバラを輸入していたという記録がありますが(あるいは生産コストがエジプトの方が安価だったのかもしれません)、冷凍設備がない時代のことですので大変なことだったと思われます。
ローマ時代のバラは装飾に使用されると同時にお酒に入れて飲まれたり料理に使用されたり、と様々な利用方法がありました。
お風呂文化が盛んだったローマ時代はクレオパトラ同様バラ風呂が人気でした。ローマ帝国崩壊後はヨーロッパはなぜか風呂文化を衰退させることになりますが、同時にバラ文化も衰退します。
中東のバラ、中世ヨーロッパのバラ
一方、中東では、バラ文化を衰退させたヨーロッパと違って、宗教儀式や生活にローズウォーターの需要がありバラ文化は温存されました。十字軍はその本来の目的とは別に中東の様々な産物をヨーロッパに持ち帰る結果となりますが、この中にイラン・イラク・シリアなどから持ち帰ったバラがありました。
中世ヨーロッパでは、バラはキリスト教会や修道院の中庭で薬草として栽培されました。薬草を作る技術や機材は、その後「薬局」の前進となります。また、バラの栽培畑はその後のバラ庭園やイングリッシュ・ガーデンなど現代のガーデニングの基礎を作ることになります。
10年くらい前に日本上陸した「サンタ・マリア・ノヴェッラ」は今日では化粧品・トイレタリーの会社ですが13世紀フィレンツェのドミニコ会修道院付属の薬局が起源です。
当時病人や怪我人には薬草を処方するくらいしかありませんので、教会や修道院の薬局は、病院的な位置づけだったと思われます。そして、当然様々な効用が知られているバラは大切な「薬品」の一つでした。
バラの効用
ここで「様々な効用」を少しリストアップすると...
1)精神の鎮静作用、特に女性の心を穏やかにすることが知られています。
2)消化系器官への効用。弱った肝臓や胃腸を壮健にすることが知られており現在でもローズウォーターやローズオイルを日常的に服用する人々がいます。
3)殺菌作用。強力な殺菌作用が知られておりブルガリアではローズウォーターを目薬や消毒液として利用されています。
※日本のある病院ではローズオイルがピロリ菌を殲滅する作用があることを発見して現在実験中です。私はローズオイルがピロリ菌に対してかなり強度な殺菌効果があることを確信しています。しかし、仮に効果が高いと証明されても、商品化となると・・・かなり高価なおクスリになりますね。また医薬品業界の鉄則ですが現代医薬では天然物から医薬品を作ることは少ないでしょう。このお話はまた後日にしましょう。
ヨーロッパで熱狂されたバラ
バラはその優雅さからヨーロッパの権力者の家紋やエンブレム、グループロゴ、シンボルなどにも採用されていきます。
「薔薇十字団」(ローゼンクロイツ、Rosenkreuzer。17世紀ヨーロッパで流布した魔術の秘密結社)、「薔薇戦争」(赤薔薇を家紋とするランカスター家と白薔薇家紋のヨーク家の熾烈な戦争。イングランドの内戦)など「バラ」の名前をもった団体や集団が歴史上に躍り出ます。
またキリスト教では、赤バラはキリストの血、白バラはマリアを象徴し、イスラム教では赤バラは唯一神アッラー、白バラはムハンマドを象徴する花として人類にとって不動の地位を獲得します。
マルメゾン宮殿、バラ庭園の殿堂
「朕は国家なり」と言い放ったルイ14世に象徴されるフランス絶対王政時代になると大がかりなバラ庭園が出現するようになります。その中で特に重要なバラ庭園がナポレオン夫妻のマルメゾン宮殿のバラ庭園です。バラの熱心な愛好者であった皇后ジョゼフィーヌは、夫の不在の寂しさを紛らわせるためパリ郊外のマルメゾン宮殿でバラの蒐集と繁殖に執念を燃やします。
ジョゼフィーヌはバラコレクションの道半ばで燃え尽きるように亡くなるのですがヨーロッパ、中国、日本など世界中から多種多様なバラがマルメゾン宮殿集められる一方、画家のルドゥーテを支援し「バラ図譜」を描かせバラ研究の学術的な発展に貢献します。
