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( 香水工場の )

香る生活


『VANストーリーズ』#3
「日本でアイビーをやっていこうと決めたときの石津謙介は、もう年齢も体型もアイビー向きじゃなかった。むしろヨーロッパ志向の強い人だった」

米国のアイビーファッションの総本山ブルックス・ブラザーズではシニア向けのシックなファッションも多い。

しかし、VANは若者向けにシフトします。その仕掛け人がすでに「アイビー向きじゃなかった」という証言が心に響きます。

石津さんを知る多くの証言者が、石津さんはアメリカ文化をむしろ軽蔑し、優雅で洗練されたヨーロッピアンスタイルを好んでいたことが書かれています。

なぜ石津さんが昭和35年ころからVANを若者向けにシフトしていったのか不明です。量産しビジネスを拡大することが目的だったのでしょうか?確かにビジネスは急拡大します。

昭和35年 VAN、若者向けアイビーファッションへ転校
昭和45年 売上69億円、社員1,000人
昭和48年 売上137億円
昭和49年 売上300億円
昭和50年 売上452億円
昭和53年 VAN倒産

巨像が「パタリと倒れた日」。昭和50年をピークに大幅赤字へと転落。倒産時の負債総額は当時で500億円。

「戦後、アパレル業界最大の大型倒産」

この簡潔な記述が私には無性に悲しかったです。



会社経営者だけでなく、個人商店や個人事業主もフリーで仕事をしている人も、自分でビジネスのハンドルしている方なら、これだけ好調な会社が、なぜパタリと行っちゃったのか、そのへんの事情はとても関心があるかもしれません。

著者は、さまざまな分析を行っています。当時の新聞は、時代はすでに「ジーンズの時代」と書きました。



VAN倒産までの数年間、都内ではどこかで必ずVAN製品のバーゲンが行われていました。そのうちスーパーもバーゲンに追随。VAN製品を安く仕入れバーゲンで売りさばく。

こうして憧れのVANブランドはいつしか「バーゲン品」へと転落。

この部分は、1997年化粧品の輸入自由化以降10年間、日本市場で起きたブランド香水のバーゲン現象と似ています。

ヨーロッパブランドの超高価格路線、ウォルマートのエブリデイ・ロープライス(Every Day Low Price)路線、さまざまなブランド防衛方法がありますが、なぜVANはブランドを防衛できなかったのか考えさせられました。



以上、一気に読み終えたこの一冊、私にはとてもおもしろかったです。実は私はVAN世代とは微妙にズレていて、アイビー後のプレッピーやヤッピーを意識した世代です。

しかし、私の10代の頃は、若者の間になんとなくアイビーリーブに憧れのようなものがあったものです。

あの憧れは実は石津さんに、マスコミやマーケティングを通して吹き込まれた結果の産物だったことを知りました。仕掛け人にやられた感じです。

(終わり)


『VANストーリーズ』#3
『VANストーリーズ』#2
『VANストーリーズ』#1
(2007-12-26)
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