ローズマリーにまつわる話
日本人とローズマリー
現在、ローズマリーは日本でも盛んに栽培されています。家庭のガーデニング用ハーブとして人気があるようです。観賞用や調味料として利用されていると思われます。
さて、その人気のローズマリーは日本にはいつごろ導入されたのかな、と調べるとインターネットでは「江戸時代に渡来」という記事を数件発見しました。
いずれも出典や根拠の記述がなかったのでどうなのかなと思っておりましたら、下記の記述を発見しました。
1680 ローズマリー (明治前園芸植物渡来年表 磯野直秀 著)
これが事実なら、ローズマリーは関ヶ原の戦い(1600)、江戸幕府(1603)から80年後くらいなので江戸時代初期といったところでしょうか。
ヨーロッパですと近世が始まり、ヨーロッパ人が世界へ拡散している時代ですね。
当時、日本は鎖国していましたので、ローズマリーもやはり長崎の出島から入ってきたのでしょうか。
アート作品に登場するローズマリー
ローズマリーは、ヨーロッパの人々には欠かすことができないハーブで、広く利用されたため文芸や芸術の中にも数多く登場します。その例をここでは紹介します。
ローズマリーの原産地は、地中海沿岸。岩が多く乾燥した痩せた土壌が特徴ですが、そんな大地でも旺盛に繁殖する性質があり、栽培は比較的簡単だったと思われます。
ローズマリーは、香辛料として優れた性質があり、その香りは料理だけでなく、宗教的な儀式にも利用されました。
さらに手をかけずに繁殖することからヨーロッパではハーブ中のハーブとして確固たる人気を維持し人々の生活に溶け込んできました。
そのため、西洋の文学作品や詩や歌、絵画などのアートにも頻繁に登場する馴染みのハーブです。
たとえば、英国の伝統的バラード「Scarborough Fair(スカボロー・フェア)」。
中世末に生まれ吟遊詩人たちによって受け継がれてきたと言われるこの曲は、Simon & Garfunkel がカバーしたことで世界的なヒット曲として蘇りました。
この歌詞の中に非常に奇妙な雰囲気でローズマリーが歌われています:
Are you goin' to Scarborough Fair? Parsley, sage, rosemary, and thyme. Remember me to one who lives there, she once was a true love of mine.
(スカボロー・フェアに向かっているのですか?・・・パセリ、セージ、ローズマリー、タイム。スカボローに行ったら私を思い出すよう伝えてください。彼女は、かつての私の大切な恋人だったです)
英国のノース・ヨークシャー州スカボロー(地図で見るとエジンバラとロンドンのちょうど中間地点くらい)は、中世の頃、重要な交易地点で夏にスカボロー・フェアという「市」が開催され、英国中の多くの商人や人々を集めていたといいます。
この土地で生まれたバラードが「スカボロー・フェア」だそうです。
「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」という部分で、市の取引物資はハーブ?と空想したのですが、どうも、恋心の心情をハーブが持つパワーに重ねているのではないかと思われます。
とすれば、中世の世からハーブは、パワーの植物を考えられていたと言うことですね。
ちなみに、ローズマリーは「愛と貞節」や「長い記憶」「思い出」を意味します。
シェークスピア「ハムレット」
シェークスピア「ハムレット」では、ローズマリーが登場します。オフィーリアが、ローズマリーの小枝を「自分を忘れないで」という意味で、兄レアティーズに(ハムレットと間違えて)差し出す有名な場面があるそうです。
私は学生時代、シェークスピア「ハムレット」を読んで、現代的なストーリーにびっくりしましたが、このローズマリーの場面は覚えていません。
そのころはまだローズマリーに無関心なときで印象に残らなかったのでしょう。