Home > ブログ
リスト表示 | (edit)
( 香水工場の )

香る生活


「無題」という名の絵画作品
以前「無題」という絵画作品の香水を作ったことがあります。


香水OEM


当社は香水メーカーです。オリジナルな自社の香水シリーズ展開中ですが、他社さんからの依頼でOEM(相手先ブランド製造)を行うこともあります。

以前、絵画の展覧会などのアート関連イベントを国内外で精力的に行っている会社さんからオリジナル香水制作依頼を受けました。

その会社さんと契約している芸術家の先生方へのスペシャルギフトという粋な計画でした。毎年嗜好を凝らしたギフトを考えられているようです。

対象となる芸術家は、数十名のプロのアーティスト。

通常のオリジナル香水制作といえば、3点前後試作し、その中から1点クライアントさんに選んでもらったものに、さらに要望に添って「香りの直し」を入れながら香りのイメージ精度を上げていくのですが、このときの香り制作依頼は一気に数十件。例外中の例外です。

種類が多いので、レディメイド方式にしました。それまで当社が作りためたオリジナルな香水処方の中からイメージに近い香りをチョイスしてオリジナルラベルを添付、オリジナル香水として納品するという内容でした。


作品を見て香水創り


さて、各アーティストにぴったりくる香水制作(実際は、香水チョイス)は、それぞれのアーティストの絵画作品を拝見して香りのイメージを言葉に落とすという作業から入ります。

本当に苦しかったです。

作品を見て自分が感じたことを言葉で表現し、その絵画のイメージにもっとも近い当社のオリジナル香水をすり合わせていくわけです。

自分の解釈や感じたことがアーティストさんの意図とはまるで方向違いというリスクもありますから。


タイトルは香水創りの大切なヒント


絵画の解釈を助け、勘違いリスクを多少なりとも軽減してくれるヒントが「タイトル」です。

その絵画に付けられたタイトルは作品のメッセージやテーマが一言に凝縮しているわけですから、ヒントにならない方がむしろ希です。

ところが、作品を一枚一枚見ていくと奇妙なタイトルの作品が1枚ありました。

そのタイトルは「無題」。

作品もボヤーッとした感じの意味不明の絵でした。

中学時代、美術で「無題」と命名しているクラスメートはいましたが、プロの絵描きさんの作品で「無題」という名の作品は初めてでした。

これは見る人が好きなように感じ取ってくれ、鑑賞する人間の想像力次第、解釈に制限はないということ?

前衛的な作品といえばそうなのかもしれませんが、無題という作品は本当にわかりにくいので、まじめてに香水を選ぶ気にもなりませんでした。

けっきょくその絵画にふさわしい香水を提供できたのかどうか今でもわかりません。


(2010-05-06)
search
月一メルマガ

TOP