( 香水工場の )
香る生活
琥珀色の香水・・香水の色が次第に濃くなる話
琥珀色になったら使えないの?使えるの?・・ (2023/06/19)
( 写真は当社のとある製品、ウイスキーみたいな琥珀色。この香水は最初から琥珀色で、この色の主な原因は天然香料のオレンジフラワー )
当社では多種多様な香水製品を制作している。
それらの香水は色で言えば、透明からレモン色、黄色、茶色に近い色といった色彩がある。
これらの色の違いは原料、つまり香料に起因する。
天然香料で一番使用する植物の「精油」は、透明も多いが、レモン色~黄色も多い。
もう一つの天然香料で「アブソリュート」と呼ばれる香料は濃い黄色から茶色いものが多い。
当社が使用するアブソリュートにはキンモクセイやジャスミン、オレンジフラワーなどがある。
濃い色の香料も香水にする際、エタノール(透明)に溶かすので薄まってレモン色や黄色になるものが多い。
市販の香水には液体がピンク色やブルーのものがある。
これらのカラー香水の多くは人工的に着色されたもの。
ピンク色やブルー色の香水に不自然さを感じる消費者が増えてきたため近年ではこの種のカラー香水は減少もしくは絶滅傾向にある。
(よかった・・)
ちなみにブルーやピンクに着色された香水は半年~一年ほどで "色落ち" するものが多い。
私はウイスキーが好きなんですが、ウイスキーがなぜあんな琥珀色なのかといえば樽(たる)に原因がある。
木材のエキスが溶けるから。
ウイスキーの原料にはモルト(大麦麦芽)やグレーン(トウモロコシや小麦など)などがある。
どちらも蒸留時点ではおおむね透明、これらが楢の木(オーク)などの樽に何年か寝かせられて琥珀色へと変化していく。
下の写真はニッカウヰスキー宮城峡蒸留所(みやぎきょう じょうりゅうじょ)で撮影したもの(先週見学してきました)。
ウイスキーの色の変化が、現物なのかレプリカなのか不明でしたが、わかりやすく展示されていたので撮影させてもらった。
(左)蒸留したての原酒は透明 → (中)5年経過 → (右)12年経過、だいぶん琥珀色に、そして量も減っている(年2%の割合で減るそうだ)
( この蒸留所さんは見学ツアーを開催し無料で観光客を受け入れてくれる。場所は仙台駅から列車で1時間程度の山中、広瀬川の霧深い源流エリアに佇む工場、ウイスキーファンには聖地といってもよいだろう。香水に関心ある方はウイスキーの香りにもおそらく心惹かれるに違いない、おすすめしたい香りの勉強スポット )
余談だが、ウイスキーには世界的にカラメルを混ぜて色調調整された製品も多いと聞く、そして、それはルール違反ではない。
なのでウイスキーの琥珀色が100%ウイスキー由来かどうかわかりにくい。
ところで、ウイスキーの琥珀色はボトリングされた後も時間とともに濃くなるものが多い、なぜだろう?
一説にはボトリングしたウイスキーにはおだやかなアルコールの揮発が続いており中身が濃くなり色彩も琥珀度を増すという説。
香水も実はおだやかなアルコール揮発は発生しておりこの説には体感的にありうると思う。
しかし、色が濃くなるためには相当量のアルコール揮発が必要でウイスキーの液面低下が目に見えてわかるはずである。
だが、私の場合、すぐに飲んでしまうので「液面が下がった」という経験が今ひとつ不足している。
あとは、やはり木材成分のおだやかな酸化もあるのでは?という仮説を立てている(まだ検証はできていないが、まずは間違いないと信じている)。
酸化すれば多くの物質・成分ともに黄色が濃くなり茶色に近づく傾向がある。
香水はウイスキーの琥珀色と似て時間とともに濃くなる傾向がある。
理由はウイスキーと同じではなかろうか、つまりアルコールの揮発と香料の酸化の影響では?
