ハンガリー・ウォーター
アンチエイジング水「ハンガリー・ウォーター」
ローズマリーに関連する話で、忘れられないストーリーは、なんといっても「ハンガリー・ウォーター」です。「香水の元祖」とも「香水の原型」とも言われるこのお品。信用できない言い伝えがいろいろあって、またそれを脚色気味に書き出す人がいて、どうも事実から相当離れた話も出回っています。
しかし、共通する部分は材料として「ローズマリー」を使うこと、そして「若返りの水」(アンチエイジング水)としての効果。
ハンガリー・ウォーター = ローズマリーで作られた何か
どの文献もだいたい「ハンガリー・ウォーター = ローズマリー」で、ローズマリーは必須のアイテムです。ハンガリー・ウォーターは、一応現在では「香水の原型」と言われていますが、当時はおそらく、薬として王妃にはご利用いただいたと推測されます。ローションとしてお肌に塗る、もしくは飲み薬ではなかったかと思われます。
誰が作ったか不明
英語版wikipedia(Hungary Water)によれば、ハンガリーウォーターを開発したのは「Isabella」とされています。通常は「ハンガリー王妃エリザベート」ことですが、そうではなく「ハンガリー王女エルジェーベト」(聖エリザベト)であるとする説も紹介されています。
「王妃」vs「王女」です。聖エリザベト(1207-1231)は「女王」ではありません。王様の娘の「王女」。ハンガリー生まれでドイツに嫁ぎます。ハンガリー王妃エリザベート(1305-1380)はポーランド生まれです。
なるほど、現地でもどちらのエリザベスさんがハンガリーウォーターを作ったかは混乱しています。
また、彼女たちが作ったのか、彼女たちが作らせたのか、作らせるとしたら誰に命じたのか(錬金術師や修道士という説)、それとも誰か(イタリアの修道会という説)が一方的に献上してきたという説もあり、詳細は不明です。
現地の伝説や文献の多くは1600年代に作成されたもので、もはや真実は闇の中。
ローズマリーとアルコールの幸せな出会い
ハンガリーウォーターは、アルコールにさまざまなハーブやハーブの精油を溶かし込んで作ります。現在の私達から見れば、お手軽な手作り香水といったところですが、アルコールにハーブを溶かすという行為が現代で言えば特許モノにあたります。
アラビアやペルシアなどのイスラム圏で生まれたアルコールが、ヨーロッパで普及し始めたのは1300年代とされています。
当時最新鋭の物質だったアルコールに精油を溶かすことで精油の持つ刺激を抑え、伸びを良くし、日持ちをよくし、使いやすくする効果がありました(精油はそのままお肌に塗ると危険な場合があります)。
ハンガリー・ウォーターは、アンチエイジング特効薬だった
ハンガリーウォーターの効能は、神経症、リウマチ、睡眠障害、聴覚障害、耳鳴り、視力低下、血栓、食欲不振、消化不良、肝臓病などまさに万能薬として評価され、特に高齢者の若返りに効く薬として有名になります。そのため一部の伝説ではハンガリーウォーターは「若返りの水」とも言われます。
ついでに70代のエリザベートは、ハンガリー・ウォーターで若返り、20代に王子様からプロポーズされたというエピソードを紹介する記事が至る所にでていますが、私が調べた範囲では出典は不明でした。
神経痛や関節リウマチ、血管障害などに・・・
ローズマリーは、天然の抗酸化成分であるポリフェノールの含量が非常に高く抗酸化に有効なハーブです。体内酸化が原因で発症すると考えられる老化や老化性疾病、たとえば神経痛や関節リウマチ、血管障害などに一定の効果が期待される成分です。
ですのでローズマリーを配合したハンガリーウォーターが「若返りの水」と呼ばれるのも一理あるかもしれません。
その後ハンガリーウォーターは、香水好きで有名な当時のフランス王シャルル5世に献上されました(1370年)。この逸話は、ハンガリーウォーターがヨーロッパ中に拡散していく様子を象徴します。