時代を同じくしてアンドレ・デュポンによる人工受粉によるバラ育種の技術が確立され、マルメゾン宮殿はジョゼフィーヌ没後も世界のバラ庭園の殿堂としての地位と役割を果たすことになります。現在の観賞用モダンローズの基礎はジョゼフィーヌのバラへの執念とマルメゾン宮殿に基礎があるといえそうです。
バラの系譜図(系統)
バラ一族の生物学的家系図を調べておきましょう。これを少し知っているとブルガリアローズと普通のバラがなぜあれほど違う印象を受けるのか理解できますし、バラを見るにも俄然楽しくなります。
生物学的な分類から。バラ科には桜や桃も含まれておりかなり広範囲な仲間を形成しています。
しかし、一般にバラといえば通常「バラ科バラ属」のバラを指します。
バラ科バラ属のばらは、遠い祖先には西洋バラの4種類と東洋バラの2種があります(その前をたどればけっきょく同一の野生バラに行き着くと思いますが、教科書的には、この「西洋バラ4種類&東洋バラ2種」からバラ系譜図は始まります)。
西洋バラ
・ガリカローズ
・ダマスクローズ
・センティフォーリア(百枚の花びら)
・アルバ(白バラ)
東洋バラ
・ローザ・シネンシス
・ローザ・ギガンティア(高い香り立ち、香りはティーローズへと受け継がれる)
香水用途の西洋バラ
西洋バラは現代でも香料用途としてかなり大きな存在感を持っています。
強く華やかで甘みのある芳香が特徴の「ダマスクローズ」と「センティフォーリア」はとくに重要です。香水原料のローズオイルが採取できるバラで、香水原料として最高のものです。一方、東洋バラには上品で落ち着きのある香りがありティー系(紅茶様)と称されます。東洋バラからは一般に香水原料としてのローズオイルは採取されません。
もともとバラは初夏に一度だけ咲く一季咲きの花だったのですが、中国産のバラは四季咲き性の性質を獲得していました。花びらは高芯剣弁咲きと呼ばれ肉厚があり剣のようにとがり外側に反り返ります。西洋人が18世紀前後、中国産のバラをヨーロッパに持ち帰ることから現代バラ、モダンローズの歴史が始まります。
豪華なモダンローズと清楚なオールドローズ
現在の私たちが日常的に見るバラは高芯剣弁咲きのモダンローズがほとんどで、ダマスクローズなど原種に近いオールドローズを見るとバラには見えないかもしれません。
オールドローズの花びらは「カップ咲き」や「平咲き」と呼ばれ、薄くヒラヒラとして気高いモダンローズと比較するとよれた感じですね。スキのないほど着飾った貴婦人とスッピンの娘っ子ほどの違いがあります。
モダンローズ『ラ・フランス』の誕生
これら西洋バラと東洋バラが交配されることによって新種のバラが次々と生まれました。モダンローズはティー系の香りを獲得し、四季咲きで、花びらは高芯剣弁咲き、それらにプラスして耐寒性、強健性というマルチな性質を獲得しました。
中でもそれを代表するバラが『ラ・フランス』です。モダンローズの記念すべき第一号でこの系統は「ハイブリッド・ティー」とよばれとくに観賞用として現代バラの主流をなします。
香水に使用されるバラはオールドローズ
「ハイブリッド・ティー」以前をオールドローズ、以降をモダンローズと呼びます。
モダンローズには上品なティーの香りがありますが精油用途としては向いていません。精油(ローズオイル)がほとんど採取できないためです。そのため現在でも香水に使用するローズオイルといえば「ダマスクローズ」と「センティフォーリア」などのオールドローズが使用されています。
観賞用のバラと香水用のバラの香りの違い
バラの精油(ローズオイル)の香りを「バラではない」と感じられる方がたまにおられますが、その理由は「精油(ローズオイル)と生きている花の香り」の違いということが一つ。もう一つは、ローズオイルが採れるバラは、私たちが日常的に接しているバラと、そもそも品種が違うという事実があります。
(2006-07-08)
< 月桃(ゲットウ) || 『ミラージュ』リニューアル >
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