酸化といえば、食用オイルのように色が濃くなり(茶色に近づく)風味が落ちる、つまり品質が劣化するケースが多いが、そうでない酸化もある。
たとえば、紅茶。
紅茶は緑茶の茶葉を酸化させることで製造される。紅茶の風味は香ばしい。
たとえば、やや酸化したワイン。
酸化しすぎると風味は失われるが、やや酸化したワインをお好きなワインファンは多い。
ワイングラスに注いだ赤ワインをグルグル回す人は多いが、あれは酸化を促しているんですよね。
ウイスキーの場合、琥珀色の濃さは熟成の証(あかし)でまろやかさが増すケースが多い。
この熟成の一部は酸化が進んだ結果である、だから酸化はなんでもかんでも全部ダメというわけではない。
香水もウイスキー同様、色が濃くなっても香りに異様な変化をきたすことはあまりなく楽しめるものが多いと思う。
とはいえ製品によっていろいろなので一般化できない。
私個人の感想は・・琥珀色になった香水は、やはりフレッシュさは飛んでいる印象は受けるが、逆に熟成度が増して魅力に感じるものもある。
当社のお客様に数十年前の有名な欧米ブランド香水を「熟成○○年」とおっしゃって楽しんでいる方もおられるので、いろいろである。
簡単である、透明のエタノールを継ぎ足せば色は薄くなる。
香りが「芳醇すぎる」と感じていた方には、色彩も薄くなるし、香りも付けやすくなる。
香りのフレッシュさは理論的には戻しようがないが、不思議なことに色が戻ると香りのフレッシュさまで戻った気がする。
ヒトの嗅覚能力は進化の過程で「退化」し、今ではほ乳類最下位。
そんな人類の香りの感性は、気分やイメージによって大きく影響を受けたやすく "揺らぐ" ようだ。
香水の琥珀色が増した場合、問題となることは香りの実際の変化よりも心理的な印象の違いの方が大きいと感じている。
経験則からの話だが、香水の色が変わると香りまで変わったと感じる人の方が圧倒的に多い。
その場合、悪い香りになったという人が100%、私の知る範囲全員が悪いイメージを抱く。
「香りは変わっていないのに・・」と思ってどう言葉を尽くしても納得してもらえない。
ついでに言えば、中身が同じで香水ボトルのラベルが変わっても「香りが変わった」という人の方が圧倒的に多いようだ。
香りはイメージ次第、気持ち次第という部分はたしかにある。
(2023-06-19)
( 写真は当社のとある製品、ウイスキーみたいな琥珀色。この香水は最初から琥珀色で、この色の主な原因は天然香料のオレンジフラワー )
そもそも香水は透明? 色つき?
当社では多種多様な香水製品を制作している。
それらの香水は色で言えば、透明からレモン色、黄色、茶色に近い色といった色彩がある。
これらの色の違いは原料、つまり香料に起因する。
香料はもともと黄色系が多い
天然香料で一番使用する植物の「精油」は、透明も多いが、レモン色~黄色も多い。
もう一つの天然香料で「アブソリュート」と呼ばれる香料は濃い黄色から茶色いものが多い。
当社が使用するアブソリュートにはキンモクセイやジャスミン、オレンジフラワーなどがある。
濃い色の香料も香水にする際、エタノール(透明)に溶かすので薄まってレモン色や黄色になるものが多い。
ブルーやピンクの香水は着色によるもの
市販の香水には液体がピンク色やブルーのものがある。
これらのカラー香水の多くは人工的に着色されたもの。
ピンク色やブルー色の香水に不自然さを感じる消費者が増えてきたため近年ではこの種のカラー香水は減少もしくは絶滅傾向にある。
(よかった・・)
ちなみにブルーやピンクに着色された香水は半年~一年ほどで "色落ち" するものが多い。
ウイスキーはなぜ琥珀色?
私はウイスキーが好きなんですが、ウイスキーがなぜあんな琥珀色なのかといえば樽(たる)に原因がある。
木材のエキスが溶けるから。
ウイスキーの原料にはモルト(大麦麦芽)やグレーン(トウモロコシや小麦など)などがある。
どちらも蒸留時点ではおおむね透明、これらが楢の木(オーク)などの樽に何年か寝かせられて琥珀色へと変化していく。
下の写真はニッカウヰスキー宮城峡蒸留所(みやぎきょう じょうりゅうじょ)で撮影したもの(先週見学してきました)。
ウイスキーの色の変化が、現物なのかレプリカなのか不明でしたが、わかりやすく展示されていたので撮影させてもらった。
(左)蒸留したての原酒は透明 → (中)5年経過 → (右)12年経過、だいぶん琥珀色に、そして量も減っている(年2%の割合で減るそうだ)
( この蒸留所さんは見学ツアーを開催し無料で観光客を受け入れてくれる。場所は仙台駅から列車で1時間程度の山中、広瀬川の霧深い源流エリアに佇む工場、ウイスキーファンには聖地といってもよいだろう。香水に関心ある方はウイスキーの香りにもおそらく心惹かれるに違いない、おすすめしたい香りの勉強スポット )
余談だが、ウイスキーには世界的にカラメルを混ぜて色調調整された製品も多いと聞く、そして、それはルール違反ではない。
なのでウイスキーの琥珀色が100%ウイスキー由来かどうかわかりにくい。
ウイスキーは時間とともに濃くなる
ところで、ウイスキーの琥珀色はボトリングされた後も時間とともに濃くなるものが多い、なぜだろう?
