練り香水とは?
練り香水とは、香りの元である香料をクリームやバームに溶かし込んだ香り製品です。
現代では、「香水」が主流ですが、練り香水は、香水より古い歴史があり、今でも一部には根強い人気があります。
練り香水の英名は「ソリッドパフューム」(Solid Perfume)。
「ソリッドパフューム」を和訳する際、Solidを「固形」とせず、「練り」としたところに翻訳者のセンスが感じられます。
液体ではない香水
日本に香水が輸入されると「香水」と和訳されました。液体だったからと推測されます。
「香水 = 香りの水」とはよい訳ですね。
フランス語の香水も「Eau de Parfum」(パルファムの水)という言い方をしますから、「香水」はフランスの香水文化さえも踏襲した絶妙な訳です。
「香水」がどこの国の人々によって訳されたのか私には不明です。ひょっとしたら中国で生まれたコトバかもしれません。
現在中国・日本ともにPerfumeやParfumの訳語として「香水」が使用されています。
しかし、Perfumeには液体でないSolid Perfume(ソリッドパフューム、固形香水)もあります。
香水という言葉自体が、液体なのに「固形香水」とするわけにもいかず、苦肉の策として「練り」が加えられたのではないかと空想します。
「練り」を加えることで液体のイメージは払拭されます。
練り香水の呼び方や書き方には「練り香」「練香」もあります。
「練香」は、日本の伝統的なお香のイメージが強いかもしれません。
練り香水、人気の理由は?
- ・持ち運びが便利。小さく軽くカワイイ容器で、液漏れの心配がない
- ・アルコールが苦手な人向け
練り香水の歴史
ハンガリー王妃エリザベートによって考案された(もしくは献上された)「ハンガリーウォーター」を初代香水とする説がありますが、香水の歴史は、定説が定まっていません。
ハンガリーウォーターは、香料(ローズマリー、ラベンダー、ミントなど)を、当時アラブ世界から輸入されたばかりのアルコールに溶かしたものです。
「香水」といえば「アルコールに溶かされた香り液体」が常識です。
では、それ以前には香水は存在しないのでしょうか?・・・香水は存在しませんでしたが、原料である「香料」は存在しました。
香料はエジプト・ギリシア・ローマ時代を通して金銀にも勝るほどの宝物として珍重されていました。
香料の主な目的は、宗教儀式用のお香として、権力者の身なりを整え威厳を示す装身具の一部と考えられます。
そして、香料は医薬品としてまた美容や健康、癒しとして利用されたと考えられます。
さらに、スキンケアや食品やミイラの防腐剤としたり、調度品や食品の香り付けに利用されていました。
そういう意味で、古代では「香水」は存在しませんでしたが、香料の香水的な使用方法や香水的なモノは存在していました。
それらが「練り香水」の原型でした。
日本の練り香とキフィー
練り香・練香(ともに「ねりこう」)は、日本の伝統的なお香です。
合香(あわせこう)、薫物(たきもの)と呼ばれることもあります。
練香とは、お香の原料である白檀・沈香などの香木や麝香・龍脳などの動物性香料、墨や香辛料(丁字、桂皮、甘松など)を粉末状砕き、蜂蜜や梅肉などで錬り固めた物です。
おもしろいところでは貝殻を粉末にした甲香(かいこう)という香料もよく使用されます。
日本の練香の原型は、中国から伝えられたものですが、そのまた原型は遠く古代エジプトのキフィー(KYPHI)ではないかとされます。
キフィーとは古代エジプトで宗教行事や病気の治癒薬として用いられた香料です。
原料にはシナモン、シダーウッド、ジュニパー、フランキンセンス・乳香、ミルラ・没薬などが使用されました。
キフィーとい言葉自体はギリシア語で古代エジプトからギリシア、中東、中国、そして日本へとキフィーは処方や原料を変化させながら伝播したと考えられます。