ローズマリーの知識
身近なローズマリー
ローズマリーは、ヨーロッパで愛されるハーブですが、気づけば日本でも、普通に栽培されています。私は、東京郊外の多摩エリアに住んでいますが、民家のお庭や道路の脇に、さりげなく茂っている姿を頻繁に見ることができます。
生命力がある植物なので、植えれば、あっという間に増えていきます(その分、他の植物には脅威)。
葉を手で軽く握るようにつかんで引き上げると、それだけで手に香りが移ります。その香りは、針葉樹林のようなすっきり・爽やかな芳香があり、ほっとする香りです。
ハーブの中のハーブ
みなさんは、ハーブの名前を何個挙げれれますか?ローズマリーはおそらく最初の方に思いつくハーブでは?ハーブの種類は多く、一般には20種類から30種類程度よく知られ、出回っています。食品として流通したり、愛好家が栽培するための苗木や種が販売されています。
その中で「ハーブの基本」として「ハーブ基本5種」や「ハーブ基本3種」など命名して、代表的なハーブ選ぶとすれば、どんなハーブが選ばれるでしょう? 人によってその中身は違いますが、私が「ハーブ基本5種」を選ぶとすれば・・・
- ローズマリー / ラベンダー / バジル / ミント / タイム
世界でもっとも愛されるハーブ
ローズマリーは、地中海沿岸地方原産のシソ科の常緑性低木のハーブです。ラベンダーと似て灌木状に成長します。淡いブルーの小さな花を咲かせます。観賞用として人気があり、その生葉もしくは乾燥葉は、特に食用ハーブとして、またスパイス・香辛料として世界中の人々に愛されます。また医薬品やサプリメントの原料としても用いられます。
シソ科植物には、ローズマリー以外に、ラベンダーやバジル、ミント、セージ、マジョラム、オレガノ、タイム、レモンバームなどがあります。
特徴は、どれも香りのよいハーブという点。ローズマリーも例外でなく大変よい香りです。
花も可食可能(砂糖菓子などに)。テルペノイドやフラボノイドなどのポリフェノールを含むことも大きな特徴です。ポリフェノールは抗菌・抗ガン・アンチエイジング成分として有名です。
ハーブとしてのローズマリーの歴史は古く、古代メソポタミア・エジプト・ギリシア・ローマ時代へと利用されていました。現在でもローズマリーは世界でもっともよく利用されるハーブの一つと考えられます。
ローズマリーの特徴
淡い水色の花を咲かせるローズマリーは可憐に見えるハーブですが、生命力旺盛でパワフルな植物です。草花と思うより樹木と考えた方が良いでしょう。種子から発芽したローズマリーは、鮮やかな緑色の軟らかくみずみずしい茎や葉を伸ばしていきますが、2年目以降は木質化して大株の「灌木」(かんぼく/シュラブ)になります。
- 学名:Rosmarinus officinalis、ロスマリヌス・オフィキナリス
- 科名:シソ科(常緑灌木)
- 原産地:地中海沿岸
- 高さ:20cm~2m前後
- 形状:立性種と匍匐(ほふく)性種に種別あり
- 花期:3-5月、9-11月
- 花色:青、青紫、白、ピンク
- 用途:香料、医薬用、食料、防虫、鑑賞
日本では、北風を避けて日当たり・水はけがよい場所なら元気に育ちます。アルカリ性から弱酸性土壌を好みので石灰などで土壌改良しておくことが理想です。
アルカリ土壌が好きなため、乾燥した石灰岩の多い土地での栽培が盛んです。たとえば東欧のクロアチアは国土の多くで石灰岩質の土壌に恵まれていますが、品質がよいローズマリーやラベンダーの栽培と生産が盛んです。
種類 (成分で分類)
アロマテラピーをされている方は、含有される成分で分類されるケースもあります。品種は同じなのに遺伝的な特性で含有成分がかなり違ってくるケースがあります。これをケモタイプ(Chemotype)と呼びます。ローズマリーには、cineole(シネオール)、verbenone(ベルベノン)、camphora(カンファー)などの成分などの成分をもとに3種類から6種類程度のケモタイプが知られております。
アロマテラピーでは、カンファーが多い種類よりも、刺激が少ないシネオールタイプやベルベノンタイプが好まれます。
- ローズマリー・シネオール(Rosmarinus officinaiis ct cineole)
- ローズマリー・ベルベノン(Rosmarinus officinaiis ct verbenone)
- ローズマリー・カンファー(Rosmarinus officinaiis ct camphora)
- ローズマリー・ボルネオール(Rosmarinus officinaiis ct borneol)
- ローズマリー・リモネン(Rosmarinus officinaiis ct limonene)
残念ながら私はどちらも単品で香りを確かめたことがなく表現できませんが、想像するにフローラルで甘い香りではなく、薬草のような香りで穏やかな印象ではないかと思います。
カンファーは多くの人が経験したことがあるあの強い独特の芳香が特徴です。これらの成分の違いは、ローズマリーの品種の違いによるものではなく、土壌や産地の違いが大きいようです。
たとえば、スペイン産やクロアチア産はカンファータイプとして優れており、ベルベノンタイプはフランス産、シネオールタイプは北アフリカ産(チュニジア)といった大まかな傾向があります(こちらに詳しい表は、こちら)。
種類 (品種で分類)
ローズマリーには、他の植物同様、様々な品種があります。形状で分けると大きく立性(たちせい)と匍匐(ほふく)性種に分かれます。花の色は青から紫色以外に白やピンクなど。
交配などで新しい品種も出てきていますので、今後さらに増えると思われますが、一般的に20種類程度が知られています。
立性(たちせい)種のローズマリー
- トスカナブルー(Rosmarinus officinalis 'Tuscan Blue')
- マジョルカ・ピンク(Rosmarinus officinalis 'Majorca Pink')
- マリンブルー・ローズマリー(Rosmarinus officinalis 'Marine Blue')
- ミス・ジェサップ(Rosmarinus officinalis 'Miss Jessups Upright')
- レックス(Rosmarinus officinalis 'Rex')
- ホワイト・ローズマリー(Rosmarinus officinalis albiflorus)
匍匐(ほふく)性種のローズマリー
- フォタブルー(Rosmarinus officinalis 'Fota Blue')
- プロストラータス(Rosmarinus officinalis 'Prostratus')
- モーツァルトブルー(Rosmarinus officinalis 'Mozart Blue')
- ウッド・ローズマリー(Rosmarinus officinalis var. off. Collingwood Ingram')
ローズマリーの産地・生産地
産業用途としては、伝統的にフランス、チュニジア、スペイン、ポルトガル、イタリア、モロッコなど地中海沿岸で生産されてきました。しかし、栽培は世界中に拡大しており、現在ではインドやアメリカなどでも盛んです。それぞれの土地の土壌や気候の違いで成分の有無や配合比率に違いがあります。香りも産地によって若干違ってきます。
ローズマリーは、石灰質の土壌を好みますので、フランスやクロアチアの西部海岸地方の石灰質の丘陵では広大で見事なローズマリー畑を見ることができます。メインの花期時期は5月~6月です。
【地中海】
- フランス / チュニジア / スペイン / ポルトガル / イタリア / モロッコ
【世界】
- インド / スペイン / 英国 / 南アフリカ / 中国 / アメリカ / オーストラリア