一説にはボトリングしたウイスキーにはおだやかなアルコールの揮発が続いており中身が濃くなり色彩も琥珀度を増すという説。
香水も実はおだやかなアルコール揮発は発生しておりこの説には体感的にありうると思う。
しかし、色が濃くなるためには相当量のアルコール揮発が必要でウイスキーの液面低下が目に見えてわかるはずである。
だが、私の場合、すぐに飲んでしまうので「液面が下がった」という経験が今ひとつ不足している。
あとは、やはり木材成分のおだやかな酸化もあるのでは?という仮説を立てている(まだ検証はできていないが、まずは間違いないと信じている)。
酸化すれば多くの物質・成分ともに黄色が濃くなり茶色に近づく傾向がある。
香水も時間とともに濃くなる
香水はウイスキーの琥珀色と似て時間とともに濃くなる傾向がある。
理由はウイスキーと同じではなかろうか、つまりアルコールの揮発と香料の酸化の影響では?
酸化も熟成の一部?
酸化といえば、食用オイルのように色が濃くなり(茶色に近づく)風味が落ちる、つまり品質が劣化するケースが多いが、そうでない酸化もある。
たとえば、紅茶。
紅茶は緑茶の茶葉を酸化させることで製造される。紅茶の風味は香ばしい。
たとえば、やや酸化したワイン。
酸化しすぎると風味は失われるが、やや酸化したワインをお好きなワインファンは多い。
ワイングラスに注いだ赤ワインをグルグル回す人は多いが、あれは酸化を促しているんですよね。
ウイスキーの場合、琥珀色の濃さは熟成の証(あかし)でまろやかさが増すケースが多い。
この熟成の一部は酸化が進んだ結果である、だから酸化はなんでもかんでも全部ダメというわけではない。
琥珀色になった香水はどうか?
香水もウイスキー同様、色が濃くなっても香りに異様な変化をきたすことはあまりなく楽しめるものが多いと思う。
とはいえ製品によっていろいろなので一般化できない。
私個人の感想は・・琥珀色になった香水は、やはりフレッシュさは飛んでいる印象は受けるが、逆に熟成度が増して魅力に感じるものもある。
当社のお客様に数十年前の有名な欧米ブランド香水を「熟成○○年」とおっしゃって楽しんでいる方もおられるので、いろいろである。
琥珀色の香水を元に戻す方法
簡単である、透明のエタノールを継ぎ足せば色は薄くなる。
香りが「芳醇すぎる」と感じていた方には、色彩も薄くなるし、香りも付けやすくなる。
香りのフレッシュさは理論的には戻しようがないが、不思議なことに色が戻ると香りのフレッシュさまで戻った気がする。
ヒトの嗅覚能力は進化の過程で「退化」し、今ではほ乳類最下位。
そんな人類の香りの感性は、気分やイメージによって大きく影響を受けたやすく "揺らぐ" ようだ。
色が変わると香りも変わったと感じられる問題
香水の琥珀色が増した場合、問題となることは香りの実際の変化よりも心理的な印象の違いの方が大きいと感じている。
経験則からの話だが、香水の色が変わると香りまで変わったと感じる人の方が圧倒的に多い。
その場合、悪い香りになったという人が100%、私の知る範囲全員が悪いイメージを抱く。
「香りは変わっていないのに・・」と思ってどう言葉を尽くしても納得してもらえない。
ついでに言えば、中身が同じで香水ボトルのラベルが変わっても「香りが変わった」という人の方が圧倒的に多いようだ。
香りはイメージ次第、気持ち次第という部分はたしかにある。
(2023-06-19)
search