( 香水工場の )
香る生活
香水は香りが重要、ネーミングはもっと重要?
お花の香水
武蔵野ワークスは「沈丁花」や「蜜柑の花」「白梅」など、花をテーマにした香水を多く作っています。とはいえ種類には当然限りがあります。
自分の好みの花の香水はないかと探されるお客様は多く、そして、Webやパンフにそれが見あたらないと質問が来くこともしばしば。
「○○の花の香水はありませんか?」
この質問、たいていは香りのよい花に関する香水の有無のお問い合わせです。しかし、昨日の所沢マダムからのお電話はやや例外的でした。
『忘れな草』や『かすみ草』という名の香水
「『忘れな草』ありませんか?」
「忘れな草」は記憶の範囲ではじめてのお問い合わせ。北海道でエゾムラサキと呼ばれている野草の花らしいのです。
しかし、いかにも香りはなさそうな。
私は「忘れな草」の香りを知りません。そして香りを予想できないので、どんなステキな香りでしょうか?とマダムに質問しました。
「どんな香りなんでしょうね。とにかく名前が好きなんです」
お聞きすれば『かすみ草』の香水も探しているとのこと。やはり「ネーミングがステキじゃない!」とのこと。
「忘れな草」、あとで調べました。なんでもドイツの恋愛伝説に由来する花だそうで。花を摘もうとしてドナウ川でおぼれかけた男性が叫んだ言葉が「ボクを忘れないで!」(Forget-me-not!)悲しく、そして、美しすぎるネーミングだとわかりました。ちなみに香りは未だ不明です。
香水の中身ではなく、『贈り物』という名前が好きだから
先月、毎年恒例の期間限定製品『ローズの贈り物』『5月の贈り物』という香水をリリースしておりました。『ローズの贈り物』を電話ご注文いただいた一人のお客様は、当社の顧客リストになかったので、まったくはじめてのお買い上げ。
いきなりフルボトルを購入され期待はずれの香りでないか心配になり声をかけました。
「ローズがお好きなんですね。いきなりフルボトル、大丈夫でしょうか?小指大のミニボトルもあります。有料ですが、そちらでまずはお試しされますか?」
返事は、メーカーサイドが想定していない内容。
「私は『贈り物』というネーミングが好きなんです。だから大丈夫です」
こちらは青梅マダム。
正確な名前は忘れましたが、新幹線の中で「開運まんじゅう」という趣旨のネーミングのお饅頭が車内販売されていました。
ワゴンに乗せられた開運饅頭は、同じ饅頭を買うにも「開運」と付いている方を選びがちなのは人の人情。
饅頭を欲しくなかった人までが「『開運』なら、この商談に行く前に一つ景気づけにでも」というシチュエーションも起こりえないことはない。
しかし、名前負けしたらブランドの永続性はない
このような事例を見てくると商品における「ネーミングの重要性」をもっと考え直した方がよいと反省します。
とくにはじめてその商品を手にするイントロダクション部分で、顧客の印象を引き留める要、「引き」があるかないかの境目、になっている事実は大きいと思います。
しかし、せっかく使ってもらったのに中身が伴わないと、顧客に失望を与え、逆に社名やブランドを傷つける結果となります。ネーミングさえよければいいというものでないことは充分に予想できます。
当社の最近のネーミングのヒットはこれかな?
香水のネーミングは香水という商品の性格上、世界的にあまり奇抜なネーミングはつけられません。
お笑い系・自虐ネタは香水の品位に関わりますし、幸運系やお金系・健康系統も薬事法の規制上問題があります。
当社も例外でなく、おとなしい素朴なネーミングの香水が普通ですが、この数年でグッドなネーミングだったなと思う香水があります。
それが『スノーミント』です。
何をテーマにした香水か説明が入り(「ミント」)、ひんやりとした感触が伝わり(「スノー」)、かつネーミングを聞いただけで、「雪景色」がなんとなくビジュアルに心の中で見えるところがいいです。
また中身も多くのお客様に好評かつリピートも多いことから、ネーミング負けせずバランスのとれた製品と感じています。
ネーミングの由来
『スノーミント』はミント香水というテーマで制作した香水です。製品が先にできあがりました。ネーミングは後付です。
当社の香水にありがちな花の名前の製品でなく、また「ミント」だけでは食品のイメージが強いため、製品を語るネーミングにしようと数名のスタッフで考えました。
よいアイデアがないまま保留状態が続いていましたが、当社のチーフパフューマー(本人が調香した香り)が甲府に向かう中央本線の電車の中で突然思いついたネーミングです。
ネーミングは、ブレインストーミングで生まれるより、降って湧いてくように生まれるのでしょうか。
(2011-06-21)
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